記事・レポート

井上慎一CEOが語る日本初・本格的LCC「ピーチ」の戦略

アジアの空を、もっと近く、面白く

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年10月28日 (月)

第4章 LCCならではの機内風景が物語ること


 
初年度に掲げた2つの目標

井上慎一: 初年度となった2012年に目指したことは2つあります。1つは「飛行機を安全に365日飛ばし続ける」。LCCは価格やユニークなサービスばかりが注目されますが、航空会社として、「お客様を目的地に届ける」という基本品質を忘れてはならないと考えています。もう1つは、我々のサービスモデル“空飛ぶ電車”の浸透です。

これまでのピーチの就航率(※編注/予定発着便数に対する実際の発着便数。以下の数字はセミナー開催時2013年5月現在のものです)は99%です。欠航は全体の1%であり、その理由の大半は天候事由で、機体の故障等はほぼ皆無。定時運行率(定時後15分以内に出発した便数)は81%です。2013年初めの冬の時期、新千歳空港と韓国・仁川国際空港の積雪が多かったため81%でしたが、雪が降る前は88%でした。いずれも、大手航空会社に引けをとらない数字を達成しています。

そして、平均搭乗率(提供座席数に占める利用座席数)は78%でした。航空会社全体では高い部類に入り、我々の当初の予想も上回りました。特に、2012年のお盆期間中においては、国内線94.3%、国際線88.7%と、ほぼ全便が満席に近い状態でした。2013年GW期間中の平均搭乗率も、国内線91.3%、国際線84.1%と、日本の航空会社の中ではトップです。

機内の風景が一変した

井上慎一: 現在、最も多く利用いただいているのは、帰省や親族訪問を目的としたお客様です。また、単身赴任の父親を家族で訪ねる、若い母親とお子さまの2人旅を目的とする方々などにも非常に喜ばれています。一方で、ビジネス利用は1割を切るほど少ないのです。

利用者の男女比率は4対6で、女性が多く、4割の男性のうち2割は小さな男の子や60歳以上のシニアの方です。利用年齢層で圧倒的に多いのは、20〜30代のお客様。つまり、これまで飛行機を頻繁に利用されなかった方々に搭乗いただいているわけです。ピーチの機内風景は、私がかつて全日空の機内で見たものとはまったく異なっています。

また、就航地域への顕著な経済貢献も確認されています。LCCを利用したお客様が、航空運賃が浮いた分、タクシーを長距離で利用する、宿泊先をワンランクアップする、お土産を多めに購入する、といった消費活動の好循環を生み出しているのです。

おかげさまで、2013年5月7日には搭乗者数が200万人を突破しました。先に示した数字を見る限り、我々が当初掲げた2つの目標は、ほぼ達成できたと考えています。就航から1年半の間に、多くのお客様にピーチのビジネスモデルが受け入れられたと、嬉しく思っております。


該当講座

アジアの空を、もっと近く、面白く

~日本初・本格的LCC Peach の戦略~

アジアの空を、もっと近く、面白く
井上慎一 (Peach Aviation 株式会社 代表取締役CEO)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

井上慎一(Peach Aviation㈱代表取締役CEO)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
日本初の本格的LCC(Low Cost Carrier)として、2012年3月就航したピーチ。これまでの航空業界と異なるやり方で、安定的な低コストを実現させ、かつ可愛らしく、気軽に利用できるブランドイメージで、順調に顧客を広げています。人々のライフスタイルを変えるイノベーションの本質と、今後のアジアでの事業展開・戦略に迫ります。


日本元気塾 経営戦略 キャリア・人