記事・レポート
若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方
~『告白』『悪人』『東のエデン』はこうして生まれた~
BIZセミナーキャリア・人文化
更新日 : 2011年12月02日
(金)
第4章 上手に生きられない人間を描き続けたい
川村元気: 「企画は普遍性と時代性が掛け合わさっているものが一番強い」と、よく言われています。普遍性とは何かというと、「笑えたり、泣けたり、驚いたり」という原始的な感情を動かすことだと思います。でも普遍性だけじゃ面白くありません。かといって時代性だけでは頭でっかちです。だから2つが掛け合わさっていることが重要だと思います。
最後に次に取り組んでいる作品のテーマの話をしたいと思います。
1つ目は「テレビって何だろう?」ということ。『悪人』がいくつか映画賞をいただいたことで、「映画とは...」というようなことをいろいろな方に言われたんですけど、僕自身はそういうことを意識して映画をつくったことがないんです。むしろ映画でどういう新しい挑戦ができるのだろうと思ってやってきました。だから、今一番面白いテレビ的な世界観を持っている深夜ドラマを、どう自分が映画というかたちに昇華して、面白く新しい日本映画を作ることができるか、挑戦したいと思いました。
具体的には、ある日突然4人の美女からモテてしまう草食男子の苦悩をコミカルに描いた『モテキ』という恋愛エンターテインメント作品です。これは深夜ドラマにもかかわらず、その革新的な映像と、音楽の使い方、旬なキャスティングで熱狂的なファンを生み出したテレビ東京の連続ドラマの映画化です。大根仁監督という、映画デビューを待望されていた最後の 大型新人が本作で映画界に初参戦します。
2つ目は、『告白』や『悪人』で悪意を突き詰めていくうちに、結局人間のよりどころはどこまでいっても親や兄弟だと思ったので、そこを突き詰めてみようと思って、初めてファミリーをテーマとターゲットにした映画にチャレンジします。具体的には『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督そしてその盟友・八木竜一監督と組んで、『friends もののけ島のナキ』 という3DCGアニメを作りました。
アニメのプロの石井さんの前でアニメーションの話すのは何なんですけど、アニメーションは作家の世界なので、自由に企画することがなかなか難しいと思うんです。ならば実写のプ ロデュースのメソッドで、3DCGだったらいろいろやれるんじゃないかと思って。傑作童話 「泣いた赤おに」を原案として実写的な脚本の作り方に挑戦し、ミニチュアセットをつくって撮影して、その実写にCGのキャラクターを乗せて、世界にもアピールできる独特な美しさとぬくもりをもった映像と、感動的な物語を併せ持ったアニメーションが完成しました。作品の反響もとてもよく、すでに世界各国での配給も決まっており、アニメーション映画の国際的な強みを感じています。
3つ目は、内在する日本人としての矜持、そして愛国心のようなものをどう映画としてエンターテインメントに落としこめるかに挑戦します。これは『宇宙兄弟』という、小学館漫画賞と講談社漫画賞を同年受賞した傑作コミック作品を映画化する大きなプロジェクトです。 ストーリーは、幼いころに宇宙飛行士になると約束した兄弟が、19年後、かたや弟はNASAの宇宙飛行士になり、かたや兄はサラリーマンとして働いていた会社をクビになる——そこ から話が始まり、弟から誘われた兄がもう一度、宇宙飛行士の夢を追いかけるという青春映画です。
宇宙開発史は米ソの冷戦構造から始まって、どちらが先に月に人類を送りこめるかという国威発揚の歴史です。だから兄弟が月を目指し、日本人が初めて月面に降り立つ姿がいかに日本の観客の愛国心を揺さぶり、気持ちを高揚させるものか、ということがこの脚本で目指したところです。キャスティングは兄弟のミスマッチ感を出しつつ、映画にこだわっている小栗旬と岡田将生を起用しました。監督はテレビマンユニオンでドキュメンタリーを撮っていた新人・森義隆監督を抜擢。日本史上初の本格宇宙(兄弟)映画として、2012年5月の公開を目指して現在制作中です。
このように僕はジャンルを問わず多岐にやっているように見えますが、基本的には表現手法 は変われど「上手に生きられない人間」を描き続けているだけなんです。もし将来、皆さんが映画づくりに携わることがあれば、何か新しく面白いテーマで「上手に生きられない人 間」を描く作品づくりを共にできたらと思っています。
最後に次に取り組んでいる作品のテーマの話をしたいと思います。
1つ目は「テレビって何だろう?」ということ。『悪人』がいくつか映画賞をいただいたことで、「映画とは...」というようなことをいろいろな方に言われたんですけど、僕自身はそういうことを意識して映画をつくったことがないんです。むしろ映画でどういう新しい挑戦ができるのだろうと思ってやってきました。だから、今一番面白いテレビ的な世界観を持っている深夜ドラマを、どう自分が映画というかたちに昇華して、面白く新しい日本映画を作ることができるか、挑戦したいと思いました。
具体的には、ある日突然4人の美女からモテてしまう草食男子の苦悩をコミカルに描いた『モテキ』という恋愛エンターテインメント作品です。これは深夜ドラマにもかかわらず、その革新的な映像と、音楽の使い方、旬なキャスティングで熱狂的なファンを生み出したテレビ東京の連続ドラマの映画化です。大根仁監督という、映画デビューを待望されていた最後の 大型新人が本作で映画界に初参戦します。
2つ目は、『告白』や『悪人』で悪意を突き詰めていくうちに、結局人間のよりどころはどこまでいっても親や兄弟だと思ったので、そこを突き詰めてみようと思って、初めてファミリーをテーマとターゲットにした映画にチャレンジします。具体的には『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督そしてその盟友・八木竜一監督と組んで、『friends もののけ島のナキ』 という3DCGアニメを作りました。
アニメのプロの石井さんの前でアニメーションの話すのは何なんですけど、アニメーションは作家の世界なので、自由に企画することがなかなか難しいと思うんです。ならば実写のプ ロデュースのメソッドで、3DCGだったらいろいろやれるんじゃないかと思って。傑作童話 「泣いた赤おに」を原案として実写的な脚本の作り方に挑戦し、ミニチュアセットをつくって撮影して、その実写にCGのキャラクターを乗せて、世界にもアピールできる独特な美しさとぬくもりをもった映像と、感動的な物語を併せ持ったアニメーションが完成しました。作品の反響もとてもよく、すでに世界各国での配給も決まっており、アニメーション映画の国際的な強みを感じています。
3つ目は、内在する日本人としての矜持、そして愛国心のようなものをどう映画としてエンターテインメントに落としこめるかに挑戦します。これは『宇宙兄弟』という、小学館漫画賞と講談社漫画賞を同年受賞した傑作コミック作品を映画化する大きなプロジェクトです。 ストーリーは、幼いころに宇宙飛行士になると約束した兄弟が、19年後、かたや弟はNASAの宇宙飛行士になり、かたや兄はサラリーマンとして働いていた会社をクビになる——そこ から話が始まり、弟から誘われた兄がもう一度、宇宙飛行士の夢を追いかけるという青春映画です。
宇宙開発史は米ソの冷戦構造から始まって、どちらが先に月に人類を送りこめるかという国威発揚の歴史です。だから兄弟が月を目指し、日本人が初めて月面に降り立つ姿がいかに日本の観客の愛国心を揺さぶり、気持ちを高揚させるものか、ということがこの脚本で目指したところです。キャスティングは兄弟のミスマッチ感を出しつつ、映画にこだわっている小栗旬と岡田将生を起用しました。監督はテレビマンユニオンでドキュメンタリーを撮っていた新人・森義隆監督を抜擢。日本史上初の本格宇宙(兄弟)映画として、2012年5月の公開を目指して現在制作中です。
このように僕はジャンルを問わず多岐にやっているように見えますが、基本的には表現手法 は変われど「上手に生きられない人間」を描き続けているだけなんです。もし将来、皆さんが映画づくりに携わることがあれば、何か新しく面白いテーマで「上手に生きられない人 間」を描く作品づくりを共にできたらと思っています。
「friends もののけ島のナキ」
2011年12月17日公開
監督:山崎貴×八木竜一
出演:香取慎吾 山寺宏一 阿部サダヲ
「宇宙兄弟」
2012年5月公開
監督:森義隆 脚本:大森美香
出演:小栗旬×岡田将生
若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方 インデックス
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第1章 映画プロデューサーの仕事とは?
2011年11月28日 (月)
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第2章 流行っているものではなく、流行るものを見つける
2011年11月29日 (火)
-
第3章 映画『告白』大ヒットの舞台裏
2011年12月01日 (木)
-
第4章 上手に生きられない人間を描き続けたい
2011年12月02日 (金)
-
第5章 アニメは日本を救う? コンテンツ・ビジネスの内情
2011年12月05日 (月)
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第6章 今、何を描くべきか。それをお客さんにどう届けるか
2011年12月06日 (火)
-
第7章 キャッチコピーは戦略的に
2011年12月08日 (木)
-
第8章 たった1つの言葉が映画の成否を分ける
2011年12月09日 (金)
-
第9章 ネット時代だからこそ、リアルなイベントが大事
2011年12月12日 (月)
該当講座
若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方
~『告白』『悪人』『東のエデン』はこうして生まれた~
川村元気 (東宝株式会社 映画企画部 プロデューサー)
石井朋彦 (プロダクション・アイジー プロデューサー)
各界で活躍するイノベーティブな人物をゲストにお招きする『東洋経済インタラクティブセミナーシリーズ』。今回は、『告白』『悪人』『東のエデン』など次々にヒットを生み出し、日本映画界を代表する若手プロデューサーとして注目のお二人にお話を伺います。
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