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“面白い”ビジネスのつくり方

小澤隆生、南壮一郎が語るスタートアップ

BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年05月13日 (水)

第2章 「EasySeek」でインターネットの本質に触れる


 
1997年にリバース・オークションを始める

小澤隆生: まずは何より、ITを深く学びたいと思い、1995年にシステムエンジニアリングの会社に入りました。同時に、エンジニアやプログラマーなど、起業する仲間を見つけるため、同期の社員に声を掛け、毎週のように新しいビジネスやサービスについて勉強会を行いました。しかし、なかなか思うようにいかず、あっという間に2年が過ぎていきました。

1997年9月、仲間と資金を出し合い、中古本のeコマースサービス「EasySeek」を立ち上げたところ、初日から当たりました。非常に便利なサービスだったからです。インターネットの良い点は、優れたサービスであれば、初日から注目を集め、一気に広がっていくことです。

簡単にご説明すれば、買い手が「私は○○の本がほしい」とサイトに投げかけると、その情報が自動的に700軒の古本屋さんにメール配信されます。「その本ならある」という古本屋さんは、書棚から本を探し出し、価格や支払い方法について買い手に連絡します。買い手には複数のお店から連絡が届くため、なるべく低価格で、状態の良い本を選択することができます。売買成立後、僕たちは古本屋さんから仲介手数料をいただく、というものです。

それまで、買い手は、企業など売り手から発信された情報だけを頼りに、モノを選択・購入していました。しかし、このサービスは、買い手が「私はこの商品を買いたい」と発信し、売り手がそれに応えるという、売り手主導から買い手主導への大転換を実現しました。つまり、現在で言うところのリバース・オークションを、1997年当時に展開したわけです。日を追うごとに話題となり、サイトの登録者数は急増していきました。

一方、サービス立ち上げ当初から、資金を集めるべく多くの投資家に会いに行きました。しかし、当時はまだ新興企業市場などない時代であり、ベンチャーキャピタルからの出資が受けられませんでした。1999年になり、ようやく東証マザーズやナスダック・ジャパン(現・ジャスダック)が開設され、数億円単位での出資を受けることができました。僕は会社を辞め、数人の仲間とともに株式会社ビズシークを設立し、2001年には楽天に事業を売却、そのまま楽天に入社したという次第です。


新たな価値を提供すると、感謝される

小澤隆生: このとき、僕は2つの気づきを得ます。1つ目は、良いサービスをつくれば、知らない人から感謝されること。僕はそれまで、見ず知らずの人からお礼を言われたことなど、一度もありませんでした。しかし、このサービスを始めた後は、「長年探していた本が簡単に見つかった」「このサービスのおかげで、店の売上が上がった」というメールが毎日数十通も届くようになった。お金を稼ぐために始めた仕事が、純粋に楽しく、面白い仕事に変わっていきました。

2つ目は、お礼を言われながら、お金もいただけること。インターネットを通じて社会に役立つ価値を提供すると、自分自身も喜びを感じながら仕事ができるようになる。そして、お金もついてくる。「お金というものは、実に面白いものだ」と思いました。

インターネットは、世の中の価値観や仕組みを変えることができ、多くの人に喜びや驚き、感動を与えることもできる。さらに、お金までいただくことができる。インターネットの本質のようなものに触れたことで、僕はビジネスの面白さを知り、一気にのめり込んでいきました。



該当講座

“面白くて、稼げる”ビジネスのつくり方
小澤隆生 (ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南 壮一郎 (株式会社ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦 (PIVOT CEO)

小澤隆生(㈱ヤフー 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南壮一郎(㈱ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦(㈱東洋経済新報社『東洋経済オンライン』編集長)
今注目の起業家をゲストにお迎えする「東洋経済スタートアップシリーズ」。今回は「成功するビジネスのつくり方」をテーマにお二人のゲストにご登壇頂きます。セミナー後は簡単な懇親会もございます。


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