記事・レポート

時代を読み、世界を俯瞰して、フロンティアを拓く場へ

シナリオはない。人と場が相互に働きかけ、共に進化する。
ー平河町ライブラリー 開館記念座談会よりー

更新日 : 2011年01月18日 (火)

第9章 世界を俯瞰して観る場

平河町ライブラリーオープン記念座談会

高橋潤二郎: それに関連して、最近、ショッキングな本を読みました。

『ものづくり革命~パーソナルファブリケーションの夜明け~』(ニール・ガーシェンフェルド著)。著者はMITビット•アンド•アトムズセンターの所長です。彼は大型コンピューターと連結してナノテクノロジーレベルの工作機械をつくり、それを学生に開放して「パーソナル・ファブリケーター」と名付けた。「あと20年後にはパーソナル・コンピューターと同じように、パーソナル・ファブリケーターが個人用になる」と言っています。

これができたら、すごい変化とチャンスが来る。こうした発想に比べると、日本のものづくりは後ろ向きです。

竹中平蔵: パソコンのようにパーソナル・ファブリケーターが広がれば、スパイキィな人には大変なチャンスがきますね。でも、日本では会社を辞めて挑戦する人は少ない。米倉さん、これ、どうしたらいいんでしょうね。やはり成功事例をつくっていくしかないのかな。

米倉誠一郎: もう、僕らが「難しい、難しい」って言わないほうがいいかもしれません(笑)

竹中平蔵: 確かにそうかもしれませんね。

米倉誠一郎: 会社辞めなくても同時並行してやってしまえばいい。ITもあるし。

高橋潤二郎: それはいい。「辞めないでやれ」。

米倉誠一郎: そう、「方法はいろいろある」と。

竹中平蔵: なるほど、やりかたはいろいろある。それに気づくためには物事を俯瞰して観る、距離をおいて観ることが重要ではないでしょうか。

ライブラリーには物事を俯瞰して観るという機能もある。会社で悩んでいるとき、ここに来る。エンカレッジされて「なんだ、こんな悩みなんてたいしたことじゃないな」と気づく。それが重要だと思う。

いま、日本で議論していることの多くは、世界のなかで距離をおいてみるととるに足らない。私たちが本来進むべき道は、世界を俯瞰してみれば自ずと見えてきます。

私は、日本人は世界を俯瞰して建設的な危機感を持たなければいけないんじゃないかと思います。近々中国にGDPで抜かれるのはたいしたことではありませんが、たぶんこのままいくと、8年後、中国のGDPは日本の2倍になる。そのとき日本の生活水準はどうなるのか。そういう健全な問題意識は持っておいたほうがいい。

世界を俯瞰して物事を考え、自分の人生を考えるにはこうした場と時間が必要です。毎日が会社と自宅の繰り返しではなかなかできませんからね。

高橋潤二郎: 「世界を俯瞰して観る場」にするためにも、ここでは新しい環境を常に提供しなければなりませんね。

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