記事・レポート

内田和成の『論点思考』
~問題設定の技術~

東洋経済提携講座より

ビジネススキルキャリア・人
更新日 : 2010年10月26日 (火)

第6章 分析をしたからといって、本当の問題にたどり着くことは無い

内田和成氏

内田和成: さて、四つステップの具体的な行動とはどういうものでしょうか。ここから先が、私がコンサルタントとしては相当変わっていると言われる所以ですが、あまりロジカルシンキングは使わない方がいいというのが持論です。世の中では、ビジネスパーソンはロジカルシンキングをしなければいけないと言われています。子どもではないのだから、思いついたことを口にしてはいけないとか、理屈に合わないことを主張してはいけないとか。物事をロジカルに考えろと世の本には書いてあります。しかし私の経験では、それでは問題を発見できない。問題発見はもっと直感的なものであり、右脳的なものであり、感覚的なものであると思うのです。ただし、これだけでは「だから、皆さん経験を積んでください。はい、さようなら」となってしまうので、どうやってその勘を働かせるのか、どこに自分の「これだと思う針」を向けていくのか、少し因数分解して語ってみましょう。

ある会社が業績不振だというときに、その理由を分析しようと思えばいろいろな方法があります。例えば財務諸表を分析すると、在庫や固定資産、工場の資産が稼働していないことが分かります。あるいは粗利が少な過ぎる、コストが高い、価格が安過ぎるのではないかなど、いろいろな分析ができます。もしくは工場に行ってみると、そこかしこに在庫の山がある。これは、在庫管理がおかしいのではないかと推測できますね。あるいは従業員がぶらぶらしている。これは人間の稼働が悪いのではないかなど、調べ出すと幾らでも分析できます。そのような定量的な分析だけではなくて、例えば社員のモチベーションが高いかどうか測ってみようとか、あるいはお客さんの声はどうだろうかなど、アンケートやインタビューを行えば、山ほど定性的な分析ができます。それぞれのアプローチを否定するわけではないですが、そんなものを100、200やったからといって本当の問題にたどり着くことはまず無いというのが私の信念です。SWOT分析……ストレングス、ウィークネス、脅威と機会でしたっけ。そんなことをやったって問題発見できませんと、私は思うのです。
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該当講座

内田和成の『論点思考』

~BCG流 問題設定の技術~

内田和成の『論点思考』
内田和成 (早稲田大学 名誉教授)

内田 和成(早稲田大学ビジネススクール教授)
今回講師としてお越しいただく内田氏は、ボストンコンサルティンググループの前日本代表であり、「世界でもっとも有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出されるなど、世界を舞台に活躍されています。
話題の近著『論点思考』を元に、内田氏から直接、実践的な「問題設定の技術」について学びます。


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