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若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方

~『告白』『悪人』『東のエデン』はこうして生まれた~

BIZセミナーキャリア・人文化
更新日 : 2011年12月06日 (火)

第6章 今、何を描くべきか。それをお客さんにどう届けるか

石井朋彦氏

石井朋彦: 実写とアニメーションで大きく違うのは、アニメはつくるのにとても時間がかかるということです。神山監督と一緒につくった『東のエデン』は総勢600名のスタッフで、企画段階からすると2年間ぐらいかかりました。劇場の大作ですと1人のアニメーターが10カ月間で描けるのは、映画の尺にして大体5分くらいです。これを1年も2年もやるわけですから、途中でスタッフが「我々は一体どこに向かっているんだ?」と迷走することがあります。

ですので必然的に僕の仕事は、いかにして現場のスタッフや関係者のモチベーションを保つか、ということになります。スタッフのために、どれだけ世の中の人に作品に注目してもらうことができるか、その結果として「たくさんのお客さんに観ていただけました。またよろしくお願いします」という話ができるか。そこがプロデューサーの仕事だと思っています。

ここからは実際に私がどういうことを考えて作品を世に送り出すのかを『東のエデン』を例にお話しします。企画段階で監督と「今この日本を生きているお客さんは、どういうことを考えているだろう」ということを議論しました。日本では目的意識もないまま毎日ダラダラと過ごしていても普通に食べていける、そのつけはいつか必ずやってくるんじゃないか、そんな漠然とした不安があるんじゃないかと考えました。だとすれば、何と闘うべきなんだろう、敵は何なんだろうと話していたとき、監督が「敵はこの国を覆う空気だ。この国の空気に戦いを挑む映画をつくろう」と言ったのです。

そこで「ある男が日本人の目を覚ますために、100億円で日本を救うというゲームを始めたらどうだろう。プレイヤーは12人。医者や刑事、ロストジェネレーション世代など、さまざまなキャラクターがそれぞれの正義でこの国を何とかしていくという過程を描きながら、この国をどうしていくべきなのか考えていこう。それをエンターテインメントにするために、携帯デスノート合戦にしよう。勝者は1人で、残りの11人は死刑だ」となり、企画の骨子が決まったのです。

「今、何を描くべきか」と「それをお客さんに届けるためのテーマ」を監督と共に決めることがプロデューサーの一番大事な仕事です。先ほどもお話ししましたが、アニメーションの場合は時間がかかりますので、企画段階で立てた志を忘れないためにも、宣伝でそれを貫くためにも、言葉を監督と2人で練り上げます。それをスタッフやタイアップをしてくださる皆様一人ひとりにお伝えし、共感していただくのです。

最近「プロデューサーになりたい」という人がたくさん来ます。その人たちは「現場の仕事は大変そうなのでやりたくない。宣伝もちょっと……。何かこう、企画とかやりたいんです」と言います。そういう人は、すぐクビです(笑)。基本的に映画の仕事は、制作と宣伝なんです。スタッフが汗水たらしてつくったもの、さらに出資者の方々がお金を出してくださった作品をプラスにしなければならない。そのためには、たくさんの人に見てもらわなければならない。だから映画の仕事は制作と宣伝、この2つに尽きます。


該当講座

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川村元気 (小説家)
石井朋彦 (プロダクション・アイジー プロデューサー)
佐々木紀彦 (PIVOT CEO)

川村元気 (東宝株式会社 映画企画部 プロデューサー)
石井朋彦 (プロダクション・アイジー プロデューサー)
各界で活躍するイノベーティブな人物をゲストにお招きする『東洋経済インタラクティブセミナーシリーズ』。今回は、『告白』『悪人』『東のエデン』など次々にヒットを生み出し、日本映画界を代表する若手プロデューサーとして注目のお二人にお話を伺います。


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