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DeNA流「強いチームのつくりかた」

Harvard Business Schoolアラムナイ・スピーカー・シリーズ:南場智子

BIZセミナーグローバルキャリア・人
更新日 : 2014年05月12日 (月)

第4章 最高の人材集めに一切の妥協なし

南場智子(株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー / 取締役)

 
人材こそ競争力の源泉

南場智子: 今も昔も、私が多大な時間とエネルギーを傾けていることは「人を連れてくる」、つまり人材採用です。企業にとり、競争力の源泉は人材の質です。創業時から素晴らしい仲間に助けられてきたからこそ、最高の人材を集めることにかけては一切妥協しません。人材採用は、CEOを退任したあとも携わっていたほど最重要視しています。

現在は新卒採用だけでも年間数万人の応募がありますが、内定書を送ったとしても、全員が入社してくれるわけではありません。面接時に「この人だ!」と感じた人が入社しなかった場合は、そのあと何年もかけて追い続けます。

ほかの会社に就職したあとも、機会あるごとに「ちょっと飲もうよ」と声をかけます。そして、会うたびにアタックをかけるのと同時に、どのように成長しているのかをじっくり観察します。「やはりこの人はすごい! ますます成長している」と思えば、さらに強烈にアタックします。反対に「変なクセがついてしまったな……」と思えば、少しずつ疎遠にしていきます(笑)。このように何年も追い続けながら見極めることもあります。



1人の元気玉は100人を元気にする

南場智子: 以前、新卒の採用面接で惚れ込んだ人がいました。他に類を見ないほどの頑張り屋だったからです。彼は、ある外資系投資銀行からも内定を受けていましたが、悩み抜いた末に、外資系投資銀行を選び、私にも納得のいく理由を説明してくれました。最初に感じたとおり、彼の頑張りは本物でした。会社の誰よりも仕事に励み、数年後には念願のニューヨーク勤務を実現し、若くして部長職にもなりました。

何度か会ううちに、彼が自らのキャリアを見つめ直している時期がありました。私は一気にアタックをかけました。事業に対する思い、どれだけ彼が必要かを全力で説明しました。また、相手にとっては人生の大きな選択ですから、会社の良い点だけでなく、悪い点も隠すことなく正直に話します。最終的に、彼を入社させることに成功しました。現在は信じられないほどの仕事量をこなし、素晴らしい事業を立ち上げています。

彼はエネルギーの塊、まさしく“元気玉”でした。1人の元気玉は、少なくとも周囲にいる100人を元気にすることができる、非常に貴重で価値の高い存在です。したがって、何年も追い続けて入社してもらうことなど、本来は当たり前なのです。人を連れてくることこそ、トップとしての時間の使い所だと思います。

単純に頭の良さや知識量を見るのならば、テストやグループワークなどを通して確認できます。私が行う最終面接では「この人は本当に頑張り抜けるかな? 土壇場で逃げないかな?」という視点で相手を見ます。仕事を行う上では辛いこと、苦しいことがたくさんあります。それに耐えるだけでなく、むしろ困難を楽しんでしまえるほどの人間かどうか、という視点で見ます。

もう1つは「思考の独立性」です。場の雰囲気や権威に影響され、受けの良い答えを口にするのではなく、常に自分の考えを正直に言えること。思考の独立性がなければ、チームとして意見を戦わせながら、新しい価値を生み出すことはできません。また、仕事に対するオーナーシップも持つことができないでしょう。

こうした話をすると、「どのように見極めているのか?」と尋ねられますが、上手には説明できません。「この人だ!」と感じて採用しても、実際はそうではなかったケースもたくさんあります。同じく、追い続けている途中で「ちょっと違うな」となるケースも半数以上あります。しかし、現在も追いかけている人がいます。人の見極めは本当に難しい。現在は「プロジェクトが大成功したときに、抱き合って喜び合いたい相手かどうか?」を自分の腹に問いかけることにしています。

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南場智子
日本経済新聞出版社



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南場智子 (株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー / 取締役)

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今回は近著「不格好経営」が話題となっている、株式会社ディー・エヌ・エーの創業者であり取締役である南場氏をお招きして開催いたします。


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