記事・レポート

テクノロジーとアートの融合が拓くクリエーションの未来

真鍋大度×徳井直生が語るメディアアートとスタートアップ

更新日 : 2014年08月27日 (水)

第1章 インタラクションとインターフェイスデザイン

最新テクノロジーとプログラミング技術を駆使し、ライブ演出などのエンターテインメントから、近未来を思わせる実験的なプロジェクトまで、多彩なクリエーションを展開するメディアアーティスト、真鍋大度氏。真鍋氏が六本木アートカレッジの対談者として選んだのは、米国シリコンバレーのシードアクセラレーター〈500 Startups〉で新しいアプリ開発に挑む、エンジニア・起業家の徳井直生氏。人々と驚かせる斬新な発想と肩書きにとらわれない活動により、メディアアートの先端を走る真鍋氏と徳井氏のトークから、クリエーションの未来を感じてみてはいかがでしょうか?

スピーカー:真鍋大度(メディア・アーティスト)
モデレーター:徳井直生(エンジニア/起業家)

真鍋大度氏(メディア・アーティスト) と徳井直生氏(エンジニア/起業家)
写真左:真鍋大度(メディア・アーティスト) 写真右:徳井直生(エンジニア/起業家)

 
新たな表現、インタラクションを創造する

真鍋大度: 僕はメディアアーティスト、サウンドデザイナー、プログラマー、DJ、VJと様々な肩書きがありますが、主にプログラミングを活用したメディアアートを制作しています。2006年にライゾマティクス(Rhizomatiks)という会社を立ち上げ、同時に、新たなアイデアの実験場としてアンカーズ・ラボ(4nchor5 la6)も立ち上げています。

活動の1つのテーマとなるのが、インタラクションとインターフェイスデザインです。たとえば、メーカーと協働しながら“未来のテレビ”のプロトタイプをつくる、あるいはアーティストのために新しい楽器となり得るデバイスをつくる。人間の体・技術・映像・音楽などを融合しながら、新たな表現やインタラクションの形を日々模索しています。


チームやコラボレーションでつくる楽しさ

真鍋大度: 次に活動における力点や大切にしていることをご説明します。

useful/beautiful/interesting
僕は“お役立ち系”のデザインにはあまり興味はなく、映像的な美しさも第一義とはなっていません。常に自分が「面白い!」と思うアイデアをトライ&エラーで形にし、誰も見たことのないようなユニークな作品をつくり出したいと考えています。

think/make/share
たとえば、クリエイティブディレクターやプランナーは、自ら手を動かすことは少なく、企画を考えるなどthinkを担当します。makeはプログラマーやデザイナーなど、実際に手を動かす人。shareには、自分のつくったものを公開するだけでなく、新たなデザインの伝道師として活動することも含まれると思います。僕は、こうした役割をすべて1人でできることを理想としています。そのため、ほとんどのプロジェクトは企画、制作、最後の発表まですべてに携わりながら進めています。

mass/small(amount)
現在は、アーティストや企業などに向けて作品をつくることが多く、不特定多数の人に向けてものをつくる活動はあまり行っていません。そのあたりは今後の課題だと感じています。

コミュニティに参加、貢献する。
作品制作にあたっては、様々なコミュニティからアップされているオープンツールを活用しているため、できる限りお世話になっているコミュニティに恩返しをしたいと考えています。たとえば、僕が頻繁に使うopenFrameworks(※編注)などの使い方を紹介するワークショップや、海外から来たプログラマーと一緒にイベントを開催するなど、微力ながら普及に努めています。

DIWO(Do It With Others)
DIY(Do It Yourself)のように1人でつくることも面白いと思いますが、僕自身は多様な個性が集うチームでものをつくることに楽しさや喜びを見いだしています。プロジェクトに合わせ、都度必要な人材を集めてコラボレーションしていると、次々と思いがけない発想やブレークスルーが生まれます。そのため、1人で完結できそうなプロジェクトでも、あえて色々な人に声をかけて一緒に制作しています。


※編注
openFrameworks
汎用的なプログラミング言語C++(シープラスプラス)で組まれたフレームワークにより、創造的なコーディングを支援するオープンソースのツールキット。2D/3Dグラフィックデザイン、動画、音楽など幅広い分野のプログラミングを簡便に行うことができ、メディアアートやインタラクションデザインの現場で広く活用されている。

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SWITCH presents メディアアートとスタートアップ

音楽、アート、映像といったエンタテインメントの世界を、さまざまな分野のテクノロジーを導入して変化させるディレクションで注目されるRhizomatiks真鍋大度とメディアアートを軸に米シリコンバレーにあるシードアクセラレーター500 Startupsでアプリの開発を行うなどスタートアップ業界にも進出するQosmo徳井直生。
2人の対話から、近未来へのネクストステップが見えてくるはず。