記事・レポート

福原義春氏が語る「未来をつくるイノベーションのための文化資本」

VISIONARY INSTITUTE - 2010 Seminar

BIZセミナー文化教養
更新日 : 2011年02月16日 (水)

第3章 カネやモノだけでは、心は満たされない

福原義春氏

福原義春: 文化資本というのは会社だけでなく、あらゆる組織、例えば大学や国家にも十分に使える概念です。「どうすればよりよい未来社会を創造することができるか」を考えるために、まず、現在の社会情勢、現状を認識しておきたいと思います。

現在の日本は、ご承知のように経済的には成長性がほとんどありません。とはいえ国民生活の水準は不自由のないレベルになっているとは思います。格差の問題はありますが、平均として見ると生活水準は向上し、安定しています。しかし、あらゆる人が何か充ち足りない感じを抱いています。これは一体どういうことなのでしょうか。

私の友人でアメリカの社会学者、ダニエル・ヤンケロビッチ博士は1982年に『NEW RULES(ニュールール)』という本を出しました。「豊かさの大逆転」という章の中で、彼は「私たちはいまや質の劣る、高水準の暮らしを強いられている」と書いています。その例として、「はじめは自己を生かすために家の外で働こうと考えた女性たちは、今では住宅ローンを支払うために働き続けなければならなくなっている」と、現代生活について厳しい批判をしているのです。

物質文明や技術文明は、20世紀でまさに頂点に達しました。しかし人間を豊かにしてくれるはずの機械や技術に、逆に人間が使われています。IT技術が便利だということに疑いはないのですが、生活の中では携帯やPCに時間を奪われ、支配されてしまっているのです。

日本は自分を幸せだと感じる国民が、先進国の中でかなり少ないという統計もあります。人間というのは、科学技術の進歩や合理的な経済行為の追求だけですべてが満たされるわけではないのです。カネやモノだけではない精神的な豊かさ、あるいは幸せも求めなければいけないと、みんな気づき始めているのです。

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該当講座

第4回 未来をつくるイノベーションのための文化資本
福原義春 (株式会社資生堂 名誉会長)

福原義春(㈱資生堂 名誉会長)

未来の日本創造になくてはならないこと、イノベーションのために私達が一度立ち止まって考え抜かなくてはならない、私達の文化資本の本質についてお話いただきます。


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