記事・レポート
宋文洲さん、チャイナリスクとどう向き合えばいいですか?
中国経済を捉える~日本企業のこれから~
BIZセミナー政治・経済・国際
更新日 : 2012年07月03日
(火)
第1章 「いいものが売れる」というのは勘違い
中国経済に乗り遅れるなと、相次ぐ日本企業の中国進出。しかしチャイナリスクの苦労話も耳にします。我々は中国とどうつきあえばいいのでしょうか。ソフトブレーンの創業者であり、経営コンサルタントの宋氏に伺います。「車にひかれた人は中国に行くな」「コンプライアンスより人治」など、刺激的で示唆に富むお話です。
講師:宋文洲(ソフトブレーン株式会社 創業者)
宋文洲: きょうのテーマは中国経済ですが、昨日(2012年2月27日)会社更正法の適用を申請したエルピーダメモリはアウトですね。私は2年前から「台湾のメーカーと合併すべきだ」と言っていたんですよ。でも日本のマスコミとか、経済がわからない人に限って「愛国心だ」とか「テレビとメモリーは日本の魂だ。売っちゃいけない」と言っていました。
それで300億円の公的資金を突っ込んで、どうなりました? 300億円の税金だけならいいとしても、リンゴが1個腐ったことで、周りのリンゴも引きずられて株価がみんな下がっているじゃないですか。日本の銀行は、いったいどれほど損をしたことか。たとえ魂だとしても、あのとき売っちゃえばよかったんです。
日本の大手電機メーカーの中国担当の人が「全然もうからない。テレビなんて、サムスンより2割安くしても売れない」と嘆いていました。こうした状況をある日本人は「韓国の物より安くしても売れない? それは、中国人は日本人に恨みがあるからでしょう」と言っていましたが、状況はアメリカに行っても同じです。
この人は「サムソンのほうがブランド力が上なだけでなく、技術も進んでいる」と言っていました。どんなところが進んでいるのかと聞いたら、彼は、例えば薄さだと言いました。サムスンはマーケティングを先行して、商品ができる1年前から「薄いものはクールだ、素晴らしい」と広告を始める。そして薄くするのに邪魔になる部品を、自分たちの技術で徹底的につぶしていく。これが大体1年で終わります。そうしてどこよりも薄いテレビをつくって出すから、パーっと売れるんです。他のメーカーが後から「うちもやる!」と追いかけても、もうその間にシェアはなくなっています。
これが、いいものと悪いものの違いです。日本の技術者、特に日本を出たことのない技術者は「いいものが売れる」とよく言います。でもこれは「東大卒の私に、なぜお前は惚れないんだ?」と言うのと同じです。東大を出たことは悪いことではありませんが、それだけでは惚れませんよね。そんなことを前面に出したら、かえって嫌われます。素晴らしい男だからもてるんじゃないんです、もてる男が素晴らしいんです。それと同じで、売れる商品がいい商品なんです。
それで300億円の公的資金を突っ込んで、どうなりました? 300億円の税金だけならいいとしても、リンゴが1個腐ったことで、周りのリンゴも引きずられて株価がみんな下がっているじゃないですか。日本の銀行は、いったいどれほど損をしたことか。たとえ魂だとしても、あのとき売っちゃえばよかったんです。
日本の大手電機メーカーの中国担当の人が「全然もうからない。テレビなんて、サムスンより2割安くしても売れない」と嘆いていました。こうした状況をある日本人は「韓国の物より安くしても売れない? それは、中国人は日本人に恨みがあるからでしょう」と言っていましたが、状況はアメリカに行っても同じです。
この人は「サムソンのほうがブランド力が上なだけでなく、技術も進んでいる」と言っていました。どんなところが進んでいるのかと聞いたら、彼は、例えば薄さだと言いました。サムスンはマーケティングを先行して、商品ができる1年前から「薄いものはクールだ、素晴らしい」と広告を始める。そして薄くするのに邪魔になる部品を、自分たちの技術で徹底的につぶしていく。これが大体1年で終わります。そうしてどこよりも薄いテレビをつくって出すから、パーっと売れるんです。他のメーカーが後から「うちもやる!」と追いかけても、もうその間にシェアはなくなっています。
これが、いいものと悪いものの違いです。日本の技術者、特に日本を出たことのない技術者は「いいものが売れる」とよく言います。でもこれは「東大卒の私に、なぜお前は惚れないんだ?」と言うのと同じです。東大を出たことは悪いことではありませんが、それだけでは惚れませんよね。そんなことを前面に出したら、かえって嫌われます。素晴らしい男だからもてるんじゃないんです、もてる男が素晴らしいんです。それと同じで、売れる商品がいい商品なんです。
宋文洲さん、チャイナリスクとどう向き合えばいいですか? インデックス
-
第1章 「いいものが売れる」というのは勘違い
2012年07月03日 (火)
-
第2章 戦後の日本の成功事例は捨て去れ
2012年07月05日 (木)
-
第3章 日本で痛い目に遭っている人は、中国に行かないほうがいい
2012年07月06日 (金)
-
第4章 なぜ日本企業は中国に過大な期待をするのか?
2012年07月09日 (月)
-
第5章 ビジネスパートナー選びの難しさは、中国も日本も同じ
2012年07月10日 (火)
-
第6章 コンプライアンスより人治
2012年07月12日 (木)
-
第7章 グローバル・スタンダードより、その国のスタンダード
2012年07月13日 (金)
-
第8章 日本はたいして豊かじゃないし、格差は必要
2012年07月17日 (火)
該当講座
宋文洲 (ソフトブレーン株式会社 創業者)
宋文洲(ソフトブレーン株式会社創業者)世界経済に多大なインパクトをもたらす中国経済を捉えることは、欧米諸国、そして日本にとって重要な課題です。ソフトブレーンの創業者であり経営コンサルタント、経済評論家として中国ビジネスに造詣が深い宋氏をゲストに迎え、中国の今を伺います。
BIZセミナー
政治・経済・国際
注目の記事
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
-
10月22日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年10月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
10月22日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 12月17日 (火) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第1回。近著『きみのお金は誰のため』が25万部超のベストセラーとなっている、社会的金融教育....
「そもそもお金って何?未来をつくるためのお金の教養」
-
開催日 : 11月28日 (木) 19:00~20:30
World Report 第10回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくることを参加者の皆....
「ハリス V.S. トランプ 米国大統領選挙結果を読み解く」