記事・レポート
グローバル・アジェンダ・シリーズ
2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力
個人の思いとつながりから始まる21世紀の地球貢献
ビジネススキルキャリア・人政治・経済・国際グローバル
更新日 : 2013年06月10日
(月)
第4章 原点はタンザニアで覚えた違和感
キャリアとリスク、ODAの狭間で
大澤亮: 株式会社Piece to Peaceの代表を務めている大澤です。私のキャリアは、総合商社の駐在員として赴任した中央アフリカ東部、タンザニアから始まっています。そこでODA(政府開発援助)を担当した時に覚えた違和感が、現在の事業の原点となっています。ご存じの通り、ODAは政府から政府への援助です。その中で商社の駐在員の役割は、その国の政府、日本の大使館、現地のNGOなどと一緒にプロジェクトを立案すること。もう1つは、日本政府によるプロジェクト承認後、その実施から完遂までをマネジメントしていくことです。
タンザニアではたくさんの貴重な体験をし、大きなやりがいを感じていました。しかし、その裏では、今後のキャリアのあり方、「リスク」の意味、ODAに対する疑問も抱えていました。
タンザニアに行ったのは25歳の時でした。上司も先輩もすごく仕事ができる。自分は情熱だけはありましたが、とにかくもっと仕事ができるようになりたいと強く感じました。また、様々なプロジェクトを進めていく中では、経営スキルの必要性も痛感しました。さらに、当時はインターネットバブルに沸いていた時期であり、時代の波に取り残されるのではないか、という危機感も持っていました。
他方で、タンザニアの人々は食べる・学ぶ・働くこともままならない。また、多くの感染症がありながら、医療環境も整備されていない。常に生命のリスクに晒された中で生活しています。翻って、日本人は簡単に「リスクだ、リスクだ」と口にする。問題のレベルはまったく違うのに。そうしたこともあり、「リスクとは何だろう」と深く考えさせられました。
Government to GovernmentからPiece to Peaceへ
大澤亮: もう1つ、タンザニアに駐在していた頃に感じたことがあります。日本に一時帰国した時、周囲の人々にODAの話をしても、まったくといっていいほど関心を持たれませんでした。自分のことをよく知る家族や友人ですらそうだった。これは本当にショックでした。
ODAの原資は私たちが払っている税金です。税金は強制的に徴収されるという性格から、その使い道について個人の意思はほとんど反映されません。そのために関心が持たれないのかもしれません。また、ODAは「外交」です。どの先進国にもODAがあり、それを外交上の有効な手段として捉えています。これは国としては正しい仕組みです。しかし、実際の現場を見たことで私は、国際援助のあり方やその効果に少なからず疑問を持つようになりました。
その頃から、一人ひとりがもっと世界の課題に関心を持ち、自らの意思で関われるような新たな仕組みが必要だと、考えるようになりました。しかし、どのような形で行うにも、当時はまだ力が足りないと感じていました。そこで経営スキルを身につけるべく、会社を辞めて証券会社の比較サイトを立ち上げて企業経営を体験したり、コンサル会社に就職したりと、“修業”の日々を数年間過ごしました。
グローバル・アジェンダ・シリーズ
2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力 インデックス
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第1章 国連の中で感じた途上国支援の限界
2013年06月03日 (月)
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第2章 ラストマイルにテクノロジーを届けたい
2013年06月05日 (水)
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第3章 企業と現地のニーズを踏まえたビジネスモデルづくり
2013年06月07日 (金)
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第4章 原点はタンザニアで覚えた違和感
2013年06月10日 (月)
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第5章 ファッションを通じて世界と個人をつなぐ
2013年06月12日 (水)
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第6章 新しいビジネスを生み出すためのステップ
2013年06月14日 (金)
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第7章 起業に求められるものとは? —パネルディスカッション—
2013年06月17日 (月)
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第8章 思いを語り続けることが広がりとつながりを生む
2013年06月19日 (水)
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第9章 ソーシャルビジネスの実際
2013年06月21日 (金)
該当講座
2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力
~既存の枠組みから飛び出し、たどり着いた地球貢献のかたち~
中村 俊裕(米国NPOコペルニク共同創業者・CEO)
大澤 亮(㈱Piece to Peace代表)
石倉 洋子(慶應義塾大学大学院教授)
今回のセミナーでは、過去に伝統的な途上国支援の現場に携わり、そこからブレークスルーを生み出した2人の若き起業家にゲストとしてお越しいただきます。BOPビジネスに熱い視線を送る日本企業との関係や、グローバル人材育成、ファッション大国の日本ができること等にも触れながら、2人のスピーカーを通じて既存の枠組みを超えて活動するために必要な力について考えます。
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