記事・レポート

完全デジタル化がもたらすメディア変革

~これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み~

更新日 : 2009年06月09日 (火)

第9章 視聴者によるテレビ放送の動画アップは認められるのか

田村和人 日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長

会場からの質問: 「放送に載り切らないコンテンツのアウトプット」に非常に興味があります。例えば、とても尺に入らない部分や、ドラマなどのNGシーンやメーキング映像はもう出していらっしゃるのでしょうか。あるいは、どの辺まで出すつもりなのでしょうか。 

田 村: 「テレビでは放送していない未放送部分」の一部は使えるかもしれません。例えば、NHKの番組『ダーウィンが来た!』は、多分すごい尺を回していますよね。それを教育番組の理科教材として使うとか、ワンカットだけではなくて長めに使うとか、それはあるかもしれません、それは民放でも同じことです。

でも、ドラマでそれができるかといったら、製作者の心理としては絶対ノーだと思うのです。製作者は切り刻んで、切り刻んで、最善にして1つのパッケージにしているわけです。だから、ものによってはあるけれど、ものによってはないという気がします。

スポーツならあるかもしれません。編成の都合で試合の途中で切ったりすることもあるわけで、それはファンの人にとっては重要なコンテンツになります。

会場からの質問: 今、キー局の番組を地方局はかなりの割合で放送しますが、今後、仮にウェブでほとんどのコンテンツが配信された場合に、いわゆる地方局のサイトはどういったあり方になるのか気になります。 

田 村: 僕は出張する機会が多かったので、ほとんど全ての系列局に行ったことがあるのですが、ドラマなどライブである必要が薄いものは、長い目で見ると配信方法が変わる可能性がありますね。テレビとして生き残ると思うのは、例えば五輪を代表とするスポーツイベント、重大な事故や災害の放送です。5年10年とは思わないのですが、15年20年経った後、テレビのネットワークという概念がどういうふうに変化していくか興味深いというか、何かあるかもしれませんね。

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会場からの質問: 「第2日本テレビ」を立ち上げられる前に想定していた視聴層と、実際立ち上げた後の視聴層の差を教えていただけたらと思います。

田 村: 現状は、女性の割合が約50%と多いんです。それはさっきの『伊東家の裏ワザ』や『3分クッキング』など女性好み向けの番組があるからかも知れません。他の動画サイトはやや男性が多いです。そういう意味では、「男女ほぼ半々という珍しい動画サイトです」というのが一番売り文句になっています。年代的には結構バラけています。

神 原: 確かに女性が多いというのは、コンテンツを見ていても分かります。安心して、家族の前でも見られるサイトというのは意外と少ないですね。

田 村: それはスポンサーさんからも言われます。「第2日本テレビ」は、トップ画面にビキニ姿とかは絶対ないし。子どもがいる前でパンとサイト画面を出しても、たじろくことは多分ないと思います。

会場からの質問: 今後の方向性としては、ある程度基準をつくって、視聴者からの作品のアップも認めるのでしょうか、それとも、局からの提供コンテンツをメインに考えるのでしょうか。

田 村: 視聴者から放送した番組コンテンツの投稿を認めるとことは、著作権の問題からも、見込みはゼロだと思います。我々も動画投稿のシステムを持っていますが、視聴者投稿と放送番組は完全な棲み分けをしていくことになるだろうと思います。

会場からの質問: 地デジが普及することによって、例えばCMなども、認知だけではなく具体的なアクションにまでもっていけるような、そういう新しい広告モデルについて、何かお考えがありますでしょうか。

田 村: データ放送を使うと、結構いろいろなことができます。ただ、CMは15秒ものが主体でその時間内に裏処理させることは難しい。1社提供の番組を流している間中、裏で何かやるというのであればできるかも知れません。

例えば、テレビ信号の一部にURLを仕込ませることができるのです。テレビをみていて興味を持ったときに、PC等にウェブコンテンツを出すことは技術的にできます。そういった際も日本の場合、携帯電話が重要なメディアになるかなと思っています。

神 原: 何か実現が早そうな気がしますね、楽しみです。今日はありがとうございました。(終)


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田村和人 (日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長)
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