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グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

辻野晃一郎氏が語る「真のグローバル企業」とは?

アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2011年10月31日 (月)

第9章 日本からGoogleみたいな会社は生まれない……か?

辻野晃一郎氏

辻野晃一郎: 私は日本が生んだソニーという世界企業と、Googleというアメリカが生んだネット企業で働く中で、日本に対して大きな危機意識を抱くようになりました。でも、今は社会インフラに非常に恵まれた時代です。だから私はこの時代のパワーをうまく使って、もう一度日本を復活させることはできないだろうかと考え、ALEXという会社を興しました。何かすぐれた技術やビジネスモデルがあって起業したのではありません。私が起業したモチベーションは、ひとえに日本に対する危機意識です。

この可能性に満ちあふれた時代に、日本を再び力強く世界に貢献していく国にするために、たとえ微力であったとしても自分に何ができるだろうかと考えたとき、その答えとして「そういう考えを本にしてまとめ」「その通り自分が行動して起業しよう」と思ったのです。ALEXではインターネットの力をフルに活用して、日本をリブランディンし、世界に再デビューさせるようなことを推進していきたいと思っています。

会社のサイトで人材を募集すると、「今、高校1年生なんだけど採用する気はありますか?」という、すごく挑戦的な文面で応募してくる子が何人もいます。島根県のある子は「お金を貯めて東京のオフィスに行く」と予告した後、本当に来ました。見た感じは普通の子どもでしたが「私は自分の人生を、この世から貧困をなくすために捧げます」と言うのです。その子は中学生のときにNPOの呼びかけでカンボジアに「ストリートチルドレンを自分が助けに行くんだ」という気持ちで行ったのですが、行ってみたらストリートチルドレンのほうがよっぽど自分より人間的にたくましかったので、打ちのめされて帰ってきたそうです。

「日本からGoogleみたいな会社は生まれない」とみんな言いますが、生まれないんじゃないんです。そういう志や能力やエネルギーを持った若者たちはたくさんいるんです。こういう若い人たちが持っている純粋なエネルギーを育てていくことが、我々の世代がやらなければいけないことだと思います。

未来は無限に広がっているし、チャレンジというのは別に年齢に関係ありません。おこがましいかもしれませんが、私は若い人たちと日々交わりながら、この国を少しでもよくすることに残りの自分の人生を使いたいと思っています。(終)

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グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

辻野晃一郎
新潮社


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パラダイム・シフトを生きる ~真のグローバル企業とは~

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辻野晃一郎 (アレックス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)

辻野 晃一郎(アレックス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)
ソニーとグーグルという時代を象徴する2つの企業において、「アナログからデジタルへ」、「ウォークマンからiPodへ」、「マイクロソフトからグーグルへ」という多くのパラダイムシフトが起きた時代の変化の渦中を駆け抜けてきた辻野氏に、真のグローバル企業にとって必要なことは何かを伺います。


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