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気になる本たち

好きな本がみつかる、ブックトークより

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2014年09月24日 (水)

第2章 力強い、美しい國ニッポン(1)



 私の選書ツールは「ウィークリー出版情報」です。週刊の国内書新刊情報誌で、一週間分の新刊書が日本十進分類法で類別されており、一点々々の主題を体系化に位置づけることができます。毎週1,500点ほどのデータを追っていくと、その時々のイッシューやトピックスが鮮明に浮かび上がってきます。

 日本および日本人論の本はどの時代にも出されますが、2012年の『古事記』成立1300年や2013年の伊勢神宮と出雲大社の遷宮・遷座などの式年祝いでこのところ関連本がたくさん出版されました。

 『古事記』については<気になる本たち 2012(ブックトークNO.27)>で取り上げたのでここでは個別に取り上げませんが、そのブームはまだ続いています。遷宮・遷座式年については‘るるぶ本’などで盛んに取り上げられていますが、写真集『伊勢神宮—現代に生きる神話〈新装版〉』(宮澤正明/講談社)は、先が見通せない心の安穏や平和な安らぎを人智を超えた存在、つまり神話の舞台となってきた生な自然をかいま見せてくれます。また医師から神職に転向し、春日大社宮司になった人物が著した『神道と日本人〈新装版〉』(葉室頼昭/春秋社)などは、大震災と原発事故や長引く景気後退などで岐路に立つ日本人が、この時代にいかに考え、いかに生きるべきかを神道を踏まえて、素朴に語っています。
 
 ところで〈力強い‘ニッポン’〉は、大化の改新後およそ半世紀の間に構築されました。その時代のリーダーは、改革者天智天皇の娘で、一般には小倉百人一首の「春すぎて夏來にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」の詠み人としてよく知られている女帝持統天皇です。女帝は時代の巡り合わせか、政治的に強大な力量を発揮し、国の成立を指導しました。そのことは他の多くの歴史書に記されていますが、昨年の刊行物では、『伊勢神宮と三種の神器』(新谷尚紀/講談社選書メチエ)が詳しく書いています。また歴史小説『日輪の賦』(澤田瞳子/幻冬舎)もその様子が語られています。唐や新羅の外圧と有力豪族たちの内圧を制圧・克服し、律令国家を築き上げるまでの女帝の苦悩と決断の物語は、虚構とは知りながらも、読者を魅了します。


 昔話が日本人の心を育んできたことについては、これまでも多く語られたところですが、『日本人の心を解く』(河合隼雄・河合俊雄/岩波現代全書)でも、古き物語が美しい‘ニッポン’人の心の形成にエンジンとなったと唱えられています。その古き物語の一つに『竹取物語』、あるいは『かぐや姫』がありますが、『かがやく月の宮』(宇月原晴明/新潮社)はそことを強く意識しながら、物語を歴史ファンタジーに昇華させています。作家は古典や歴史的な事実を劇的に窯変させる名手ですが、この本でもその力量が十分に発揮されています。

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