記事・レポート

いま、環境の何が問題なのか

環境問題を取り巻く世界の動向と、問題の本質を捉える

更新日 : 2009年09月03日 (木)

第6章 アメリカの環境政策の実現可能性

竹中平蔵氏 アカデミーヒルズ理事長


竹中平蔵: 地球環境問題は、グローバル・アジェンダの最重要課題の1つだと思います。今、金融の問題が起きて、IMFをどのように改革していくのか、つまりグローバル・ガバナンスをどう強化していくのかということや、貧困問題をどのように解決していくのかということも重要なグローバル・アジェンダになっています。

ダボスでも、グローバル・アジェンダを解決していくためには、ポリティカル・リーダーの主導がなければいけない、それも一国の総理、大統領クラスのリーダーシップが必要だと話し合われました。オバマのグリーン・ニュー・ディールは大胆ですよね。ただアメリカでは、「キャンペーンのときに言ったことは、大統領になってからやらなくてもいい」とよく言われます。実際、ブッシュもクリントンも、選挙キャンペーンのときに言ったことと、大統領になってからとった政策はかなり違います。そのあたりの感覚を教えていただきたいと思うのです。

小島敏郎: グリーン・ニュー・ディールは、ベースに長い間上院でかなり煮詰まっていたキャップ&トレードの議論があります。いろいろな法案が出されましたが、確かオバマさんはボクサー・サンダース法案(※編注:1990年を水準として、温室効果ガスを2050年までに80%削減する)の共同提案者だったと思います。そういう意味ではベースがあるので、キャンペーン用ではないと思います。

竹中平蔵氏 アカデミーヒルズ理事長
竹中平蔵氏 アカデミーヒルズ理事長
竹中平蔵: 「100%オークション」の話は、これまでの対策とは画期的に違ってわかりやすいのですが、本当にこれがよい政策かどうかというのは、ちょっと疑問があるのです。経済学者としては、世界の経済を混乱させるのではないかと懸念するのですが、この点については、どういう議論がなされているのでしょうか。

小島敏郎: 上院で議論されていたキャップ&トレード法案では、一気に100%やるかどうかは別にして、必ずオークションという議論があります。オークションというのは政府に収入が入ってくるわけで、得られた収入をどういうところに配分するか。各ステーツを背中に背負った上院議員の利害調整の場になっているのです。そういう意味で、オークションを導入するということは、ある種のコンセンサスなんです。

技術的にオークションに移行するというのはEUでもそうで、EUの場合は2013年からオークションで電力のキャップ&トレードをやっていきます。その理屈を「ポリューター・ペイズ(汚染者負担)」と言ったのはオバマさんですが、温室効果ガスクレジットのマーケットをコントロールする仕組みを同時にセットしなければいけないということも、オークションの議論と一緒にやっていると思います。

竹中平蔵: これは資源配分の問題ですから、政治が配分するということになると、今後の具体的な制度設計に注目をしなければいけないと思います。


該当講座

いま、環境の何が問題なのか
〜大局的な視点から問題の本質を捉える〜
小島敏郎 (地球環境戦略研究機関特別顧問/前環境省地球環境審議官)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

小島 敏郎(前環境省地球環境審議官)×竹中 平蔵(アカデミーヒルズ理事長)
地球温暖化問題が注目を集める中で環境関連の情報が氾濫しており、本質が見失われがちな現在、改めて「環境問題」とは何かを小島氏と竹中理事長に議論していただきます。


BIZセミナー 環境