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宇宙は何でできているのか ~宇宙の果ての向こう~

暗黒物質や暗黒エネルギーなど最新宇宙論を、村山斉が解説

教養文化
更新日 : 2012年01月20日 (金)

第7章 宇宙の終わりはどうなるのか~鍵を握る暗黒エネルギー~

村山斉氏

村山斉: ここまでは「宇宙の始まり」についてお話ししてきました。ここからは「宇宙の終わり」を考えてみましょう。

アインシュタインによれば、宇宙の膨張のようなすごい現象も重力の法則に従っていることになります。宇宙の膨張も、私たちが地球上でボールを真上に投げるのと同じだというのです。最初に「エイヤッ」と投げる勢いがビッグバンで、ボールがだんだん上に上がっていく様子がどんどん大きくなる宇宙というわけです。上に上がっていったボールは地球の重力に引っ張られているので、だんだん遅くなりますよね。だから「宇宙の膨張はだんだん減速するはずだ」と、ずっと考えられてきました。しかし最近、これは完全に間違いだとわかりました。

宇宙の運命は、今までの宇宙の膨張の歴史を調べることで予測できます。宇宙の膨張の速さは星の色を見ればわかります。先ほど遠ざかる銀河は赤く見えるとお話ししましたが、赤くなっている度合いで、どのぐらいのスピードで遠ざかっているか、つまりは膨張しているかが測れます。ということは、近くの星と遠くの星の赤さを比べたら、最近の宇宙の膨張の速さと、昔の宇宙の膨張の速さを比べることができます。

難しいのは、その星までの距離を測ることです。宇宙に行って測って来ることはできませんから。ではどうやって測るかというと、超新星という、爆発するときにものすごく明るく光る星を使うのです。どのぐらい明るくなるかというと、銀河全体、つまりは1,000億個の星の合計よりも明るくなります。

これぐらい明るい星なら遠くにあっても見えますし、ありがたいことにIa型という種類の超新星は明るさが決まっています。言ってみれば「100ワットの電球」みたいなもので、明るさがどれも同じなんです。ですので、これがすごく明るく見えたら「近くにある」、暗く見えたら「遠くにある」とわかります。見かけの明るさを使って距離を測るわけです。また、超新星までの距離がわかると、そこから地球に光が届くまでの時間がわかるので「これはどのぐらい昔の超新星爆発か」ということがわかります。これで時間の情報が得られます。

膨張の速さと、距離と、タイミング。これらの情報を組み合わせて、宇宙の膨張の歴史を調べてみたところ、なんと、宇宙の膨張速度はどんどん速くなっているということが、つい最近、1998年にわかったのです。これにはびっくりしました。

先ほどのボールの例でいうと、「上に投げたボールは重力で引っ張られるから、だんだん遅くなるはずだ」とずっと思っていたのに、実は加速していたというのです。「エイヤッ」と投げたボールは、確かにしばらくは遅くなっていたのですが、あるところでグググッと速さを増して飛んでいっている、宇宙の膨張は最近になって——最近といっても宇宙のことですから、約70億年前のことですが——加速を始めたというのです。

宇宙が大きくなると、中にあるエネルギー密度が薄まるので膨張速度は遅くなるはずです。なのに加速しているということは、どんどんエネルギーが増えているということで、無尽蔵のエネルギー源があるように見えます。これは一体どういうことなのか、まだよく分かっていません。そこでこれを「暗黒エネルギー」と呼ぶことになったのです。

あまりにも奇妙な現象なので「そんな変な結論が出るのだったら、そもそもアインシュタインが間違っていたのではないか」と言う人も出てきました。また「エネルギーの増え方が早いと、いずれ膨張速度が無限大になって、宇宙が引き裂かれて終わってしまうかもしれない」という可能性——ビッグ・リップと言います——も議論されるようになりました。

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関連書籍

『宇宙は何でできているのか』

村山斉
幻冬舎

『宇宙は本当にひとつなのか』

村山斉
講談社



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~宇宙の果ての向こう~

宇宙は何でできているのか 
村山斉 (東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長)

村山斉(東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構 機構長)ベストセラー『宇宙は何でできているのか -素粒子物理学で解く宇宙の謎-』の著者である村山斉氏に、最新の観測・研究からわかった宇宙のはじまり についてお話いただきます。 セミナー終了後は、観望会を予定しております。


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