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グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

辻野晃一郎氏が語る「真のグローバル企業」とは?

アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2011年10月24日 (月)

第5章 Google急成長の秘密

辻野晃一郎氏

辻野晃一郎: ここからは、私がインサイダーとして感じたGoogleについて、少しシェアさせていただきます。Googleの起源は、ラリーとサーゲイがスタンフォード大学で研究をしていた検索エンジンです。Googleは検索エンジンの会社と言われることが多いのですが、「クラウドの今と未来をつくっている」会社です。Googleはいろいろなことをやっていますが「クラウド」をキーワードとして考えると、一貫した戦略を持っていることがわかります。

クラウドの本質は何かというと「自分たちだけですべてをやる時代ではない」ということです。今はインターネットにつながっている不特定多数の人たちの力を借りて、世の中にインパクトを与えていく時代です。Googleは土壌を整備して開放する、そこに外部の人たちが種をまき、その種が育ってインターネットの世界がどんどん発展していく。それが例えばAndroidだったりGoogle Appsの世界だったりするわけです。

ソニーもそうでしたが、Googleもイノベーションを宿命としている会社です。Google急成長の秘密は、サイトに掲載されている「10 の事実」という企業理念に全部書かれていると私は思います。

その中には「スーツがなくても真剣に仕事はできる。」なんていう、ちょっと変わったものもありますが、これも実はイノベーションには欠かせない重要な項目です。日本企業は基本的には夏でもスーツ、ジャケットにネクタイですよね。ビジネスマナー的には重要かもしれませんが、イノベーションにはコミュニケーションが重要で、本音でのコミュニケーションにはスーツは邪魔になります。たかが、スーツですが、スーツだとどうしても身構えてしまうので、フランクなコミュニケーションを阻害してしまうのです。Googleの食堂では、ヨレヨレのTシャツにジーンズ姿のラリーが社員と一緒に並んでいたり、ふと見るとサーゲイが前にいたりして、そういうところで本当にフランクなコミュニケーションが常に行われています。

イノベーションには就業時間も重要です。クラウドを使えば仕事はどこにいてもできるわけですから、ナイン・トゥ・ファイブで時間を区切る必要はありません。肝心なのは「1日24時間365日を自分の好きなようにデザインして、ワークライフバランスを保ちながらどれだけ自分の創造性や生産性を上げるか」ということです。それが個人にとってはもちろん、企業全体の生産性を上げたりイノベーションを促進したりするためにも重要です。ですから、会社の中に息抜きの道具や環境を用意するのは非常に合理的なのです。最近はマイクロソフト社など、いろいろな企業が新しい時代の新しいオフィスをつくっていますが、Googleは先駆けてそういう職場環境を積極的にサポートしてきた企業だと思います。

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辻野晃一郎
新潮社


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辻野晃一郎 (アレックス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)

辻野 晃一郎(アレックス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)
ソニーとグーグルという時代を象徴する2つの企業において、「アナログからデジタルへ」、「ウォークマンからiPodへ」、「マイクロソフトからグーグルへ」という多くのパラダイムシフトが起きた時代の変化の渦中を駆け抜けてきた辻野氏に、真のグローバル企業にとって必要なことは何かを伺います。


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