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井上慎一CEOが語る日本初・本格的LCC「ピーチ」の戦略

アジアの空を、もっと近く、面白く

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年10月25日 (金)

第3章 コンセプトは“空飛ぶ電車”


 
会社設立から1年で就航を実現

井上慎一: 会社を設立するまでに3年かかりましたが、会社設立から約1年後の2012年3月1日に記念すべき第1便が就航しました。これは当時最短でした。通常は、法的な手続きや様々な審査などの関係で、1年半以上はかかると言われていたからです。これだけのスピードで就航できたのは、3年分のインテリジェンスの蓄積があったからこそ。雌伏の時は、決して無駄ではなかったのです。

2012年3月1日はピーチにとり、大きなチャレンジの始まりの日でした。初日は福岡便、札幌便の2路線7便、往復にして14便でスタートしました。以降は順調に路線を増やし、現在は札幌、福岡、長崎、鹿児島、沖縄、仙台、今年6月には石垣島、9月には那覇−新石垣便のご提供も開始します。国際線では、ソウル、香港、台北への路線があり、9月には釜山にも飛びます。

就航路線は、拠点とする関西国際空港(関空)から片道4時間の範囲としています。これは、少々間隔の狭いLCCの座席について、社員と一緒にテストを行い、どの程度の時間であれば不愉快に感じないのか、その調査結果から導き出した基準です。関空から4時間の範囲と言いますと、香港が限度となります。

就航から1年半が経ち、ピーチは提供座席数ベースで国内4位にランクしています。全日空、日本航空、スカイマーク、そしてピーチの順です。こうした事業展開の早さも、従来にはなかったスピードと言えるでしょう。

“空飛ぶ電車”ならではのアイデア

井上慎一: 私たちのサービスモデルを端的に表すコンセプトが“空飛ぶ電車”です。

飛行機ではなく電車ですから、チケットは基本として、駅の券売機ならぬ、インターネットで予約・購入していただきます。駅では無人の改札をICカードで通過しますが、ピーチの場合は自動チェックイン機で、ネット予約時に印刷したバーコードを読み取るだけ。5秒ほどでチェックインが終わります。

座席に関しても、電車と同じく自由席です。チェックインの際、コンピュータが自動で座席を選択します。座席を指定したい場合は、指定料金をいただきます。受託手荷物は1個目から有料となります。関空での搭乗は、待合室から飛行機まで歩いていただき、機内の飲食物は有料、映画や音楽などのエンターテインメントは一切ございません。

また、時間通りに出発することも電車と同じです。現在は所有する8機で、国内7路線、海外4路線に就航しています。限られた飛行機を効率よく活用しなくてはならないため、この点については無慈悲です。初年度は大変な苦労がありました。「10分くらい待てないのか!」とのお叱りをたびたび受けました。それに対して私たちは「お客様、私たちは“電車”なのです。お待ちできないからこそ、運賃も安くできるのです」と必死にお伝えしました。こうした点が“空飛ぶ電車”たる所以です。

※就航路線はセミナー開催時2013年5月現在のものです。


該当講座

アジアの空を、もっと近く、面白く

~日本初・本格的LCC Peach の戦略~

アジアの空を、もっと近く、面白く
井上慎一 (Peach Aviation 株式会社 代表取締役CEO)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

井上慎一(Peach Aviation㈱代表取締役CEO)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
日本初の本格的LCC(Low Cost Carrier)として、2012年3月就航したピーチ。これまでの航空業界と異なるやり方で、安定的な低コストを実現させ、かつ可愛らしく、気軽に利用できるブランドイメージで、順調に顧客を広げています。人々のライフスタイルを変えるイノベーションの本質と、今後のアジアでの事業展開・戦略に迫ります。


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