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井上慎一CEOが語る日本初・本格的LCC「ピーチ」の戦略

アジアの空を、もっと近く、面白く

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年11月05日 (火)

第8章 イノベーションを起こすための土壌作り


 
「YORIAI」で独創性を育む

井上慎一: 当社では、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを大切にしています。オフィスのパーティションなどは一切置かず、業務特性に応じてオフィス内のレイアウトを変更し、運航に関わる部署以外、社員の座席はフリーアサインとしました。社内に内線電話もありません。用事があれば、歩いていく。いつでも気軽にコミュニケーションできるようにすることで、日常的なナレッジの蓄積と検索・活用のサイクルを生み出すことができる。イノベーションの土壌作りに磨きをかけています。

また、私と社員の対話手段には、リアルとバーチャル、双方を組み合わせています。しかめ面の会議では、人を楽しませるような画期的なアイデアは生まれないと考えているからです。リアルの場では「YORIAI」があり、サービスや業務などについて毎回テーマを決めてブレインストーミングを行います。もう1つは「Peach pub」。業務時間終了後、1人500円ずつ出し合い、飲み物や軽食をとりながら、部署の枠を越えて気軽に語り合う場です。

一方、バーチャルの場では、社内イントラを使った「大喜利」があります。これは社内の提案制度で、優れた提案には画面上で座布団を贈ることができます。「P1 Grand prix」は、社員の実践活動を表彰する制度です。経営理念に沿った5つの部門賞があり、特に優れた実践には最優秀賞を贈ります。

ピーチ人になれ

井上慎一: 米倉先生は「イノベーションは継続的に行わなければダメだ」と言われました。この教えを徹底するため、専任のイノベーション部門を創設。社内の仕組みやルール、オフィス環境、働き方など多岐にわたったソリューションを実践しています。

もう1つ重視しているのは、パッションです。日頃から私は、すべての社員に対して「ピーチ人になれ」と声を掛けています。ピーチ人とは「イノベーションによる新たな価値創造に対して、無上の喜びを感じ、そのためにはいかなる困難にもポジティブに対応していける人」の意です。

アジアで、そして世界でナンバーワンのLCCになるためには、コスト競争力の高い国のLCCに打ち勝たなければなりません。我々が日本という高コストな環境を拠点とすることを考えれば、他国の競合他社以上のイノベーションを継続的かつスピーディに行わなくては、ナンバーワンになることはできない。これが私の基本的な認識です。

そして、イノベーションには、外部のパートナーからの刺激も必要です。外部から入る異質の価値観や発想が我々のパッションに刺激を与え、継続的なイノベーションを促進させる。自らの絶え間ない変革と外部からの刺激という両輪により、ピーチは常に新鮮かつ独創的な発想を持った会社として歩み続けることができるのです。


該当講座

アジアの空を、もっと近く、面白く

~日本初・本格的LCC Peach の戦略~

アジアの空を、もっと近く、面白く
井上慎一 (Peach Aviation 株式会社 代表取締役CEO)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

井上慎一(Peach Aviation㈱代表取締役CEO)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
日本初の本格的LCC(Low Cost Carrier)として、2012年3月就航したピーチ。これまでの航空業界と異なるやり方で、安定的な低コストを実現させ、かつ可愛らしく、気軽に利用できるブランドイメージで、順調に顧客を広げています。人々のライフスタイルを変えるイノベーションの本質と、今後のアジアでの事業展開・戦略に迫ります。


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