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テクノロジーとアートの融合が拓くクリエーションの未来

真鍋大度×徳井直生が語るメディアアートとスタートアップ

更新日 : 2014年09月05日 (金)

第4章 人間とコンピュータの新たなインタラクション


 
出発点は人工知能

徳井直生: 大度君と同様に、プログラミングをベースにしながらiPhoneアプリやメディアアートを制作しています。学生時代は人工知能の研究に従事していました。従事と言いつつ、実際はコンピュータに人間の思考を代替させることに興味はなく、コンピュータを使って人間の創造性を高めることができないか、と考えていました。そのため、当時は研究成果を活用しながら、新たな音楽用ソフトウェアなどを開発していました。

卒業後はしばらくメーカーなどの研究所に勤め、2009年に2人のクリエイターとともにQosmo(コズモ)を立ち上げました。創業メンバーの澤井妙治は、音を使ったインスタレーションを制作するサウンドデザイナー、もう1人のアレキサンダー・リーダーはプログラマー兼デザイナー、僕はミュージシャン兼デザイナー兼プログラマーという、少々変わった背景をもつメンバーで構成されています。ライゾマティクスと同様に、まずは自分たちの興味にもとづいて作品をつくり、コミッションへと広げ、そこで生み出した資金をもとに新たな創作活動を行う、というサイクルを重ねてきました。

先ほど、「mass/small(amount)」という話がありましたが、僕はどちらかというと興味の対象がよりmassに向いています。メディアアートとして表現したアイデアを、どのように世の中へ浸透させていこうかと考えながら、常に活動しています。
偶発的に紡がれる音楽

徳井直生: 最初に、僕が学生時代に初めて制作した「SONASPHERE」(ソナスフィア)という音楽用ソフトウェアをご紹介します。
http://www.youtube.com/watch?v=-SHHPFipk0A

様々な音のパラメーターを3D空間の座標と連動させ、それらが自律しながら反応し合うことで、画面上に複雑な動きやつながりが生まれ、最終的に面白い音楽をつくり出すことができます。偶発的に紡ぎ出される音楽がクリエイターの感性を刺激し、新たな創作を誘発する。そのような、人間とコンピュータの新しいインタラクションをイメージして作成したソフトウェアです。

SONASPHEREを制作していた2002年頃は、コンピュータグラフィックスに活用できるオープンソースのツールがまったくなく、プログラムはすべてイチから書かなければなりませんでした。そのため、完成までに2年ほどかかりました。現在であれば、2カ月もかからないと思います。

この制作を終えた頃から、創作の方向性は少しずつmassに向かうようになり、ネットワーク上のコミュニティを活用したインスタレーションなどを制作していました。そして2008年、僕の運命を決定づける商品が登場しました。iPhone 3Gです。初めて手にしたとき、僕は従来の枠を超えるような新しい表現の可能性を感じました。

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SWITCH presents メディアアートとスタートアップ

音楽、アート、映像といったエンタテインメントの世界を、さまざまな分野のテクノロジーを導入して変化させるディレクションで注目されるRhizomatiks真鍋大度とメディアアートを軸に米シリコンバレーにあるシードアクセラレーター500 Startupsでアプリの開発を行うなどスタートアップ業界にも進出するQosmo徳井直生。
2人の対話から、近未来へのネクストステップが見えてくるはず。