記事・レポート
G8洞爺湖サミット「シェルパが語る首脳外交の舞台裏」
BIZセミナーその他
更新日 : 2008年10月23日
(木)
第6章 「シェルパは見た!」——各首脳の個性
河野雅治: 今回集まった首脳たちは、どういう人たちなのか、個性というか、生態学といいますか、ちょっと触れてみたいと思います。
今回は最長老が福田総理で71歳、昨日(2008年7月16日)72歳になられました。そして福田総理より2カ月若いイタリアのベルルスコーニ首相から始まって、一番若いのはメドベージェフ大統領、42歳です。彼のシェルパは35歳です。本当にかわいい青年でした。彼の前任者は、今は第一副首相になってしまいましたが、ロシアはやはり若い世代が台頭してきていますね。そういった非常に幅の広い、平均年齢56歳の首脳の集まりでありました。そんな中で新人が4人いて、ブッシュ大統領については最後のサミット、8年目のサミットでした。
私、シェルパから見て、『家政婦は見た!』ではないのですが、「シェルパは見た!」(笑)。シェルパの目から見るとですね、何といっても印象的なのは、強力なヨーロッパのオフェンスチームです。大変なオフェンスチームだったと、去年も思いましたが、今年はますます……。
先ずは何といってもドイツ代表のメルケル首相。女性だからどうということはないのですが、やはり一直線、徹底的に真正面から中央突破、こういう議論を展開する女性でした。先ほど私は「サミットというのは学校のクラスルームだ」と言いましたけれども、突破力のある女性が先生のクラスルームというのは、どんな雰囲気でしょうかね。おっしゃる通り従う生徒もいるかもしれませんが、激しく反発する生徒も出てくるのではないでしょうか。
去年(2007年)、そういうことが起こりました。ハイリゲンダムでメルケル首相はいきなりブッシュ大統領を指して批判したのです。「あなたはもっと譲らなければいけない」と。相手を徹底的に論破しようとしたのですね。それに圧倒されたブッシュ大統領は激しく抗弁するのですが、やはり議論の迫力においてはメルケル首相に勝る人はいません。昨年はほとんどクラスルームが崩壊直前になりましたけれども、そんな中でトニー・ブレア首相と安倍晋三総理が、うまくその間に入って、「まあ、そう言っても」と、まとめ役にまわりました。
メルケル首相は去年は議長でしたが、今年はビジターとして来て、激しくそれぞれの問題で主張を展開する、非常に迫力のある女性だったと思います。
今最強のヨーロッパのオフェンスチームといえば、それはサルコジ大統領なしには語れないと思います。彼の全身からみなぎる闘志が、議論に、にじみ出るわけです。サルコジ大統領は、その前のシラク大統領と違って、G8破壊論者です。「G8というのはもう時代遅れだ、G8はさらに発展して拡大しなければだめだ」ということを、どの議論でも最初か最後につけ加えるのです。そういう議論を徹底的に展開するのです。
そしてオフェンスチームの3番目はイギリスのゴードン・ブラウン首相です。首脳の個性というのは国際社会、国際政治によって出るものですが、今年、石油危機、食料危機、すべて最初に旗を振り出したのはゴードン・ブラウン首相です。ゴードンがある日、週末に思いついて、すぐさま福田総理にメッセージを発し、「福田総理、食料の問題、何とかしましょう」と。石油危機が起こったときもそうでした。すぐさまゴードン・ブラウン首相はサウジアラビアに連絡して、「産油国と消費国との会合を開いたらどうか」と。とにかく動きが早いのです。ブラウン首相の動きは非常に早いので、イギリスのシェルパは大変です。
それぞれを語ると切りがないのですが、ロシアのメドベージェフ大統領、彼は議論に非常にいい形で貢献をした指導者だったと思います。初出場ですから、みんながどういう人か分からない中で、議論に貢献しよう、建設的な意見を言おうということで、トニー・ブレアなきあと重要な役割を果たしたのは、実はこのメドベージェフ大統領ではないかと思いました。
来年(2009年)サミットを主催するイタリアのベルルスコーニ首相には、6月にローマを訪れた際、総理は初めて会いました。ベルルスコーニ首相は、実は過去に2回サミットの議長をやっているものですから、大変な余裕です。イタリアの人に言わせると、「ベルルスコーニというのは不思議なんだよ、年を追うごとに若くなっている。7年前に議長を務めたときの写真と比べてごらん、随分若返っているだろう?」と。そうなんです。確かに見ると、服装から髪型から見事で、一部の隙もない男でした。
ブッシュ大統領は今年が最後のサミット参加でした。一言で言うと、やはりアメリカ、ブッシュ大統領の影響力は、いろいろなところににじみ出ていたと思います。とにかく単語の力、アメリカ大統領の単語の力は大きいと思います。
7月7日に日米首脳会談がありました、そのとき総理がブッシュ大統領に、「サミットの成功のために、ぜひ協力してください」と言ったら、一言、「I will help you」。大統領が日本の総理に「I will help you」と、それは意味があるわけです。その一言をもって、非常に我々は心強く思いました。現にサミットの場では、さまざまな形でブッシュ大統領が議長国日本を支えてくれたと思います。
ブッシュ大統領の主張は非常に厳しいものがあります。自分が納得いかないときには、大声で「私は理解できません、その議論は」と言うわけです。この重みは相当なものだと思います。
福田総理が最後の場面で、「ブッシュ大統領、今年が最後ですね。いろいろこれまでのご協力ありがとうございました。みんなで拍手をしましょう」と拍手を送り、「最後にブッシュ大統領、一言どうですか」と言ったら、ブッシュ大統領は何と言ったでしょう?「Let's go for lunch」(笑)。非常に見事だと思いますね。そう言って議長を立てて支えたブッシュ大統領でした。
カナダのハーパー首相、欧州委員会のバローゾ委員長ほかいらっしゃいますけれど、またの機会に譲りたいと思います。
今回は最長老が福田総理で71歳、昨日(2008年7月16日)72歳になられました。そして福田総理より2カ月若いイタリアのベルルスコーニ首相から始まって、一番若いのはメドベージェフ大統領、42歳です。彼のシェルパは35歳です。本当にかわいい青年でした。彼の前任者は、今は第一副首相になってしまいましたが、ロシアはやはり若い世代が台頭してきていますね。そういった非常に幅の広い、平均年齢56歳の首脳の集まりでありました。そんな中で新人が4人いて、ブッシュ大統領については最後のサミット、8年目のサミットでした。
私、シェルパから見て、『家政婦は見た!』ではないのですが、「シェルパは見た!」(笑)。シェルパの目から見るとですね、何といっても印象的なのは、強力なヨーロッパのオフェンスチームです。大変なオフェンスチームだったと、去年も思いましたが、今年はますます……。
先ずは何といってもドイツ代表のメルケル首相。女性だからどうということはないのですが、やはり一直線、徹底的に真正面から中央突破、こういう議論を展開する女性でした。先ほど私は「サミットというのは学校のクラスルームだ」と言いましたけれども、突破力のある女性が先生のクラスルームというのは、どんな雰囲気でしょうかね。おっしゃる通り従う生徒もいるかもしれませんが、激しく反発する生徒も出てくるのではないでしょうか。
去年(2007年)、そういうことが起こりました。ハイリゲンダムでメルケル首相はいきなりブッシュ大統領を指して批判したのです。「あなたはもっと譲らなければいけない」と。相手を徹底的に論破しようとしたのですね。それに圧倒されたブッシュ大統領は激しく抗弁するのですが、やはり議論の迫力においてはメルケル首相に勝る人はいません。昨年はほとんどクラスルームが崩壊直前になりましたけれども、そんな中でトニー・ブレア首相と安倍晋三総理が、うまくその間に入って、「まあ、そう言っても」と、まとめ役にまわりました。
メルケル首相は去年は議長でしたが、今年はビジターとして来て、激しくそれぞれの問題で主張を展開する、非常に迫力のある女性だったと思います。
今最強のヨーロッパのオフェンスチームといえば、それはサルコジ大統領なしには語れないと思います。彼の全身からみなぎる闘志が、議論に、にじみ出るわけです。サルコジ大統領は、その前のシラク大統領と違って、G8破壊論者です。「G8というのはもう時代遅れだ、G8はさらに発展して拡大しなければだめだ」ということを、どの議論でも最初か最後につけ加えるのです。そういう議論を徹底的に展開するのです。
そしてオフェンスチームの3番目はイギリスのゴードン・ブラウン首相です。首脳の個性というのは国際社会、国際政治によって出るものですが、今年、石油危機、食料危機、すべて最初に旗を振り出したのはゴードン・ブラウン首相です。ゴードンがある日、週末に思いついて、すぐさま福田総理にメッセージを発し、「福田総理、食料の問題、何とかしましょう」と。石油危機が起こったときもそうでした。すぐさまゴードン・ブラウン首相はサウジアラビアに連絡して、「産油国と消費国との会合を開いたらどうか」と。とにかく動きが早いのです。ブラウン首相の動きは非常に早いので、イギリスのシェルパは大変です。
それぞれを語ると切りがないのですが、ロシアのメドベージェフ大統領、彼は議論に非常にいい形で貢献をした指導者だったと思います。初出場ですから、みんながどういう人か分からない中で、議論に貢献しよう、建設的な意見を言おうということで、トニー・ブレアなきあと重要な役割を果たしたのは、実はこのメドベージェフ大統領ではないかと思いました。
来年(2009年)サミットを主催するイタリアのベルルスコーニ首相には、6月にローマを訪れた際、総理は初めて会いました。ベルルスコーニ首相は、実は過去に2回サミットの議長をやっているものですから、大変な余裕です。イタリアの人に言わせると、「ベルルスコーニというのは不思議なんだよ、年を追うごとに若くなっている。7年前に議長を務めたときの写真と比べてごらん、随分若返っているだろう?」と。そうなんです。確かに見ると、服装から髪型から見事で、一部の隙もない男でした。
ブッシュ大統領は今年が最後のサミット参加でした。一言で言うと、やはりアメリカ、ブッシュ大統領の影響力は、いろいろなところににじみ出ていたと思います。とにかく単語の力、アメリカ大統領の単語の力は大きいと思います。
7月7日に日米首脳会談がありました、そのとき総理がブッシュ大統領に、「サミットの成功のために、ぜひ協力してください」と言ったら、一言、「I will help you」。大統領が日本の総理に「I will help you」と、それは意味があるわけです。その一言をもって、非常に我々は心強く思いました。現にサミットの場では、さまざまな形でブッシュ大統領が議長国日本を支えてくれたと思います。
ブッシュ大統領の主張は非常に厳しいものがあります。自分が納得いかないときには、大声で「私は理解できません、その議論は」と言うわけです。この重みは相当なものだと思います。
福田総理が最後の場面で、「ブッシュ大統領、今年が最後ですね。いろいろこれまでのご協力ありがとうございました。みんなで拍手をしましょう」と拍手を送り、「最後にブッシュ大統領、一言どうですか」と言ったら、ブッシュ大統領は何と言ったでしょう?「Let's go for lunch」(笑)。非常に見事だと思いますね。そう言って議長を立てて支えたブッシュ大統領でした。
カナダのハーパー首相、欧州委員会のバローゾ委員長ほかいらっしゃいますけれど、またの機会に譲りたいと思います。
G8洞爺湖サミット「シェルパが語る首脳外交の舞台裏」 インデックス
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第1章 首脳は孤独。サミットは、誰にも相談できない議論の場
2008年09月03日 (水)
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第2章 シェルパがいなければ、議論の中身は一切外に出ない
2008年09月09日 (火)
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第3章 各国の首脳が議論する激しい場面は、報道されない
2008年09月19日 (金)
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第4章 サミットは動物園に似ている?
2008年09月30日 (火)
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第5章 激動する世界。サミットの役割も年々変化している
2008年10月09日 (木)
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第6章 「シェルパは見た!」——各首脳の個性
2008年10月23日 (木)
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第7章 議長にとって一番大事なのは「自分の意見を言うこと」ではない
2008年11月03日 (月)
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第8章 温暖化ガス半減目標の、あの声明文はいかにしてつくられたのか
2008年11月13日 (木)
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第9章 今回のサミットは成功だったのか、失敗だったのか?
2008年11月27日 (木)
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