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DeNA流「強いチームのつくりかた」

Harvard Business Schoolアラムナイ・スピーカー・シリーズ:南場智子

BIZセミナーグローバルキャリア・人
更新日 : 2014年04月30日 (水)

第2章 会社の利益とは社会への貢献度を示す“通信簿”

南場智子(株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー / 取締役)

 
日本から世界のナンバーワンへ!

南場智子: DeNAは「モバゲー」というソーシャル・ゲームの会社。このようなイメージをもつ方が多いと思います。しかし、私たちのなかに「この事業だけやる」という考え方はありません。領域を決めた時点で、挑戦するフィールドを自ら狭めてしまうからです。

私たちが事業を立ち上げるうえで、大切にする基準があります。1つ目は、新しいインターネットサービスをつくり出すこと。2つ目は、仲間が心の底から「これをやりたい!」と言えるものであること。3つ目は、市場ポテンシャルがあり、大きな勝ちにつながるサービスであること。3つの条件が揃えば、インターネットの可能性を広げるべく、とにかく何にでもチャレンジします。

1999年の創業以来、新しい事業が続々と生まれているため、中心となる事業も2~4年サイクルで変化しています。オークションサイトを皮切りに、2001年にはショッピングモールサイトを追加しました。創業から数年はPC中心でしたが、1つのターニングポイントはモバイルへのシフトです。2004年3月にケータイ専用のオークションサイト「モバオク」をスタートし、初めて業界No.1のポジションを獲得しました。頂上に立つと、遠く水平線の先まで見渡せるようになり、次の戦略を立てる際の自由度が格段にアップすることも知りました。

広告ネットワーク事業を追加したあと、次の大きな柱として追加したのは、モバイルSNS「モバゲータウン」(現・モバゲー)です。当初はアバターによるコミュニケーションが主体で、ゲームは添え物的な存在でした。しかし、スマホの普及やユーザーの志向の変化により、中心軸はソーシャル・ゲームへとシフトしてきました。

そして、現在は「日本からグローバルNo.1へ」の掛け声のもと、世界への挑戦を進めています。大変な苦労を強いられていますが、それ以上に面白くてたまらないと感じており、「世界の頂上に日の丸の旗を掲げてやる!」という意気込みで取り組んでいます。



チームをつくる意義とは?

南場智子: 現在の売上高は約2,000億円、営業利益は約770億円です。規模としてはまだ小さくとも、結構な大きさだとも思われるかもしれません。振り返ってみると、わずか14年で随分大きくなったと感じます。最初の4年間は赤字の連続で、1カ月の売上高が数百万円、億単位の赤字を出していた、本当にどうしようもない会社だったのです。

2003年3月期の下半期、どうにか利益は黒字になりました。このときは心の底から喜びました。サービスをつくり、お客様に届けるためには、社会の様々なリソースを使わせていただかなければなりません。赤字はそれらを食い潰したまま、社会に何も還元していない状態ですから、赤字続きの頃は大きな劣等感に苛まれていました。

私が創業期から持ち続けてきた思いがあります。人はそれぞれ価値観が異なりますが、根底に1つだけ共通のものがある。それは「役に立ちたい」という気持ちです。世の中に貢献したい、誰かの役に立ちたい。ある経営者はそれを「貢献本能」と表現されていました。

たとえば、外科医や弁護士は、個人で人や社会の役に立つ職業です。いっぽうで、チームとは1人が発揮するパワーとは桁違いのインパクトを生み出し、世の中に貢献していくためにつくるものだと考えています。1年間チームとして汗をかき続け、その年を振り返ったときに「赤字だったけど、AさんとBさんの役には立てたよね」ではダメ。企業経営とは、それほどファジーなものではありません。

しかも、私たちは自分の力だけで立ち上った会社ではありません。様々な人の力、物理的な資本をお借りして立ち上がった会社であるため、大多数の人に貢献できなければ存在意義はありません。だからこそ、会社の利益は広く世の中への貢献度を表す“通信簿”だと考えているのです。

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不格好経営 - チ−ムDeNAの挑戦

南場智子
日本経済新聞出版社



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強いチームをどう作るか
南場智子 (株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー / 取締役)

南場 智子(株式会社ディー・エヌ・エーファウンダー / 取締役)
今回は近著「不格好経営」が話題となっている、株式会社ディー・エヌ・エーの創業者であり取締役である南場氏をお招きして開催いたします。


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