石井裕:理念駆動~タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ
MIT Media Lab CREATIVE TALKより
時代を超えるビジョンが、独創未来を創る
第11章 未踏峰連山を目指す君に3つのフォースを
石井三力〜出杭力・道程力・造山力
石井裕: NHKの『プロフェッショナル』に出演した際、スタジオで延々10時間ほど、茂木健一郎氏と議論していました。そのなかで「研究とは何か?」という質問を受けました。その答えをツイートしました。
@ishii_mit 100mトラックを人より速く走る事は真の競創ではない。誰も分け入った事の無い原野を一人切り開き、まだ生まれていない道を一人全力疾走すること、それが競創だ。そこには観客も審判もストップウォッチも存在しない。
— Hiroshi Ishii 石井裕 (@ishii_mit) 2010, 12月 1
これをツイートしたときは、とても満足しました。しかし、ある日ショックを受けました。高村光太郎の『道程』にです。「私の前に道はない/私の後ろに道はできる」。私よりも少ない文字数で完璧に言い切っています。やはり、詩人は偉大です(笑)。本当の競争とは、新しい道を切り開くものでなければいけない。その孤独に耐える覚悟、信念がなければならない。私は「道程力」と名づけました。
私がMITメディアラボからヘッドハントされたのは、アトランタで行われた会議で「クリアボード」のプレゼンをしたときでした。直後の休憩時間に、アラン・ケイとニコラス・ネグロポンテ(※編注)から「MITに来い」と言われました。私は休憩が終わるまで待ってくれと言い、10分後にイエスと答えました。その後MITに入り、どれほど自分の判断が甘かったのかを痛感しました。その気持ちを記したのが「頂上」というツイートです。
【造山力】僕がMITを選んだ理由、それは頂が雲に隠れて見えない高い山だったから、そして頂へと続く道がなかったから。…しかしそれが幻想だったことを思い知る。登頂すべき山なぞ初めから存在していなかった事を。その山を零から創りあげ5年以内に世界初登頂すること、それが生き残りの条件。
— Hiroshi Ishii 石井裕 (@ishii_mit) 2012, 11月 28
ここには、18年間の私の思いが集約されています。これを3文字でまとめたのが「造山力」です。覚えられなくても大丈夫です。先にご紹介した「出杭力」「道程力」と合わせて、「未踏峰連山を目指す君に3つのフォースを」と題してツイートしています。ちなみに、こちらは「石井三力」と呼んでいます。
「出杭力」=打たれても打たれても、突出し続ける力。
「道程力」=原野を切り開き、まだ生まれていない道を独り全力疾走する力。
「造山力」=誰もまだ見たことのない山を、海抜ゼロメートルから自らの手で造り上げ、そして初登頂する力。
未踏峰連山を目指す君に3つのフォースを… ①「出杭力」(でるくい力)= 打たれても打たれても、突出し続ける力、②「道程力」=原野を切り開き、まだ生まれていない道を独り全力疾走する力、③「造山力」=誰もまだ見た事のない山を、海抜零メートルから自らの手で造り上げ、そして初登頂する力。
— Hiroshi Ishii 石井裕 (@ishii_mit) 2011, 5月 16
(※編注)
アラン・ケイ
「パソコンの父」とも呼ばれる、米国のコンピュータ科学者。
ニコラス・ネグロポンテ
コンピュータ科学者。MITメディアラボの創設者、初代所長。
石井裕:理念駆動~タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ
MIT Media Lab CREATIVE TALKより インデックス
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第1章 MITメディアラボのプリンシプル
2014年01月08日 (水)
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第2章 本質は情報生態系のなかにある
2014年01月09日 (木)
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第3章 タンジブル・ビットの原点
2014年01月10日 (金)
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第4章 情報を“気配”として表現する
2014年01月14日 (火)
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第5章 インスパイアの連鎖反応を起こす
2014年01月16日 (木)
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第6章 タンジブル・ビットからラディカル・アトムズへ
2014年01月17日 (金)
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第7章 18年かけてたどり着いたビジョン
2014年01月20日 (月)
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第8章 新しい未来をつくる、3つのパッション
2014年01月21日 (火)
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第9章 MITメディアラボは深いアイデアやビジョンを作り出す場
2014年01月23日 (木)
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第10章 自分を信じて、突き抜ける
2014年01月24日 (金)
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第11章 未踏峰連山を目指す君に3つのフォースを
2014年01月27日 (月)
-
第12章 イノベーションのエネルギー
2014年01月28日 (火)
該当講座
理念駆動:タンジブル・ビッツからラディカル・アトムズへ
Vision-Driven: From Tangible Bits Towards Radical Atoms
林千晶 (株式会社ロフトワーク 代表取締役/MITメディアラボ所長補佐)
石井 裕(MITメディアラボ副所長)
林 千晶(㈱ロフトワーク代表取締役/MITメディアラボ所長補佐)
MITメディアラボとアカデミーヒルズがコラボレーションしてお届けする"CREATIVE TALK" シリーズ第3回は、副所長の石井氏にお越しいただきます。メディア・アート、インタラクション・デザイン、そしてサイエンス・コミュニティーにおいて、石井氏らが発表してきた多様なプロジェクト例を紹介しながら、「タンジブル・ビッツ」から「ラディカル・アトムズ」へと至るビジョン駆動研究の発展の軌跡を描写します。
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