記事・レポート

完全デジタル化がもたらすメディア変革

~これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み~

更新日 : 2009年03月23日 (月)

第4章 「タイムシフト&プレースシフト」への対応

田村和人 日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長

田 村: 多メディア化が起こっている中で、放送局はこれまでのメディア・番組編制とは違う編制をどう考えたらいいんだろうと、放送業界全体で考えています。弊社の目標で「いつでもどこでも日テレ」という一項がありますが、要するに「Anytime Anywhere」で、さっきの「タイムシフト&プレースシフト」であり、そのために何をすればいいんだろうということです。

マス向けで同報性の高いものは未だにテレビ放送ですが、それが多チャンネル化し、それから携帯電話やデータ放送があり、その他、ウェブやVOD、ダウンロードサービスもある。テレビ局としては、これらを一体的にサービスしていかないと変化についていけない状況に来ているのかなと思っています。

今、テレビ番組をオンラインでサービスする「見逃し視聴」という言葉が新聞等を騒がせています。NHKが12月1日から、NHKオンデマンドをしています。「見忘れた、予約も忘れた、でもネットがある」というサービスをやっていかなければいけないというのが、我々の具体的なテーマの1つです。しかし、それをどうしたら拡大できるのか、サステナビリティあるサービスとはどういったものかと考えているというのが、放送局側の状況でしょうか。

田村和人 日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長
動画共有サイトでは多くのテレビ番組がアップロードされており、これらにどう対応するかもテーマです。そこでたくさんの動画が見られているわけですからニーズはあるはず。放送局がきちんとしたサービスを拡大していくことになるでしょう。
放送局のインターネットサービスの狙いは6つほどあります。


1)放送の補完。例えば料理番組のレシピなど、短時間に書き留められないような情報をウェブに載せる。

2)番組制作のツール。アンケートの実施やクイズの回答をとったりすることが挙げられます。

3)放送外ビジネスの支援。これは様々な事業のプロモーションです。

4)タイムシフトサービス、番組見逃し対策です。有料か無料かは検討事項ですが、有料サービスが根付けば新たな収入源となります。

5)放送に載り切らないコンテンツ。例えば、読売日本交響楽団は日本テレビの関連団体なのですが、昔はコンサートの模様を深夜に放送していたんです。現在は番組編成上、なかなか難しくなっていますが、地道にコンテンツをつくっています。これなどはまさに地上波ではカバーしきれない領域ですね。多メディア化の中で、こういったアウトプットの方法があると感じています。

6)インターネット向きのオリジナルコンテンツ。ここは、日テレは力を入れています。例えば「スピンオフ」といって、番組の本編とは別のコンテンツに収録してインターネットで配信しています。ドラマの場合と、最初からスピンオフをつくる番組を想定して、同じ脚本家、同じ制作スタッフ、それから出演者は本編に出ている出演者の一部の方に手伝ってもらっています。欧米でも結構流行っている手法で、ウェビソード(ウェブ用のエピソード)という言葉があります。


該当講座

完全デジタル化がもたらすメディア変革
〜これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み 〜
田村和人 (日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

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