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「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年09月12日 (金)

第9章 だめなのは若者ではなく、若者の夢を実現できない社会構造

ジェラルド・カーティスさん


ジェラルド・カーティス: 私は日本語が好きで、大学3年分の日本語の勉強を1年間でやりました。そのときは、朝から晩まで日本語の勉強をしました。1日4時間、学校で日本語の勉強をして、家に帰ったら宿題でまた4、5時間。先ほど「もともとは音楽家になろうと思ったけれど、自分に十分な才能がないと思って諦めた」と言いましたが、日本語の勉強を始めたときに、私には音楽家になる才能が十分足りないというより、音楽家になるパッションが十分なかったということが分かりました。

なぜかというと、朝からずっと日本語を勉強しても、寝るまで漢字の練習をしても、疲れないんです。面白くてしょうがない。音楽よりも、日本語を覚えることにパッションがあったのです。

ピアノはずっと何となくはやってきたのですが、5、6年ぐらい前から、また本格的に始めました。今度はプロになるという緊張感はなくて、どこまでジャズミュージシャンとしてできるか、自分に対する挑戦として始めました。今東京の自宅の近くにスタジオがあって、ピアノを借りられるので、そこで1時間とか2時間、週に何回かやっています。

でもこの2週間、なかなかスタジオがとれないんです。なぜかというと外国人で今度日本でコンサートを開く人が、毎日午後の1時から7時まで、練習をしているのです。そのぐらいパッション、努力がないと一流にはなれないのです。

だから若い人たちは、とにかく自分にパッションのあることを探すといいと思います。パッションのある仕事なら、努力をすればある程度になれるのです。エジソンが「天才とは1%のひらめきと99%の努力、汗である」と言ったように。

福田首相は官僚の書いた原稿を棒読みしないで、前の晩に3、4時間、練習をして、次の日にNHKで国民に語る、国民にもっと丁寧にいろいろなことを説明して説得をするという努力をすれば、支持率は上がります。

オバマやヒラリーを見ていると、すごい努力をしています。彼等の演説は自然に見えますが、とんでもない。オバマが演説をするためにどんなに練習をしているのか。ヒラリーとオバマはすでに18回ディベートをしていますが、ディベートの1週間前から、毎日スタッフと練習するのです。スタッフは意地悪い質問をします。そうすることで、どんな質問が出ても驚かない、自然に答えられるようにするのです。これが今のアメリカのトップの政治家になる必要条件なのです。だから努力をする、大事なことです。

今、ヒラリーオバマも、夜3、4時間しか寝ていません。もう半年間もずっとそうなんです。それができるのは、やはり大統領になるパッションがあるからです。これが大事なのです。パッションがあれば、その仕事ですごくいいところまでいける。だから若い人はパッションを持つ、社会はパッションを持っている人にチャンスを与える——これが今の日本にとって、ものすごく重要な問題です。

どんな人でも、若い人は何かしら夢を持っていると思います。「若い人はだめだ」ということではなくて、それぞれが夢を持っているのに、「日本では私の夢は実現できない」となるのがだめなのです。そうなると、頭脳流出するか、フリーターやニートになるか、ドロップアウトするかです。いずれにしても問題は社会にあるのであって、若者にあるのではありません。