記事・レポート

「東京オンリーピックができるまで」

更新日 : 2009年01月22日 (木)

第2章 ヒットする映画の条件を満たしていない、のが吉と出た

東京ONLYPIC2008
亀田卓: 『スキージャンプ・ペア』があって、今日の話のメインの『東京オンリーピック』は、世の中からかなり期待されて、マスコミでめちゃくちゃ取り上げられました。

真島理一郎: 二番煎じになってしまうというのがあって、また新しい競技つくるのはずっと乗り気じゃなかったんです。

ただ、五輪の開会式のド派手な演出とかお祭り感が大好きで、あのお祭り感を出せる映像を作ってみたいなと思っていたんです。

真島理一郎: 今回、一緒に企画を始めた株式会社ファンワークスという会社社長の高山さんが、雑談の中で「いろいろなクリエーターさんを集めて、1人1競技みたいなこととか、どうなんです?」みたいな話をポロッとされたのです。ああ、それは面白いかなと思って。

僕が全部つくるんじゃなくて、個性あるいろいろなジャンルのクリエーターが参加して、それをパッケージするということで映像作家のお祭りみたいなことができないかなと。

手法は基本的に『スキージャンプ・ペア』と同じように架空の世界をつくり上げていくということで、僕は全体のオンリーピックという世界観をつくって、個々の競技で各監督さんの好きなように暴れてもらおう、という感じでした。

亀田卓: 僕のところに、高山さんから、ぜひ加わってほしいと話が来たのですが、ヒットする映画っていくつか特徴があって。まず「原作が売れている」というのは、大きな要因なんですね。そういう意味では、これは原作がない。でも、50万本売れているDVDの作者がやるのならいけるんじゃないかなと思いました。

もう1つ重要なのは「製作委員会にテレビ局が入っている」ということがヒットの条件として大きいのですね。ところが、メンバーにテレビ局が入っていない。でも、この企画はむしろ入ってない方がいいんじゃないかなと、そのとき思いました。話題性が有る作品だったので、色が付いていないほうが、各局が取り上げてくれるんじゃないかなと思ったんです。

実際やってみたら、特定のテレビ局がついていないことによって、ニュースでもワイドショーでもバラエティでも、全局が取り上げてくれました。

真島理一郎: それは本当によかったと思いますね。1つの文化というと大げさですが、流行、社会現象みたいなところにもっていければな、という思いがあったので。

亀田卓: 最初、僕のところにこの企画の話が来たとき、ネーミングが決まっていなかったんですよね。

真島理一郎: 僕の中でも一番の難題でしたね。どうしても五輪のパロディをやりたくて、考えているうちに、たまたま「オンリーピクチャーズ」→「オンリーピック」という、「唯一無二の映像作品集」みたいなことで、これはいけると。今回僕に神が降りた瞬間は、そのネーミングを思いついたときなんですよ。

亀田卓: ただ、そこで「アンブッシュ」という問題がありました。JOCさんが「アンブッシュ広告を防ぐ」という広告を出しているぐらいです。アンブッシュになってはいけないので、『オンリーピック』の企画はかなり気を使う必要がありました。

真島監督が『東京オンリーピック』というネーミングを考えてしまった、ということでいよいよ悩みが深まりました。最大限の配慮をしつつ、何とか公開までこぎつけましたが、この問題に一番気を使いましたね。

真島理一郎: 本当にありがたかったです。
(その3に続く、全8回)

※この原稿は、2008年9月30日にアカデミーヒルズで開催した「東京オンリーピックができるまで」を元に作成したものです。

該当講座

東京オンリーピックができるまで
真島理一郎 (映像作家/IDIOTS代表)
亀田卓 (デジタルハリウッド大学大学院教授 広告会社勤務/映画プロデューサー )

「only」+「pictures」=「onlypic」唯一無二のスポーツ映像。世界中を熱狂と興奮の渦に巻き込み、DVD販売累計50万枚を記録した大ヒット作「スキージャンプ・ペア」。その生みの親・真島理一郎待望の最新作「東京オンリーピック」。 本作では真島総監督のもと、国内外で活躍する個性派トップク....


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