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若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方

~『告白』『悪人』『東のエデン』はこうして生まれた~

BIZセミナーキャリア・人文化
更新日 : 2011年12月05日 (月)

第5章 アニメは日本を救う? コンテンツ・ビジネスの内情

石井朋彦氏

石井朋彦:  川村さんが映画のつくり方の概要を話してくださったので、僕はアニメーション業界ではそれを具体的にどうやっているのかという話をさせていただきます。

「アニメが世界で人気だ」「日本の残されたコンテンツ・ビジネスの砦はアニメだ」と言われていますが、現場で働いている我々はそういう前向きな展望はあまり持っていません。その辺の話も含めて、まずは今のアニメがどういうビジネスになっているかをお話しします。

アニメは大きく3つに分類できます。1つ目は、いわゆる大作です。全国で上映され、興行収入とDVDやBlu-ray Disc販売などで制作コストを回収する作品です。例えば『ポケットモンスター』や『名探偵コナン』など、人気テレビシリーズの劇場版です。スタジオジブリ作品は、宮崎駿監督という作家性とスタジオジブリというブランドの両方が全国のお客さんに支持されている特別な例です。

こうした作品は全世界で見られています。基本的には出版社が10年20年かけて育て上げ、コミックスが現地で読まれて作品が十分浸透したところに、子ども向けにきっちり練り上げた脚本の映画版を上映しているのです。これが「何となくアニメは儲かりそう」とか「アニメは上手くいっている」と言われる“アニメ”の成功例だと思います。

2つ目は、アニメファン向けの作品です。全国規模で公開したわけでもなく、テレビ放映も深夜枠だったにもかかわらず、テレビ局に数十億の利益をもたらす作品が、アニメーション業界の根幹を支えています。

アニメファン向けの作品は、今、大きく様変わりしています。数千万円の制作費で数十分の映像をつくり、それを無料でネット配信し、キャラクター商品で数億円を売り上げる作品など。アニメのお客さんは、一度好きになると、作品を大切にして下さいますので、様々な展開を継続していけば、20億30億と広がっていきます。つまり、大作よりもビジネスとして堅いんです。これが今、海外で上手くいっていると言われる“アニメーション・ビジネス”です。

そして3つ目は、オリジナルのストーリー、もしくは原作物を一から立ち上げる、つまり川村さんが邦画でやっているようなことをアニメーションでやる作品です。僕が今組んでいる神山健治監督は原作物もたくさん手掛けていますが、基本的に毎回一から立ち上げてお客さんに評価していただくというモデルでつくっています。


該当講座

若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方

~『告白』『悪人』『東のエデン』はこうして生まれた~

若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方
川村元気 (小説家)
石井朋彦 (プロダクション・アイジー プロデューサー)
佐々木紀彦 (PIVOT CEO)

川村元気 (東宝株式会社 映画企画部 プロデューサー)
石井朋彦 (プロダクション・アイジー プロデューサー)
各界で活躍するイノベーティブな人物をゲストにお招きする『東洋経済インタラクティブセミナーシリーズ』。今回は、『告白』『悪人』『東のエデン』など次々にヒットを生み出し、日本映画界を代表する若手プロデューサーとして注目のお二人にお話を伺います。


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