記事・レポート

いま、環境の何が問題なのか

環境問題を取り巻く世界の動向と、問題の本質を捉える

更新日 : 2009年07月10日 (金)

第2章 日本のグリーン・ニュー・ディールが陥りやすい落とし穴

小島敏郎氏 地球環境戦略研究機関特別顧問
アカデミーヒルズセミナー会場の様子

小島敏郎: 明日への希望へとつながる不況対策について、日本にはビジョンがあるでしょうか? 不況という霧はいずれ晴れますが、霧が晴れる前の世界がそのまま残っているわけではないでしょう。晴れたときに、ほかの国はどう変わっているのかを考えながら、日本をつくっていかなければいけない。今の日本に必要なことは、不況を超えたときに、「明日は今日よりもよい日が来る」という希望が本当に持てるかということです。

それから、自立する経済と安全保障の観点はあるのでしょうか。オバマ大統領が就任演説で、「アメリカの石油の消費が、アメリカの敵を助けている」と言いました。アメリカにはこれが根底にあるわけです。EUの場合も、不安定なロシアの天然ガス協定にいつまでも依存しているわけにはいかず、できるだけ自立し、エネルギーの安全を守っていこうとしています。

化石燃料のほとんどを海外から輸入し依存している日本に、そういう安全保障の観点があるでしょうか。毎年何十兆円という輸入代金を化石燃料に払っていて、これを払わなくてもいい経済をつくろうと、どうして考えられないのでしょう。海外に流れているお金が国内で回れば、マイナス・コストではなく、新しい経済が起こって、自立する経済になります。

小島敏郎氏 地球環境戦略研究機関特別顧問

それから「グリーン・ニュー・ディールの必然性」です。これを進めていくには、道義性があり、かつ、強力で安定した政権が必要だと思います。「まず世界の利益、その中で日本の利益」という順番なのに、日本の交渉は「まず日本の利益、そして世界の利益」なんです。これではほかの国が耳を傾けてくれません。EUがうまいのは、まず世界の利益を語り、その中でEUの利益を追求していることです。

強力な政権、安定した政権も不可欠です。このところ政権の政策の賞味期限があっという間に切れています。一旦政策が出されて、「そうか、その方向で国民も企業もやっていこう」と、政府の政策を信じてついていったら、もう変わってしまう。これではなかなか政権の言うことを信用して投資をしようという気にはなりません。継続というのは大きな力なのです。


該当講座

いま、環境の何が問題なのか
〜大局的な視点から問題の本質を捉える〜
小島敏郎 (地球環境戦略研究機関特別顧問/前環境省地球環境審議官)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

小島 敏郎(前環境省地球環境審議官)×竹中 平蔵(アカデミーヒルズ理事長)
地球温暖化問題が注目を集める中で環境関連の情報が氾濫しており、本質が見失われがちな現在、改めて「環境問題」とは何かを小島氏と竹中理事長に議論していただきます。


BIZセミナー 環境