記事・レポート

完全デジタル化がもたらすメディア変革

~これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み~

更新日 : 2009年03月13日 (金)

第3章 映像メディアが分散化した時代の到来

田村和人 日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長

田 村: 50年代から70年代、テレビはまさにtele-vision、遠方にあるものを可視化するだけの、本当に単純な道具でした。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で描かれたように、茶の間にみんなが集まって見るもので、「テレビは暖炉のかわりだった」と言う学者もいます。この第1期といえる時期が、テレビが一番力を持っていた時代でしょう。

80年代からの第2期は、外部入力が増えて、テレビがモニター化しました。テレビゲームとSTB(ケーブルテレビなど)、ビデオカセットレコーダーの登場です。任天堂のファミコンが出たのが83年ですが、テレビゲームはニューメディアと同時並行です。テレビの外部入力端子が使われるようになったわけで、その間、当然テレビの視聴はストップします。放送局にとってはライバル登場だったのです。

今、第3期に入ってきたところで、映像メディアがすごく分散化している時代です。ですから、テレビという概念自体がすごく怪しくなってきていて、我々古い世代から見ると大きく変わってきています。特に若い方は、テレビは放送を生で見ずに録画したり、どうしても見逃したら動画共有サイトで見るという話も普通にされています。

携帯電話でも動画が見られるし、ウェブ上でも視聴できるのはご存じの通りです。基本的にはICT(情報通信技術)が発展すれば、大量のデータをさばけるわけですから、音声よりはるかにデータ量の多い映像もハンドリングできるようになるのは当然のことです。

田村和人 日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長
新しいメディアは基本的にはIP(インターネットプロトコル)系です。IP自体は60年代に確立した、もう枯れた技術なんだそうです。ところが、IPが爆発的に活用されたのは20世紀の終わりになってから。IPは安価に採用できて、しかもネットワーク外部効果が大きい、要するにIPを採用すれば、どんどん他のサービスにつながっていけるということにみんな気づいたわけですね。そうするとIP以外のサービスを単独ではやっていけないというムードが出てきます。

かつては、「あのテレビ番組は何曜日の何時」という意識がみんなにありました。ですから、かつては「今日はあれを見るから帰るんだ」という会話がよく交わされていました。そういう会話は現在減っているし、「録画し忘れちゃったけど、もういいや」というパターンも増えています。「タイムシフト&プレースシフト」に関しては、圧倒的に常態化してきたと感じます。

これは、蓄積・複製する技術が発展してきた当然の帰結だと思います。ですから、これはもう止まらない。また、映像メディアが分散化すると「コンテンツは玉石混交」。要するに、どのメディアのチャンネルからのコンテンツがリライアブルなのか、メディアリテラシーが問われていますが、それをはっきりさせる必要が出てくる。しっかりとしたポジションを我々が担わなければまずいと思います。


該当講座

完全デジタル化がもたらすメディア変革
〜これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み 〜
田村和人 (日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

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