記事・レポート
日本は文化で世界に打って出る
近藤誠一文化庁長官×竹中平蔵が語る「文化と経済」
アカデミーヒルズセミナー文化政治・経済・国際
更新日 : 2011年09月02日
(金)
第4章 日本再生に必要な3つの改革
近藤誠一: 文化・芸術、あるいは創造産業で日本が再生するために必要なのは、まずは文化というものの意味を見直すことです。リタイアしてから趣味としてやればいいというものではなく、毎日の生活の中で生きる力、悩みを解く力、あすへの希望を与えてくれるのが文化であると見直すことが必要だと思います。
そのためにはどうするかといいますと、有形・無形の文化資源を国の力にするようなシステムを構築することです。その第一は「意識改革」です。国民一人ひとりが文化を生活の中心に据えること、また企業もCSR——私はCCR(Corporate Culture Responsibility)と言っていますが——の中心に文化・芸術を据えること、そして政府や自治体は、環境や福祉も大事ですが、文化のほうにももっとお金を出すことです。
次に「制度改革」も必要です。政府や自治体の予算をせめて韓国並み、あるいはヨーロッパ並みにする。アメリカ方式で寄附に頼るのでもいいと思います。これは国民の選択ですが、私は日本人の国民性からして、政府ないし自治体が相当程度の支援をして方向性を示すほうが、アメリカのように企業や財団に任せるよりうまくいくような気がいたします。
それから「教育改革」も重要です。単に音楽や図工のクラスで何かを教えるだけでなく、子どもたちに実際に何かをやらせるワークショップが必要だと思います。船橋市のある小学校では「コミュニケーション教育」として、子どもたちにちょっとした動きをさせてビデオで撮り、それを逆回しにして見せて、「これで映画をつくってごらん」とやっていました。すると、みんな目を輝かせながらストーリーをつくるんです。また、東久留米のある小学校では、劇団による演劇指導をやったところ、それまで不登校だった子がその時間だけは出てくるようになった、保健室でずっと過ごしていた子がその時間だけは出るようになった、ということがあったそうです。
これは小さなエピソードにすぎないかもしれませんが、文化・芸術というものが子どもたちの目を開かせ可能性を引き出すということを、現場を見て本当に心の底から実感しました。
また、アートマネジメントも必要です。飲食業に例えれば、シェフはいいものはつくれるけれど宣伝はできないし、サービスも得意ではないでしょう。レストランという箱をどうレイアウトにし、どう宣伝し、どういうメニューをつくるか。そうしたことを手がけるマネジャーが必要です。アートの世界では学芸員が育ちつつありますが、アートマネジャーを育てることも必要でしょう。
こうしたことは時間がかかるかもしれませんが、今やらなければ永久に実現できません。今から動き出せば、恐らく10年20年経った頃には、日本は見違えるように光り輝く国になっていることでしょう。
そのためにはどうするかといいますと、有形・無形の文化資源を国の力にするようなシステムを構築することです。その第一は「意識改革」です。国民一人ひとりが文化を生活の中心に据えること、また企業もCSR——私はCCR(Corporate Culture Responsibility)と言っていますが——の中心に文化・芸術を据えること、そして政府や自治体は、環境や福祉も大事ですが、文化のほうにももっとお金を出すことです。
次に「制度改革」も必要です。政府や自治体の予算をせめて韓国並み、あるいはヨーロッパ並みにする。アメリカ方式で寄附に頼るのでもいいと思います。これは国民の選択ですが、私は日本人の国民性からして、政府ないし自治体が相当程度の支援をして方向性を示すほうが、アメリカのように企業や財団に任せるよりうまくいくような気がいたします。
それから「教育改革」も重要です。単に音楽や図工のクラスで何かを教えるだけでなく、子どもたちに実際に何かをやらせるワークショップが必要だと思います。船橋市のある小学校では「コミュニケーション教育」として、子どもたちにちょっとした動きをさせてビデオで撮り、それを逆回しにして見せて、「これで映画をつくってごらん」とやっていました。すると、みんな目を輝かせながらストーリーをつくるんです。また、東久留米のある小学校では、劇団による演劇指導をやったところ、それまで不登校だった子がその時間だけは出てくるようになった、保健室でずっと過ごしていた子がその時間だけは出るようになった、ということがあったそうです。
これは小さなエピソードにすぎないかもしれませんが、文化・芸術というものが子どもたちの目を開かせ可能性を引き出すということを、現場を見て本当に心の底から実感しました。
また、アートマネジメントも必要です。飲食業に例えれば、シェフはいいものはつくれるけれど宣伝はできないし、サービスも得意ではないでしょう。レストランという箱をどうレイアウトにし、どう宣伝し、どういうメニューをつくるか。そうしたことを手がけるマネジャーが必要です。アートの世界では学芸員が育ちつつありますが、アートマネジャーを育てることも必要でしょう。
こうしたことは時間がかかるかもしれませんが、今やらなければ永久に実現できません。今から動き出せば、恐らく10年20年経った頃には、日本は見違えるように光り輝く国になっていることでしょう。
日本は文化で世界に打って出る インデックス
-
第1章 日本は経済・社会では世界トップクラス。でも幸福度は90位
2011年08月29日 (月)
-
第2章 戦後の経済的成功が、文化・芸術の軽視につながった
2011年08月30日 (火)
-
第3章 日本人が気づいていない「日本の宝」
2011年09月01日 (木)
-
第4章 日本再生に必要な3つの改革
2011年09月02日 (金)
-
第5章 文化予算の公平な配分は可能か?
2011年09月05日 (月)
-
第6章 文化になぜ国がお金を出すのか?
2011年09月06日 (火)
-
第7章 地域活性化のカギは「文化と観光」~成功例と今後の課題~
2011年09月08日 (木)
-
第8章 これからの「文化」の話をしよう
2011年09月09日 (金)
該当講座
近藤誠一×竹中平蔵が語る「文化と経済」
~日本は文化で世界に打って出る~
近藤 誠一(文化庁長官)
竹中 平蔵(慶應義塾大学教授/アカデミーヒルズ理事長)
昨年7月に第20代文化庁長官として、外務省からの初めての起用ということで就任された近藤氏。外交官として長期に渡る海外経験から、日本を外から見てきて感じたことは、これからの国づくりにおいて、文化・芸術を柱の一つに据えなくてはいけないということでした。竹中氏が近藤長官と「これからの日本の文化と経済」について語ります。
アカデミーヒルズセミナー
文化 政治・経済・国際
注目の記事
-
10月22日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年10月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
10月22日 (火) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
-
10月22日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 11月28日 (木) 19:00~20:30
World Report 第10回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくることを参加者の皆....
「ハリス V.S. トランプ 米国大統領選挙結果を読み解く」
-
開催日 : 11月14日 (木) 19:00~20:30
「あたりまえ」のつくり方
「テクノロジー」、「ダイバーシティ」、「サステナビリティ」という3つの世界的潮流が押し寄せる中、これまで以上に本来のPRが持つ「新しいあたり....