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宋文洲さん、チャイナリスクとどう向き合えばいいですか?

中国経済を捉える~日本企業のこれから~

BIZセミナー政治・経済・国際
更新日 : 2012年07月05日 (木)

第2章 戦後の日本の成功事例は捨て去れ

アカデミーヒルズ ランチョンセミナー会場の様子

宋文洲: 中国市場に挑戦しようとすると、いろいろな壁にぶち当たりますが、それは相手の壁ではなく、自分自身の壁です。

孫子の兵法には、戦略について詳しく書かれています。「戦わずして勝つ」というのは皆さんもご存知だと思いますが、これは神風を期待しろということではありません。戦略の略という字は、略式とか省くという意味です。つまり「なるべくやらないこと」なんです。

どうして日本の家電メーカーがサムスンに負けるかというと、これもあれも全部やるからです。テレビをつくっていない家電メーカーはありませんが、私は、皆さんの目が黒いうちにテレビはやめることになると保証します。いずれやめなければいけないんです。テレビなんてコモディティーだから、安い中国メーカーでも生きていけないんです。

新しいことをやるのが戦略だ、と言う人が多いですね。皆さんの会社にも戦略を立てる企画部署があると思いますけれど、やめたほうがいい。苦労を知らない若いやつが毎日パソコンをいじって「我々の戦略は~」って、お前から聞きたくない(笑)。戦略は社長から聞きたい。社長の一言でいいんです。日本は戦略を誤解しています。

「中国のマーケットは難しい」とみんな言います。私もそう思います。ではどうすればいいかというと、発想の転換が必要です。それは実に簡単な話です。日本の過去30年間の成功事例を調べて「日本はここが強い。これさえやっておけばいいんだ」と思うものを全部やめることです。そうすれば日本はよくなります。経団連が「日本の勝ちパターンだ」と言っているものは、全部やめたほうがいい。

僕が大好きな日本人の先輩に中村天風さんという人がいます。彼は心の平穏を得るためにインドにヨガの修行に行ったのですが、修行僧は何日経っても何も教えてくれなかったそうです。耐えきれなくなった彼は、どうして何も教えてくれないのか尋ねました。すると水が入った茶碗を出されて「このまま、水を出さずにお茶を入れてください」と修行僧に言われました。彼が「水が入っているから、お茶は入りません」と言うと、「そうです。あなたはインドに来ても背広のまま、生活は洋式のままでいる。この辺はみんな下着一枚で生活しています。あなたが自分の中のものを出さない限り、私が何を言っても意味がない」と言われたそうです。だから、やめることが先なんです。

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該当講座

中国経済を捉える ~日本企業のこれから~
宋文洲 (ソフトブレーン株式会社 創業者)

宋文洲(ソフトブレーン株式会社創業者)世界経済に多大なインパクトをもたらす中国経済を捉えることは、欧米諸国、そして日本にとって重要な課題です。ソフトブレーンの創業者であり経営コンサルタント、経済評論家として中国ビジネスに造詣が深い宋氏をゲストに迎え、中国の今を伺います。


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