記事・レポート
G8洞爺湖サミット「シェルパが語る首脳外交の舞台裏」
BIZセミナーその他
更新日 : 2008年10月09日
(木)
第5章 激動する世界。サミットの役割も年々変化している
河野雅治: 今年2008年という年は、私もたまたまシェルパで8年に1回の議長をやりましたけれど、まあ大変な年だったと思います。昨年(2007年)のハイリゲンダム以来、気候変動の問題と、開発、アフリカの問題など、これが主要テーマだとみんなの認識の一致するところから作業を始めました。しかし、どうですか皆さん、過去6カ月の世の中の変わりようは。日を追うごとに、月を追うごとに新しい課題が次から次へと出てきます。
例えば、(2008年)5月になって、これは私どもは不明を恥じるのですが、食料価格の急騰という問題が起こってきました。食料価格がこれだけ上がってきて、一部では暴動が起こる、アフリカでは飢餓の状況が深刻になる、国の政権が危ないような状況になる。そんな中でサミットをしてどういうメッセージを出すのか、これは5月に急に出てきた問題です。
それから6月に入る直前でしたか、石油価格の高騰問題。これがまた世界で大きな話題になってきました。石油価格の高騰に対して、どのようにサミットとしてメッセージを出すのか。1月から4月まで3回シェルパの会合をやりましたけれど、そこでは一言も話題になっていなかった話なのです。しかし、その後でそういう問題が出てきて、さあ大変だ、これをどうにかしなければいけない、となりました。
世の中も動いておりました。6月3日にはローマで食料危機に関する緊急サミットが開かれ、その機会に福田総理が、5月の連休に行けなかったヨーロッパ訪問を果たし、サルコジ大統領やベルルスコーニ首相などの首脳と会って人間関係をつくり上げました。そうやって世の中は動いています。また、石油価格の 危機では、6月22日にサウジアラビアのジッダで石油産消国会合が開かれて、石油価格をどうするか議論がなされました。こういった動きもある。
こうして世の中が急流のように流れていく中で、サミットとして何を目指し、何を生み出して、何を公にするかが問われました。今回34回目のサミット でしたが、過去、なかなかこういうことはなかったんだろうと思います。そういう意味で非常にチャレンジングなサミットだったと思います。
そんな中で、シェルパの仲間たちのプレッシャーというのは相当なものがありました。まず「気候変動」。これは昨年のハイリゲンダムからメルケル首相 が何度も私に言ったことですが、一言でいうと「前進しろ」です。「プログレスがなければ今年のサミットは失敗ですよ。去年は私がやりました、今年はあなたの番ですよ。前進をさせてください」と。ただ一言で「前進」といっても、放っておいたら後退するようなイシューですから、大変難しい問題でした。それについては、後ほど触れます。
それから「開発」の問題。2015年までに達成すべき「ミレニアム開発目標」というのがあります。2000年に(国連ミレニアム・サミットで)決めたゴールですけれど、ちょうど2008年が中間年ということで、これからどうするのかということを世界の人々から、G8の首脳は問われておりました。これは首脳にとっては非常に重い課題です。特にヨーロッパの首脳にとっては。
世界中で、いまや重要なアクターとなっているのがNGOです。世界のNGOが注目して洞爺湖に集結し、どういう成果を出すのか見ているわけです。そこには、U2のボノやボブ・ゲルドフとか、セレブリティ、世界の顔であるようなロックスターも集まって注目しているのです。
そういった中ですから、首脳にとってサミットというのは非常に危険がいっぱいな場所なのです。ここで気候変動について前進を果たせなかった、開発の 問題で成果が出なかった、強いメッセージが出せなかったといったら、どうなるでしょう。首脳たちは、このサミットの結果を受けて本国に帰ったらどういうことになるのか、みんな百も承知です。失敗、即政権の危機という中で首脳が集まっているわけです。そういったサミットでした。
前例のないサミットということで言うならば、今年はアフリカの首脳7人、中国ほか、いわゆるアウト・リーチ対話国の首脳8人、計22人の国家の首 脳、そして国際機関の長が集まりました。空前絶後かどうかは分かりませんが、これだけの規模のサミットを企画立案して、先週のサミットに至ったということ です。
サミットは、性格が歳歳年年変わってきていると思います。石油危機があってエネルギー問題への対応から70年代にサミットが始まり、80年代は冷戦 構造下、非常に東西対立の激しい中で、ある意味で秩序のあったサミットだと思います。冷戦が終わって90年代は、コソボの問題やボスニア・ヘルツェゴビナ 紛争など、次から次へ毎年のごとく冷戦の残滓のような問題が起こり、それに振り回されるサミットでした。
そして21世紀のサミット。これは一言で言って「グローバルな課題」に対応するサミットになってきたと思います。やはりアラームクロックは2001 年9月11日「September 11」だったと思います。それ以後、テロとの戦い、グローバルなイシューにどう対応するのか問われるようになったのですが、G8の首脳だけが物事を仕切れた時代がだんだん変わってきています。従ってG8以外の主要国も呼んでG8と併行して対話を進めるということがサミットの新しい姿になってきた。そして2008年の洞爺湖サミットを迎えたということだったと思います。
例えば、(2008年)5月になって、これは私どもは不明を恥じるのですが、食料価格の急騰という問題が起こってきました。食料価格がこれだけ上がってきて、一部では暴動が起こる、アフリカでは飢餓の状況が深刻になる、国の政権が危ないような状況になる。そんな中でサミットをしてどういうメッセージを出すのか、これは5月に急に出てきた問題です。
それから6月に入る直前でしたか、石油価格の高騰問題。これがまた世界で大きな話題になってきました。石油価格の高騰に対して、どのようにサミットとしてメッセージを出すのか。1月から4月まで3回シェルパの会合をやりましたけれど、そこでは一言も話題になっていなかった話なのです。しかし、その後でそういう問題が出てきて、さあ大変だ、これをどうにかしなければいけない、となりました。
世の中も動いておりました。6月3日にはローマで食料危機に関する緊急サミットが開かれ、その機会に福田総理が、5月の連休に行けなかったヨーロッパ訪問を果たし、サルコジ大統領やベルルスコーニ首相などの首脳と会って人間関係をつくり上げました。そうやって世の中は動いています。また、石油価格の 危機では、6月22日にサウジアラビアのジッダで石油産消国会合が開かれて、石油価格をどうするか議論がなされました。こういった動きもある。
こうして世の中が急流のように流れていく中で、サミットとして何を目指し、何を生み出して、何を公にするかが問われました。今回34回目のサミット でしたが、過去、なかなかこういうことはなかったんだろうと思います。そういう意味で非常にチャレンジングなサミットだったと思います。
そんな中で、シェルパの仲間たちのプレッシャーというのは相当なものがありました。まず「気候変動」。これは昨年のハイリゲンダムからメルケル首相 が何度も私に言ったことですが、一言でいうと「前進しろ」です。「プログレスがなければ今年のサミットは失敗ですよ。去年は私がやりました、今年はあなたの番ですよ。前進をさせてください」と。ただ一言で「前進」といっても、放っておいたら後退するようなイシューですから、大変難しい問題でした。それについては、後ほど触れます。
それから「開発」の問題。2015年までに達成すべき「ミレニアム開発目標」というのがあります。2000年に(国連ミレニアム・サミットで)決めたゴールですけれど、ちょうど2008年が中間年ということで、これからどうするのかということを世界の人々から、G8の首脳は問われておりました。これは首脳にとっては非常に重い課題です。特にヨーロッパの首脳にとっては。
世界中で、いまや重要なアクターとなっているのがNGOです。世界のNGOが注目して洞爺湖に集結し、どういう成果を出すのか見ているわけです。そこには、U2のボノやボブ・ゲルドフとか、セレブリティ、世界の顔であるようなロックスターも集まって注目しているのです。
そういった中ですから、首脳にとってサミットというのは非常に危険がいっぱいな場所なのです。ここで気候変動について前進を果たせなかった、開発の 問題で成果が出なかった、強いメッセージが出せなかったといったら、どうなるでしょう。首脳たちは、このサミットの結果を受けて本国に帰ったらどういうことになるのか、みんな百も承知です。失敗、即政権の危機という中で首脳が集まっているわけです。そういったサミットでした。
前例のないサミットということで言うならば、今年はアフリカの首脳7人、中国ほか、いわゆるアウト・リーチ対話国の首脳8人、計22人の国家の首 脳、そして国際機関の長が集まりました。空前絶後かどうかは分かりませんが、これだけの規模のサミットを企画立案して、先週のサミットに至ったということ です。
サミットは、性格が歳歳年年変わってきていると思います。石油危機があってエネルギー問題への対応から70年代にサミットが始まり、80年代は冷戦 構造下、非常に東西対立の激しい中で、ある意味で秩序のあったサミットだと思います。冷戦が終わって90年代は、コソボの問題やボスニア・ヘルツェゴビナ 紛争など、次から次へ毎年のごとく冷戦の残滓のような問題が起こり、それに振り回されるサミットでした。
そして21世紀のサミット。これは一言で言って「グローバルな課題」に対応するサミットになってきたと思います。やはりアラームクロックは2001 年9月11日「September 11」だったと思います。それ以後、テロとの戦い、グローバルなイシューにどう対応するのか問われるようになったのですが、G8の首脳だけが物事を仕切れた時代がだんだん変わってきています。従ってG8以外の主要国も呼んでG8と併行して対話を進めるということがサミットの新しい姿になってきた。そして2008年の洞爺湖サミットを迎えたということだったと思います。
G8洞爺湖サミット「シェルパが語る首脳外交の舞台裏」 インデックス
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第1章 首脳は孤独。サミットは、誰にも相談できない議論の場
2008年09月03日 (水)
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第2章 シェルパがいなければ、議論の中身は一切外に出ない
2008年09月09日 (火)
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第3章 各国の首脳が議論する激しい場面は、報道されない
2008年09月19日 (金)
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第4章 サミットは動物園に似ている?
2008年09月30日 (火)
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第5章 激動する世界。サミットの役割も年々変化している
2008年10月09日 (木)
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第6章 「シェルパは見た!」——各首脳の個性
2008年10月23日 (木)
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第7章 議長にとって一番大事なのは「自分の意見を言うこと」ではない
2008年11月03日 (月)
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第8章 温暖化ガス半減目標の、あの声明文はいかにしてつくられたのか
2008年11月13日 (木)
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第9章 今回のサミットは成功だったのか、失敗だったのか?
2008年11月27日 (木)
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