記事・レポート

完全デジタル化がもたらすメディア変革

~これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み~

更新日 : 2009年03月30日 (月)

第5章 日本テレビのクロスメディア広告戦略

田村和人 日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長

田 村: 広告は、民間放送にとっては今後も主な財源です。これまでのAIDMA(Attention注意→Interest関心→Desire欲求→Memory記憶→Action購買)という有名な広告モデルから、最近流行っているのはAISAS(Attention注意→Interest関心→Search検索→Action購買→Share情報共有)で、AttentionとInterestまでは一緒だけれど、その後、パソコンでSearchして、価格比較サイトで値段を見るとか、実際には通販で買うことも多いですね。さらにそれをブログに載せたり、メールで情報をシェアするモデルです。

民間放送局の中で「クロスメディア広告」を一番熱心にやっているのが我々なのかもしれません。広告代理店の調査ですが、「検索するきっかけとなった媒体」では、「テレビCM」が一番多くて45%、その他「雑誌」(39%)、「新聞」(30%)というデータもあります。テレビ広告で「検索はこちら」という表現をよく見ますが、検索率は、表示しない広告の2.4倍もある。商品が日用消費財なら10倍に跳ね上がるという調査もあります。

「そもそもマスコミに世論をつくっていく力があるのか?」ということに関しては、これまで評価されたりされなかったり、波があります。その中でも、今、これだけはあると言われているのが、アジェンダセッティング「議題設定機能」です。例えば新しい飲み物であれば、「ああ、こういうのが出たんだね」と何となく頭に入れてもらえる力、さっきのAISASでいうとA、Iぐらいまでですけれど、テレビはその点においては一番強いと言えます。

我々のクロスメディア・プランニングは、だいたい次のメディアを中心に展開されています。地上波テレビやウェブ、ワンセグ、これはデータ放送を含めてです。それから外部のウェブですね。SNS系であったり、携帯サイトなどもそうです。交通系・デジタルサイネージ系、あとは印刷物とかイベントです。

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日本テレビでは、例えば車のプロモーション。これはテレビとウェブ連携といっても、ほとんどウェブのために収録してやったものです。あとは去年話題になった携帯電話のプロモーションで、これはドラマとブログを連動させました。架空の女優さんがブログを書いているという設定で、一般の方からレスやコメントをもらいながら、脚本家が次の展開を考えていきました。他にもあるのですが、我々がハンドリングできるコンテンツを総動員してやっているという例です。

テレビが第3期に入ってすごく気になっているのは、リビングPCです。僕もテレビを見ていて、「明日の天気は?」「何かニュースあったのかな」「この人物の情報がほしい」と検索したくなることがよくあります。ふと、「パソコンだったら便利だな」と思っていたんです。「acTVila(アクトビラ)」や「ひかりTV」など、テレビをモニターとしたインターネットサービスも出てきていますし、webブラウザを載せたテレビも出てきました。携帯電話の第4ジェネーションも来るでしょうし、iPhoneとかグーグルの「アンドロイド」(携帯端末用OS)もある。要するに「我々が気にしなければいけないスクリーンはいっぱいある」ということです。

後は、テレビをスクリーンとしたセットボックス系ですね。Wiiはインターネット結線率が高いという話もあります。また、ケーブルテレビが普及する中でJ:COMのオンデマンドサービスも伸びています。そういったものに対して、我々が何か協力できるのか、あるいはコンテンツを載せてもらうのか、考えなければいけない時代になりました。

これまでのテレビ局のビジネスモデルといえば、まず地上波のオンエアがあって、放送していない地域への番組販売、VHSやDVDでのビデオグラム化等でした。このサーキュレーションでやってこられたんです。ご存じの通り、それぞれ各局がレコード会社を抱えるなどして、テレビ番組を中心とした「コンテンツ・エコシステム」を、ある程度グループ内で完結していたのですね。

これが今はすごく分散してきてしまったわけで、やはりグループ内で閉じている時代は終わったなと思っているのです。放送局はかなり自前主義でやってきましたし、放送業界自体がこれまで外部との協業はしなくてよかったわけです。だからこそ、「じゃあ誰と何をやるの?」がポイントで、それが放送業界の腕の見せどころかなという気がしています。


該当講座

完全デジタル化がもたらすメディア変革
〜これからのテレビメディアはこう変わる:日本テレビの取り組み 〜
田村和人 (日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター長)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

2011年7月の地上波デジタル完全移行まで3年を切り、地上波テレビ放送業界は歴史的な大転換期に向けて、テレビメディアの新しい可能性を具現化させるべく、さまざまな取り組みを加速させています。一方では、インターネット広告の隆盛と対照的に日本におけるマスコミ四媒体の広告費は3年連続で前年を下回り、テレビ広....


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