記事・レポート

ロボットクリエイター高橋智隆氏が描くサイエンスの可能性

夢のゴールは掃除ロボットや介護ロボット……じゃない!?

更新日 : 2010年08月06日 (金)

第2章 きっかけは『鉄腕アトム』

高橋智隆氏

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高橋智隆: 「CHROINO(クロイノ)」をベースに商品になったものがあります。京商というラジコンをつくっているメーカーから、「MANOI(マノイ)」というロボットが発売されています。ドライバーで自分で組み立ててつくる、趣味のロボットです。

「電池のコマーシャルにロボットを使いたい」というお話もありました。それで「EVOLTA」君というキャラクターを考えて、グランドキャニオンの絶壁にロープを張って登らせました。エボルタ乾電池のCMですね。途中で雨が降ったり、ヒョウが降ったり、部品が壊れたり、いろいろありましたが、滞在期間1週間の最終日に、6時間46分かけて、何とか530メートルを登り切りました。

登山用のロープをチビチビ登らせたのですが、滑車をつければ、たぶんビューンと10分ほどで登れます。でもこの辛気臭い動き、人間が登るのと似たような動きがいいようです。電池という商品はどれも同じ形なので、こういうキャラクターを思い浮かべてもらうことで、お客さんに手にとってもらいやすくなるのだそうです。

ロボットをつくるようになったきっかけは、『鉄腕アトム』でした。この漫画にはロボットをつくるシーンがたくさん登場するんです。ほかの漫画では、ロボットは未来からやってきたか、宇宙から飛んできたという設定で、つくるシーンというのはあまり出ていませんでした。たぶん作家さんは、ロボットのつくり方や構造がわからなかったので、あまり触れたくなかったのだと思います。

ところが手塚治虫さんには、医学の知識がありました。だから医学の知識を応用したシーンがたくさん描かれていました。それを見て、「あっ、ロボットというのは人がつくるものなんだ。そんなロボット科学者になりたい」と思ったのです。

ところがその後、興味がコロコロ変わり、ロボットのことなどすっかり忘れて、魚釣りに明け暮れたり、モーグル・スキーにどっぷり漬かったりしました。そうして遊んでいるうちに大学生になり、立命館大学の産業社会学部という文系の学部に進みました。当時はバブルで、絵画でも、土地でも、スーパーカーでも、物を買って右から左に動かすと不思議とお金が生まれる時代でした。「一からコツコツつくるのなんて、ばからしい」という風潮があったように思います。

けれど卒業するころにはバブルは終わっていて、考え直してみたら、やっぱりものづくりを仕事にしたいと思い、就職活動ではメーカーを受けました。でも一番行きたかったところに落ちてしまったので、予備校に1年間通った後、京大工学部に入り直しました。そのとき、ものづくりの究極形ともいえるロボット、また、自分の夢の原点でもあったロボットをやろうと決めたのです。

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第1回 天才ロボットクリエーターが描くサイエンスの可能性

「最先端の知」シリーズ
高橋智隆 (ロボットクリエイター/(株)ロボ・ガレージ代表取締役)

高橋智隆(ロボットクリエイター)
単3電池2本でアメリカのグランドキャニオンを登り、過酷なル・マン24時間レースに挑戦した「エボルタ」の開発者である高橋智隆氏に、ロボット製作までの経緯や、今後のサイエンスの可能性についてお話いただきます。


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