記事・レポート
ロボットは人間になれるのか? ~ロボット、人間らしさの追求~
読みたい本が見つかる「カフェブレイク・ブックトーク」
カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2011年02月28日
(月)
第2章 鉄腕アトムより前にあった漫画ロボット
戦前の漫画ロボット
澁川雅俊: 私たち日本人にとって、漫画ロボットはなんといっても、『鉄腕アトム』でしょう。先頃、そのオリジナル版のすべてが復刻されて、ブーム再びという感があります。
アトムと手塚治虫に関する本は実にたくさんありますが、最近出された『アニメが「ANIME」になるまで—『鉄腕アトム』、アメリカを行く』(フレッド・ラッド、ハーヴィー・デネロフ著、久美薫訳、10年NTT出版)には、63年にTV放映が始まった『鉄腕アトム』が、その年の9月には米国で『Astro Boy』として放映され、それを機に多くの日本アニメがアメリカに輸出されていったことが書かれています。ですから漫画ロボットは、鉄腕アトムを通じて世界的な広がりをもったともいえます。
アトムと鉄人28号は戦後に出たのですが、実は日本の漫画ロボットはこの2つよりも前からありました。『日本ロボット創世記1920~1938』 (井上晴樹著、93年NTT出版)、『日本ロボット戦争記1939~945』(同著者、07年NTT出版)という本は、1920~45年に機械としてのそれはもとより、科学技術や漫画や小説や映画などで構想された国内外のすべてのロボットについて、膨大な図版を掲げながら克明に調べています。
これによると、日本人に限らず世界中が兵器としてのロボットに対して強い憧れを抱いていたことがわかりますが、川端康成や北原白秋などの文学者をはじめ、当時の日本人がロボットをどのように見たかについて論じています。私の記憶にあるタンクタンクローというキャラクターについても記されていました。また著者は、世界が大戦争への途を辿っていた時代に生まれ、そして多感な少年期を過ごした手塚治虫が鉄腕アトムを後の平和な時代に生み出すまでの経緯についても触れています。
太平洋戦争での敗戦を契機にして日本人のメンタリティが、戦後どのように形成されてきたのかを小説や映画、そしてマンガ・アニメなどを素材として考察している『イメージとしての戦後』(坪井秀人・藤木秀朗編著、10年青弓社)も、戦後、日本人のロボットに対するイメージが手塚によって先鞭をつけられたことを讃歌しています。
ロボットは人間になれるのか? ~ロボット、人間らしさの追求~ インデックス
-
第1章 はじめに—「ロボット」、その名の起こり
2011年02月25日 (金)
-
第2章 鉄腕アトムより前にあった漫画ロボット
2011年02月28日 (月)
-
第3章 人形とロボット
2011年03月01日 (火)
-
第4章 夢を実現するロボット・テクノロジー
2011年03月02日 (水)
-
第5章 人間らしさの追求
2011年03月03日 (木)
-
第6章 未来ロボット
2011年03月04日 (金)
-
第7章 フィクショナル・ロボット
2011年03月07日 (月)
-
第8章 おわりに——個性のない人間、個性を備えたロボット
2011年03月08日 (火)
注目の記事
-
11月26日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年11月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
11月26日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 01月30日 (木) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第2回。映画『ビリギャル』の主人公のモデルで教育家として活動する小林さやかさんと、元陸上選....
小林さやかと為末大が語る『人間の学び・成長のプロセスとマインドセット』