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“面白い”ビジネスのつくり方

小澤隆生、南壮一郎が語るスタートアップ

BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年05月20日 (水)

第5章 僕が楽天イーグルス創業を通じて学んだこと


 
スポーツビジネスの世界を目指す

南壮一郎: 仕事を通じて、鳥肌が立つような感動を味わいたい。若き日の小澤さんと同様に、僕も自分のやりたいことを書き出してみました。その結果、僕の根っこにあったのは、小さな頃から大好きだったスポーツであると気がつきました。僕は会社を辞め、お会いする方皆さんに「スポーツビジネスの仕事があれば、何でもやります!」と声を掛けて回りました。

最初の仕事は、自分もプレーしていたフットサル場の管理人でした。その後、テニスの国際大会の通訳や格闘家のマネジメントなど、来るもの拒まずの姿勢で取り組み、同時に国内外問わず、スポーツに関係するあらゆる人に会いに行きました。夢を実現するには、がむしゃらに動き続け、多くの人に会い、経験を積み上げていくしかない。当時は思いだけが先行し、ロジカルな考えが欠落していたのでしょう。未来が見えないまま、あっという間に1年半が過ぎていきました。

そうしたときに起こったのが、プロ野球再編問題でした。2004年9月、ライブドアに続いて楽天が新規参入の意思を表明したことをきっかけに、僕はあるご縁を通じて面識を得た楽天の三木谷浩史さんに、急いでアポイントをとりました。面会時間は20分。僕はそこで、ありったけの思いをぶつけました。

「それでは、明日から来てください」。静かに告げられたそのひと言で、僕は後に誕生する東北楽天ゴールデンイーグルス(以下、楽天イーグルス)の創業メンバーとなりました。そして翌日、六本木ヒルズにある楽天の会議室に案内されたとき、隣に座っていたのが小澤さんでした。


 
大義名分、王道、仲間

南壮一郎: 楽天に入り、僕の考え方は一変しました。楽天時代、三木谷さんや小澤さんから学んだことは本当にたくさんありますが、いまでも心に残っている言葉を3つご紹介します。

1つ目は「大義名分」です。それ以前の僕は、自分の感情や思いを基点に物事を考える人間でした。楽天イーグルスの創業期、僕は三木谷さんから「何のためにビジネスをするのか? この事業において、南の大義名分とは何だ?」とよく質問をされました。その問題を解決することは、会社にとって、世の中にとってどのような意味があるのか? どのような影響を及ぼせるのか? それをとことん考えろと言われました。

2つ目は「王道」です。三木谷さんは「どうせやるのなら、正々堂々と道のど真ん中を歩いて結果を出せ。成功した後で、後ろ指を指されるようなことはやるな」と言いました。自分が正しいと思うことをやっているのなら、脇道や抜け道ではなく、胸を張って道の真ん中を歩け。嘘やズルをすれば、他人はだませても、自分の心はだませない。それを肝に銘じて前に進め、とも言われました。

3つ目は「仲間」です。僕はいま、ITの会社を経営していますが、小澤さんのように早くからこの世界に飛び込んだわけではありません。プログラミングの知識さえもっていなかった。自分の力だけではできないことが、たくさんありました。だからこそ、多くの人の力を借りようと思ったのです。人が面白いと感じるビジネスをつくれば、自然と優秀な人が集まるようになり、さまざまな課題を一緒に考え、乗り越えてくれるようになる。こうした人のつながりの大切さを教えてくれたのも、三木谷さんや小澤さんでした。

楽天イーグルスに在籍した3年間は、僕にとって何物にも代え難い経験となりました。仲間と一緒に難易度の高い仕事に必死に取り組む中で、新たな事業をつくり出す難しさと楽しさを学び、最終的に鳥肌が立つような感動を味わうこともできました。楽天での経験を超える感動を味わいたい。その思いが、現在の僕の原動力になっています。




該当講座

“面白くて、稼げる”ビジネスのつくり方
小澤隆生 (ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南 壮一郎 (株式会社ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦 (PIVOT CEO)

小澤隆生(㈱ヤフー 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南壮一郎(㈱ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦(㈱東洋経済新報社『東洋経済オンライン』編集長)
今注目の起業家をゲストにお迎えする「東洋経済スタートアップシリーズ」。今回は「成功するビジネスのつくり方」をテーマにお二人のゲストにご登壇頂きます。セミナー後は簡単な懇親会もございます。


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