記事・レポート
グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた
辻野晃一郎氏が語る「真のグローバル企業」とは?
アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2011年10月27日
(木)
第7章 ネットの時代に完璧主義は通用しない
辻野晃一郎: 最後のトピックとして「これから我々はどう考え、どう行動したらいいのか」ということについて、私が考えていることをお話しさせていただきます。今はものすごい勢いで変化し続けている時代です。変化を楽しみ、受け入れていかないと、国も企業も個人もあっという間に淘汰されてしまいます。
「企業のライフサイクル」というものを考えてみると、「創業期、成長期、安定期、衰退期」という4つのステージがあって、この大きな循環はどんな企業も避けて通るわけにはいかないと思います。例えば、ソニーは今年(2011年)で創業65年です。人の年齢でいうと、もう定年で、十二分に多大な社会貢献も果たしてきて、「お勤めご苦労様でした」というサイクルですよね。そういう企業に向かって「とにかく復活しろ」とか「再生しろ」とムチ打つのはむしろおかしいと思うのです。
問題は、いまだに日本のフラグシップがソニーやホンダなど、20世紀に誕生した会社だということです。これはつまり、日本では新陳代謝が全然起きていないということです。その対極にあるのがシリコンバレーで、インテルやAMDからヤフー、ヤフーからグーグルやフェイスブックへと、話題の企業や産業が常に新陳代謝しています。
Googleは設立が1998年なので、今年で創業13年になりますが、よくいわれるドッグイヤーで換算すると、ソニーの65年とGoogleの13年は同じぐらいの時間かもしれません。Googleはまだどんどん成長していますが、明らかに創業期ではありません。既に第二、第三の成長ステージに入り、大きくなって若干硬直化しているところもあるでしょう。Googleにしてもフェイスブックにしても、こういうサイクルからは逃れられないので、どれぐらいの時間でシフトしていくかということだと思います。
では、なぜ日本はインターネット登場後、グローバルな流れについていけなくなったのでしょうか。その理由は、日本の完璧主義にあると思います。日本は20世紀に製造業で大成功を収め、高品質な物を世界に輸出することで世界屈指の経済大国になりました。当時はオフラインの時代ですから、マーケットに出荷した後で商品に瑕疵が見つかると、全部工場に引き取って直して戻さなければいけなくなって経営を直撃します。ですのでオフラインの時代は出荷前に完璧な物に仕上げることに合理性があったし、それが重要でした。
しかしネットの時代は、走りながら改善していけばいい部分があります。特にGoogleのようにウェブ上のサービスを展開するのであれば、できるだけ早く不特定多数のインターネットユーザーに使ってもらうに越したことはないのです。クラウドの本質を活かし、不特定多数の人の力を借りて、自分たちが生み出したものをスピーディに改善していけばいいのです。
アフター・インターネットの時代は1にも2にもスピードです。どんなにいいことを考えても、スピードで負けたら勝てません。何か問題が起きたときに「抜本解決」とか「全社プロジェクトを立ち上げて横断的に」なんてやっていたら、取り残されていくだけです。
Googleでは「Find it.」というパッチワークをどんどんやります。プロダクツに問題があると、全社に「今週の金曜日の何時から何時までは、このプロダクツのバグをみんなで探してください」と呼びかけるんです。するとみんなが協力します。その後はエンジニアに「Fix it.」と呼びかけて、それらのバグを全部つぶしていくんです。これは抜本解決ではありませんが、当面の問題は解決できます。しかもスピーディだしフットワークもいい。問題解決も時間が大事なんです。
走りながらものをよくしていくのがネット時代だとすると、オフライン時代の価値観やモノづくりのスタイルとは全然違います。20世紀につくり上げた日本の大企業の強みが、今ネットの時代に足かせになっているというのが私の実感です。
今は愚直にいい物をつくっていても、それだけで食っていける時代ではないのです。とは言っても、日本の強みはモノづくりですから、モノづくりの強みを活かしながら、やり方を変えることが大事だと思います。スピードや生態系を意識したモノづくり、労働集約的な薄利多売の世界ではなく、高収益モデルとリンクしたスピーディなモノづくりなど、いろいろ解決方法はあるはずです。
「企業のライフサイクル」というものを考えてみると、「創業期、成長期、安定期、衰退期」という4つのステージがあって、この大きな循環はどんな企業も避けて通るわけにはいかないと思います。例えば、ソニーは今年(2011年)で創業65年です。人の年齢でいうと、もう定年で、十二分に多大な社会貢献も果たしてきて、「お勤めご苦労様でした」というサイクルですよね。そういう企業に向かって「とにかく復活しろ」とか「再生しろ」とムチ打つのはむしろおかしいと思うのです。
問題は、いまだに日本のフラグシップがソニーやホンダなど、20世紀に誕生した会社だということです。これはつまり、日本では新陳代謝が全然起きていないということです。その対極にあるのがシリコンバレーで、インテルやAMDからヤフー、ヤフーからグーグルやフェイスブックへと、話題の企業や産業が常に新陳代謝しています。
Googleは設立が1998年なので、今年で創業13年になりますが、よくいわれるドッグイヤーで換算すると、ソニーの65年とGoogleの13年は同じぐらいの時間かもしれません。Googleはまだどんどん成長していますが、明らかに創業期ではありません。既に第二、第三の成長ステージに入り、大きくなって若干硬直化しているところもあるでしょう。Googleにしてもフェイスブックにしても、こういうサイクルからは逃れられないので、どれぐらいの時間でシフトしていくかということだと思います。
では、なぜ日本はインターネット登場後、グローバルな流れについていけなくなったのでしょうか。その理由は、日本の完璧主義にあると思います。日本は20世紀に製造業で大成功を収め、高品質な物を世界に輸出することで世界屈指の経済大国になりました。当時はオフラインの時代ですから、マーケットに出荷した後で商品に瑕疵が見つかると、全部工場に引き取って直して戻さなければいけなくなって経営を直撃します。ですのでオフラインの時代は出荷前に完璧な物に仕上げることに合理性があったし、それが重要でした。
しかしネットの時代は、走りながら改善していけばいい部分があります。特にGoogleのようにウェブ上のサービスを展開するのであれば、できるだけ早く不特定多数のインターネットユーザーに使ってもらうに越したことはないのです。クラウドの本質を活かし、不特定多数の人の力を借りて、自分たちが生み出したものをスピーディに改善していけばいいのです。
アフター・インターネットの時代は1にも2にもスピードです。どんなにいいことを考えても、スピードで負けたら勝てません。何か問題が起きたときに「抜本解決」とか「全社プロジェクトを立ち上げて横断的に」なんてやっていたら、取り残されていくだけです。
Googleでは「Find it.」というパッチワークをどんどんやります。プロダクツに問題があると、全社に「今週の金曜日の何時から何時までは、このプロダクツのバグをみんなで探してください」と呼びかけるんです。するとみんなが協力します。その後はエンジニアに「Fix it.」と呼びかけて、それらのバグを全部つぶしていくんです。これは抜本解決ではありませんが、当面の問題は解決できます。しかもスピーディだしフットワークもいい。問題解決も時間が大事なんです。
走りながらものをよくしていくのがネット時代だとすると、オフライン時代の価値観やモノづくりのスタイルとは全然違います。20世紀につくり上げた日本の大企業の強みが、今ネットの時代に足かせになっているというのが私の実感です。
今は愚直にいい物をつくっていても、それだけで食っていける時代ではないのです。とは言っても、日本の強みはモノづくりですから、モノづくりの強みを活かしながら、やり方を変えることが大事だと思います。スピードや生態系を意識したモノづくり、労働集約的な薄利多売の世界ではなく、高収益モデルとリンクしたスピーディなモノづくりなど、いろいろ解決方法はあるはずです。
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辻野晃一郎新潮社
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該当講座
academyhills + Hills Life presents 知の人、知の時間
パラダイム・シフトを生きる ~真のグローバル企業とは~
辻野晃一郎 (アレックス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)
辻野 晃一郎(アレックス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)
ソニーとグーグルという時代を象徴する2つの企業において、「アナログからデジタルへ」、「ウォークマンからiPodへ」、「マイクロソフトからグーグルへ」という多くのパラダイムシフトが起きた時代の変化の渦中を駆け抜けてきた辻野氏に、真のグローバル企業にとって必要なことは何かを伺います。
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