記事・レポート
宇宙は何でできているのか ~宇宙の果ての向こう~
暗黒物質や暗黒エネルギーなど最新宇宙論を、村山斉が解説
教養文化
更新日 : 2012年01月12日
(木)
第2章 なぜ銀河はバラバラにならないのか~鍵を握る暗黒物質~
村山斉: 太陽の次に身近な宇宙は、太陽系です。太陽の周りを水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8つの惑星が回っています。「はやぶさ」が行って帰ってきた小惑星イトカワは、地球と火星の軌道の間を回っていて、ここまで行くのに光で約20分かかります。太陽までが約8分ですから、それよりずっと遠くにあるということですね。これが海王星辺りになると、光の速さでも約4時間もかかります。
人間がつくったもので一番遠くまで宇宙を旅しているのは、アメリカが打ち上げた探査機「ボイジャー」です。ボイジャーは木星や土星を観察した後、太陽系から飛び出して、今はだいたい地球から光の速さで16時間ぐらいのところを飛んでいます。海王星の4倍ぐらい遠くを今も漂っているのです。
太陽の次に近い恒星はプロキシマ・ケンタウリで、ここに行くには光の速さでも4年間以上かかります。「ボイジャー」は30年以上かけて光の速さで14時間のところまで行きましたから、プロキシマ・ケンタウリに行くには何万年もかかります。それぐらい遠くにあるということです。宇宙には、こうした星が無数にあります。
人間がつくったもので一番遠くまで宇宙を旅しているのは、アメリカが打ち上げた探査機「ボイジャー」です。ボイジャーは木星や土星を観察した後、太陽系から飛び出して、今はだいたい地球から光の速さで16時間ぐらいのところを飛んでいます。海王星の4倍ぐらい遠くを今も漂っているのです。
太陽の次に近い恒星はプロキシマ・ケンタウリで、ここに行くには光の速さでも4年間以上かかります。「ボイジャー」は30年以上かけて光の速さで14時間のところまで行きましたから、プロキシマ・ケンタウリに行くには何万年もかかります。それぐらい遠くにあるということです。宇宙には、こうした星が無数にあります。
私たちの太陽系を含む銀河を「銀河系」と呼びます。銀河系は渦を巻いた円盤の形をしていて、横から見ると、真ん中が膨らんでいます。膨らんだ部分はバルジといい、ここには古い星がたくさん集まっていて、新しい星は生まれていません。端の薄い部分は新興住宅地のように元気で、新しい星が生まれています。太陽系はこの新興住宅地にあり、銀河系の中心からは2万8000光年離れています。
地球が太陽を中心にして回っているように、太陽系も銀河系の真ん中を中心にして回っています。そのスピードは毎秒220kmという猛スピードです。こんなすごいスピードで走っているのに、なぜ銀河系からすっ飛んで出て行ってしまわないのでしょうか。
それは太陽系が銀河系の重力で引っ張られているからです。しかし、重力のもとになる星を全部観測して星から来る重力を合計しても、太陽系をつなぎとめておける重力には半分ぐらい足りません。ということは、私たちの銀河系が見える星だけでできているとすると、とっくの昔にバラバラになっていたはずなんです。
じゃあ、何がつなぎ止めてくれているのかというと、「暗黒物質」です。暗黒物質にはすごく強い重力があり、そのおかげで太陽系は銀河系の中をグルグル回っていられるのです。こうした目に見えないものが宇宙にはたくさんあるということが、だんだんわかってきました。
暗黒物質は私たちの銀河系だけにあるのではありません。お隣のアンドロメダ銀河も、ものすごい速さで動いていて、これも暗黒物質なしではバラバラになってしまうことがわかっています。暗黒物質はどの銀河にもあるのです。もっと広い宇宙にも、暗黒物質があるという証拠がたくさん見つかっています。
地球が太陽を中心にして回っているように、太陽系も銀河系の真ん中を中心にして回っています。そのスピードは毎秒220kmという猛スピードです。こんなすごいスピードで走っているのに、なぜ銀河系からすっ飛んで出て行ってしまわないのでしょうか。
それは太陽系が銀河系の重力で引っ張られているからです。しかし、重力のもとになる星を全部観測して星から来る重力を合計しても、太陽系をつなぎとめておける重力には半分ぐらい足りません。ということは、私たちの銀河系が見える星だけでできているとすると、とっくの昔にバラバラになっていたはずなんです。
じゃあ、何がつなぎ止めてくれているのかというと、「暗黒物質」です。暗黒物質にはすごく強い重力があり、そのおかげで太陽系は銀河系の中をグルグル回っていられるのです。こうした目に見えないものが宇宙にはたくさんあるということが、だんだんわかってきました。
暗黒物質は私たちの銀河系だけにあるのではありません。お隣のアンドロメダ銀河も、ものすごい速さで動いていて、これも暗黒物質なしではバラバラになってしまうことがわかっています。暗黒物質はどの銀河にもあるのです。もっと広い宇宙にも、暗黒物質があるという証拠がたくさん見つかっています。
関連書籍
『宇宙は何でできているのか』
村山斉幻冬舎
『宇宙は本当にひとつなのか』
村山斉講談社
宇宙は何でできているのか ~宇宙の果ての向こう~ インデックス
-
第1章 太陽はどうやって光っているのか~鍵を握るニュートリノ~
2012年01月10日 (火)
-
第2章 なぜ銀河はバラバラにならないのか~鍵を握る暗黒物質~
2012年01月12日 (木)
-
第3章 暗黒物質の正体に迫る
2012年01月13日 (金)
-
第4章 宇宙の果てはどうなっているのか
2012年01月16日 (月)
-
第5章 宇宙のほとんどは暗黒物質でできている
2012年01月17日 (火)
-
第6章 宇宙の本当の始まりは、物理学者の悩みの種
2012年01月19日 (木)
-
第7章 宇宙の終わりはどうなるのか~鍵を握る暗黒エネルギー~
2012年01月20日 (金)
-
第8章 世界最高精度で暗黒エネルギーの謎に迫る~日本の挑戦~
2012年01月23日 (月)
該当講座
宇宙は何でできているのか
~宇宙の果ての向こう~
村山斉 (東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長)
村山斉(東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長)ベストセラー『宇宙は何でできているのか -素粒子物理学で解く宇宙の謎-』の著者である村山斉氏に、最新の観測・研究からわかった宇宙のはじまり についてお話いただきます。 セミナー終了後は、観望会を予定しております。
教養 文化
注目の記事
-
11月26日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年11月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
11月26日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 01月30日 (木) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第2回。映画『ビリギャル』の主人公のモデルで教育家として活動する小林さやかさんと、元陸上選....
小林さやかと為末大が語る『人間の学び・成長のプロセスとマインドセット』