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グローバル・アジェンダ・シリーズ
2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力

個人の思いとつながりから始まる21世紀の地球貢献

ビジネススキルキャリア・人政治・経済・国際グローバル
更新日 : 2013年06月17日 (月)

第7章 起業に求められるものとは? —パネルディスカッション—

写真左:石倉 洋子(慶應義塾大学大学院教授)写真中央:中村 俊裕(米国NPOコペルニク共同創業者・CEO)写真右:大澤 亮(㈱Piece to Peace代表)

 
石倉洋子: 地球貢献、ソーシャルビジネス、起業、あるいはBOP市場に興味がある方々がたくさんお集まりになっていると思います。まずは起業についてお伺いしたいのですが、起業にあたってはどこかで大きな決断が必要になりますよね。

中村俊裕: 実は、コペルニクのプロトタイプを、国連本部で働いていた時点で始めていました。平日の朝と夜、週末を使ってウェブサイトを構築したり、テクノロジーを製造する企業や途上国で活動する団体とスカイプでディスカッションしたり。自分の資金内で、小さなパイロットテストも行いました。そして、実際に現地にテクノロジーを持っていくと、とても喜ばれました。そうしたことを繰り返しているうちに「これは絶対にやるべきだ」と思ったのです。

しかし、なかなか決断はできませんでした。ちょうどその頃、妻が妊娠していたので、この時点で仕事を辞めるのもどうかなと。結局は1年間休職してテストを続けました。1年経ってかなり順調に進んだため、さらにもう1年休職して(笑)。それで、今から2年ほど前に、国連を辞めて完全にコペルニクにシフトしました。

大澤亮: 私の場合はタンザニアでの経験から、リスクに対して鈍感になっていたというか、最初はできる範囲でやって、ダメならまた頑張ろう、という程度の決断でした。もう1つは、最初に証券会社の比較サイトを起業した時のように、時代の大きな流れが来ている時がある。そこで、自分は何ができるかと考えるわけです。それでブレストなどをしてアイデアをたくさん出し、これは行けると思ったら、すぐに実行する。その意味では、決断のスピードも大切にしています。

起業のビフォー&アフター

石倉洋子: 起業するには、相当のパワーだけでなく、具体的なビジネスモデルも必要になります。よく耳にするのが、起業はしたものの、思いだけが先行してしまい、結果的にうまくいかなかったというケースです。それだけに、起業する前は綿密にプランを考えられたと思いますが、実際に事業が軌道に乗るまでには、どのような変遷があったのでしょうか?

中村俊裕: 自分の銀行口座がゼロになる寸前、という経験は何度もありました。なぜ、私が今日この場でお話しできているかというと、たまたま大口の支援が得られたからです。本当に幸運でしたが、それを導くための土壌づくりは普段からしていたつもりです。色々な分野・立場の人に自分の思いを伝えて、地道にネットワークを広げていましたから。

変遷という面では、私たちは基本的にオンラインを通じてプロジェクト単位で寄付を集め、諸経費として我々が10%をいただいています。それが収入となりますが、これは寄付の金額が相当大きくないと運営費まで回りません。最初は、インドネシアで生活していけるくらいは何とかなると考えていましたが、実際にそこまでいくのが大変でした。

そこで、扱っているテクノロジーを日本で販売してみました。これが結構売れましたし、コペルニクのPRにもなりました。企業から現地調査などの依頼も入ってきたので、精一杯対応しました。こうしたことを組み合わせながら、徐々に軌道に乗っていったという感じです。

大澤亮: 私の場合、大きく物販と権利からの収入を想定していました。当初は1年ぐらいで黒字化できるだろうと甘いプランを立てていました。実際に会計上の黒字になったのは、去年ようやくという感じです。ただ、在庫の問題があるため、現在もまだ難しい状況です。周囲の先輩方からも「倒産の一番の理由は在庫だ」と言われていたのですが、私たちのビジョンを多くの人に訴求し、かつ事業を広げていくためには、どうしても売上の拡大を狙いたくなる。そのためには大量の在庫を抱えて、効率的に販売していく必要がある。今でも在庫についてはジレンマがあり、大きな課題です。今後は、なるべく在庫を抱えないで済むよう、権利収入に力を入れていきたいと考えています。


該当講座

2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力

~既存の枠組みから飛び出し、たどり着いた地球貢献のかたち~

2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力
中村俊裕 (コペルニク共同創設者兼CEO)
大澤亮 (株式会社Piece to Peace 創業者・代表取締役社長)
石倉洋子 (一橋大学名誉教授)

中村 俊裕(米国NPOコペルニク共同創業者・CEO)
大澤 亮(㈱Piece to Peace代表)
石倉 洋子(慶應義塾大学大学院教授)
今回のセミナーでは、過去に伝統的な途上国支援の現場に携わり、そこからブレークスルーを生み出した2人の若き起業家にゲストとしてお越しいただきます。BOPビジネスに熱い視線を送る日本企業との関係や、グローバル人材育成、ファッション大国の日本ができること等にも触れながら、2人のスピーカーを通じて既存の枠組みを超えて活動するために必要な力について考えます。


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