記事・レポート
宇宙は何でできているのか ~宇宙の果ての向こう~
暗黒物質や暗黒エネルギーなど最新宇宙論を、村山斉が解説
教養文化
更新日 : 2012年01月10日
(火)
第1章 太陽はどうやって光っているのか~鍵を握るニュートリノ~
アインシュタインは間違っていた!? そんな驚きの観測結果が宇宙科学の最前線で得られています。宇宙はどうやって始まったのか、宇宙の果てはどうなっているのか、宇宙に終わりはあるのか…。こうした素朴な疑問に答えながら、最新の宇宙論について、理系の新書で異例のベストセラーを記録した村山斉氏がやさしく解説します。
スピーカー:村山斉 東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長
村山斉: きょうのテーマ「宇宙は何でできているのか」というのは、宇宙を見たときに、誰もが感じる素朴な疑問だと思います。「宇宙はどうやって始まったんだろう?」「宇宙に終わりはあるのだろうか?」「この宇宙に、どうして私たちみたいな存在が生まれたんだろう?」……こうした太古からの疑問に、今は科学で迫れるようになってきました。数物連携宇宙研究機構では、数学者と物理学者と天文学者が協力して、これらの問題解決にあたっています。
最近は「宇宙」を身近に感じることが多くなったと思います。若田光一さんが乗り込んだ国際宇宙ステーションは、地上から約400kmという遙か上空にあります。でもこれは宇宙全体のスケールからすると、ほんのわずかな距離でしかありません。地球の直径が1万2000kmですので、地球が桃だとすれば、国際宇宙ステーションは桃の皮1枚分ぐらいしか宇宙に出ていないのです。
もう少し宇宙に出ると、地球から最も近い天体である月が、約38万km離れた所にあります。国際宇宙ステーションの400kmに比べると、本当に遙か彼方です。このように宇宙ではものすごく長い距離が出てくるので、「光の速さで行ったら、到着するのにどれだけ時間がかかるか」という言い方で距離を表します。「1光年」というのは「光の速さで1年かかる距離」です。月の場合は1.3光秒、地球から光の速さで1.3秒かかる場所にあります。
その次に私たちになじみ深い星といえば、太陽です。太陽までは1億5千万km、光の速さで8分以上かかります。ですから、もし仮にこの瞬間に太陽がポッとなくなってしまっても、我々は8分間気がつかないんです。それぐらい遠いところに太陽はあるわけです。
そんな太陽の光の恵みを受けて、私たちは地球で暮らしていますが、太陽の光の元は一体何でしょうか。実は「星はどうやって光っているのか?」というのは20世紀の初めまで、長い間謎でした。最近になってやっと「太陽は重さをエネルギーに変えて光を出している。中心で核融合反応が起きて熱が出ている」ということがわかってきました。
「太陽まで行って中を見てきた人がいるわけじゃないのに、なんでそんなことがわかるんだ?」と思うかもしれませんが、決定的な証拠があるんです。核融合反応が起きると、熱と光だけではなく、ニュートリノという素粒子も一緒に生まれます。ニュートリノはお化けのような素粒子で、今こうしている間にも、私たちの体の中を毎秒何十兆個も通り抜けています。
ニュートリノは何でもかんでもスースー通り抜けてしまうので、捕まえるのは大変です。しかし、日本はスーパーカミオカンデという有名な実験装置をつくり、捕まえるのに成功しました。装置は地下1kmに5万トンの水を貯めるタンクのようなものです。ニュートリノは何でも通り抜けてしまいますが、極まれに、この水の中にある電子という小さなつぶをコツンと弾くことがあります。弾かれた電子は光を出します。その光をとらえたのです。
ニュートリノを使って、太陽の表面ではなく中を見ることができたというのはものすごく大事なことです。これが「太陽の中で核融合反応が起きている。それで光っている。太陽は重さをエネルギーに変えて光っている」ということの決定的な証拠なのです。これは日本の科学の成果です。小柴昌俊さんはこの研究を通じて2002年にノーベル賞に輝きました。
最近は「宇宙」を身近に感じることが多くなったと思います。若田光一さんが乗り込んだ国際宇宙ステーションは、地上から約400kmという遙か上空にあります。でもこれは宇宙全体のスケールからすると、ほんのわずかな距離でしかありません。地球の直径が1万2000kmですので、地球が桃だとすれば、国際宇宙ステーションは桃の皮1枚分ぐらいしか宇宙に出ていないのです。
もう少し宇宙に出ると、地球から最も近い天体である月が、約38万km離れた所にあります。国際宇宙ステーションの400kmに比べると、本当に遙か彼方です。このように宇宙ではものすごく長い距離が出てくるので、「光の速さで行ったら、到着するのにどれだけ時間がかかるか」という言い方で距離を表します。「1光年」というのは「光の速さで1年かかる距離」です。月の場合は1.3光秒、地球から光の速さで1.3秒かかる場所にあります。
その次に私たちになじみ深い星といえば、太陽です。太陽までは1億5千万km、光の速さで8分以上かかります。ですから、もし仮にこの瞬間に太陽がポッとなくなってしまっても、我々は8分間気がつかないんです。それぐらい遠いところに太陽はあるわけです。
そんな太陽の光の恵みを受けて、私たちは地球で暮らしていますが、太陽の光の元は一体何でしょうか。実は「星はどうやって光っているのか?」というのは20世紀の初めまで、長い間謎でした。最近になってやっと「太陽は重さをエネルギーに変えて光を出している。中心で核融合反応が起きて熱が出ている」ということがわかってきました。
「太陽まで行って中を見てきた人がいるわけじゃないのに、なんでそんなことがわかるんだ?」と思うかもしれませんが、決定的な証拠があるんです。核融合反応が起きると、熱と光だけではなく、ニュートリノという素粒子も一緒に生まれます。ニュートリノはお化けのような素粒子で、今こうしている間にも、私たちの体の中を毎秒何十兆個も通り抜けています。
ニュートリノは何でもかんでもスースー通り抜けてしまうので、捕まえるのは大変です。しかし、日本はスーパーカミオカンデという有名な実験装置をつくり、捕まえるのに成功しました。装置は地下1kmに5万トンの水を貯めるタンクのようなものです。ニュートリノは何でも通り抜けてしまいますが、極まれに、この水の中にある電子という小さなつぶをコツンと弾くことがあります。弾かれた電子は光を出します。その光をとらえたのです。
ニュートリノを使って、太陽の表面ではなく中を見ることができたというのはものすごく大事なことです。これが「太陽の中で核融合反応が起きている。それで光っている。太陽は重さをエネルギーに変えて光っている」ということの決定的な証拠なのです。これは日本の科学の成果です。小柴昌俊さんはこの研究を通じて2002年にノーベル賞に輝きました。
関連書籍
『宇宙は何でできているのか』
村山斉幻冬舎
『宇宙は本当にひとつなのか』
村山斉講談社
宇宙は何でできているのか ~宇宙の果ての向こう~ インデックス
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第1章 太陽はどうやって光っているのか~鍵を握るニュートリノ~
2012年01月10日 (火)
-
第2章 なぜ銀河はバラバラにならないのか~鍵を握る暗黒物質~
2012年01月12日 (木)
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第3章 暗黒物質の正体に迫る
2012年01月13日 (金)
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第4章 宇宙の果てはどうなっているのか
2012年01月16日 (月)
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第5章 宇宙のほとんどは暗黒物質でできている
2012年01月17日 (火)
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第6章 宇宙の本当の始まりは、物理学者の悩みの種
2012年01月19日 (木)
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第7章 宇宙の終わりはどうなるのか~鍵を握る暗黒エネルギー~
2012年01月20日 (金)
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第8章 世界最高精度で暗黒エネルギーの謎に迫る~日本の挑戦~
2012年01月23日 (月)
該当講座
宇宙は何でできているのか
~宇宙の果ての向こう~
村山斉 (東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長)
村山斉(東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長)ベストセラー『宇宙は何でできているのか -素粒子物理学で解く宇宙の謎-』の著者である村山斉氏に、最新の観測・研究からわかった宇宙のはじまり についてお話いただきます。 セミナー終了後は、観望会を予定しております。
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