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宇宙は何でできているのか ~宇宙の果ての向こう~

暗黒物質や暗黒エネルギーなど最新宇宙論を、村山斉が解説

教養文化
更新日 : 2012年01月23日 (月)

第8章 世界最高精度で暗黒エネルギーの謎に迫る~日本の挑戦~

村山斉氏

村山斉: 宇宙の起源を調べ、宇宙の未来を予測する「SuMIRe(すみれ)計画」というものを、今、私たちはやっています。そのために「すばる望遠鏡」に新たに取り付ける、画素数9億ピクセル、重さ3トンを超えるデジカメと、一度に3,000個の銀河の色合い(赤くなりぐあい)を観測できる分光器という装置をつくっているところです。

これらを使って調べると、暗黒物質の三次元地図をつくれます。暗黒物質の分布状況は、宇宙の膨張の歴史をたどっています。宇宙の膨張の歴史がわかると、それを決めてきた暗黒エネルギーの正体に、間接的ではありますが迫ることができます。するとそれを将来の予測に使うことができるというわけです。

「SuMIRe計画」は暗黒エネルギーの性質を世界最高の精度で調べようという野心的な計画です。今、暗黒エネルギーには世界中が注目しているので、たくさんの計画が走っていますが、本計画の第1段階(デジカメ設置)で日本は世界のトップに躍り出ると思います。そして第2段階(分光器設置)でさらに精度を高め、ダントツ世界一になるはずです。なかなか大変なプロジェクトですが、これが数物連携宇宙研究機構の目玉の計画の1つです。

きょうの話を簡単にまとめると——宇宙の素朴な疑問に、今は科学の力で迫れるようになってきました。それにより宇宙全体のエネルギーの内訳がわかったのです。ところがその内訳の中に、わけのわからない暗黒物質や暗黒エネルギーというものがあり、「暗黒物質は宇宙の始まりの情報を持っている。暗黒エネルギーは宇宙の将来の情報を持っている」ということがわかってきたのです。今はこれらの正体に迫ろうとしているところです。

何かわかるたびに、新たな驚きが出てきます。多分これからも、いろいろなことがわかるたびに、また新しい驚きがあると思います。ですので、これからの研究にぜひ注目していただければ、ありがたいと思います。

最後に、少し宣伝させてください。きょうのセミナーのタイトルと同じ、『宇宙は何でできているのか』という本を、最近、幻冬舎から出しました。最初、担当者の人に「初版は8,000冊刷ります」と言われて、「えっ? そんなに刷って大丈夫ですか、売れるんですか?」って聞いたんですけど、なんと、これまでに26万冊売れたそうです。「理系の本がこんなに売れることは滅多にありません」と言われましたが、本人が一番びっくりしています。

まさかこんなに売れると思っていなかったので、「印税は全部研究所に寄附します」って言っちゃったのは大失敗でした(笑)。この本はどんなに売れても私には一銭も入ってきません。ただ、数物連携宇宙研究機構は文科省から10年間の期限付きサポートを受けてやっているプロジェクトですので、その後の非常時資金に役立てようと、今、蓄えているところです。

実はもう1冊『宇宙は本当にひとつなのか』という本を書きました。こちらは講談社から出ています。きょうのお話は、どちらかというとこの本の内容に近いので、もし興味を持たれた方はお買い求めいただければと思います。ご静聴ありがとうございました。(終)

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関連書籍

『宇宙は何でできているのか』

村山斉
幻冬舎

『宇宙は本当にひとつなのか』

村山斉
講談社



該当講座

宇宙は何でできているのか 

~宇宙の果ての向こう~

宇宙は何でできているのか 
村山斉 (東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長)

村山斉(東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長)ベストセラー『宇宙は何でできているのか -素粒子物理学で解く宇宙の謎-』の著者である村山斉氏に、最新の観測・研究からわかった宇宙のはじまり についてお話いただきます。 セミナー終了後は、観望会を予定しております。


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