記事・レポート

2012年版 いま、気に掛かる本たち

ライブラリーフェローによる、本にまつわる話

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2013年02月14日 (木)

第6章 日本論・日本人論、再び・三たび(4)

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そもそも日本的なものなんてあったの?

澁川雅俊: 『日本の文脈』は、回帰を忌避して新しい環境下での新しい価値観の創造を訴えていますが、経済小説家(または、金儲け指南役と言うべきか)の橘玲が書いた『(日本人) かっこにっぽんじん』〔幻冬舎〕は、日本の古き良き考えや振る舞いや日本人らしさなんて日本人固有のものでもなんでもなく、「人間の本性にすぎない」と、さらに論を先鋭化させています。また、彼はこう主張します。

——いわゆる日本人論や日本人像は明治以降欧米との接触によって自らこしらえてきた自画像にすぎない。しかも「日本人は」と言う語り口には、しばしば「我々は特別だ」という強がりが込められているが、そんなに自慢できるようなことではない。いまこの閉塞感に充ちたときに、私たちは一度、それを括弧で括ってみて、現在の世界での日本人、世界史の流れの中での日本人を冷静に考えてみる必要がある。——

この主張に基づいて著者は、まず日本人固有の思考や行為の特性を分析し、それを世界的な価値観で評価し、最後に「私たち一人ひとりが、自立した自由な個人として、正義や幸福や社会、そしてなによりも未来について考えるべきなのだ」として、理想郷を描きその中での人としてのあるべき考えや行いを提唱しています。