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「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年08月14日 (木)

第6章 日本語には音楽のようなリズムがある

ジェラルド・カーティスさん


ジェラルド・カーティス: 国際交流基金のおかげで私は日本語の勉強をすることができたのですが、実は、日本の勉強をしたらいいか、中国の勉強をしたらいいのかわからなかったので、もう1人のゼミの先生、中国の専門家に相談しました。

すると「今のアメリカにはおろかな面があって、とにかく中国を認めていない。国交が正常化していない。だから中国の勉強をしても遠くから見ることしかできない。しかし日本を勉強すれば、日本に行って日本人と直接会うことができる。あなたのような性格の人はフィールドリサーチをした方がいいので、日本のことを勉強した方がいいのではないか」と勧めてくれたのです。

その夏から日本というか、日本語を勉強し始めました。私が最初に魅力を感じたのは、日本の政治ではなくて日本語でした。私はフランス語とスペイン語、大学ではロシア語も勉強したのですが、日本語は非常に魅力的でした。今もそうです。まず美しい言葉なのです。私はもともと音楽家ですから、音には敏感だと思うのですが、日本語という言葉の音、これはとてもすばらしい。

私は自分では、それほど日本語が上手だとは思っていないのですが、書くことは好きです。日本語には音楽のようなリズムがあるように思います。ですから、日本語で書いていて、リズムがちょっとおかしいと思うと、書き直します。そうするとスムーズになるのです。

今でも私はいつも電子辞書を持って、地下鉄などに乗っているときも言葉を勉強します。日本語は私にとっては外国語で、native languageではないので、どんなに勉強しても足りない。本を書いて分かったのは自分の表現の限界です。すごくフラストレーションを感じました。言いたいことは言えるのですが、英語だったらいろいろな言い方ができるのだけれども、皆さんにように日本語を母国語とする方と比べれば、私が身につけている日本語は非常に限られています。

日本語は漢字もひらがなもカタカナも混合して使います。中国語だったら漢字は1つの発音しかないのに、日本語だと同じ字でもたくさんの発音があるので、今でも苦労しています。ただ、私だけでなくて、日本人も結構読めない、意味は分かっても正しく読めない言葉がたくさんあるようなので、ちょっとホッとしています(笑)。