記事・レポート

ロボットクリエイター高橋智隆氏が描くサイエンスの可能性

夢のゴールは掃除ロボットや介護ロボット……じゃない!?

更新日 : 2010年09月16日 (木)

第9章 専門家のアイディアより、みんなの遊び心が大切

高橋智隆氏

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●●高橋智隆: 今まで日本は安くていいものをたくさんつくって、それで成長してきました。でも、それは中国でできてしまいます。じゃあ、日本は何をしたらいいかといえば、やはり新しい技術やコンセプトの開発、デザイン、ブランディングなどをやっていかなければいけないんです。そのためには、遊び心が大切になります。

最近の新しいサービス、ツイッターや世界カメラって、いかにも遊びじゃないですか。「それが生活の中で必要だったから」とか、「ないと不便」とか「身を守る」とか、そういう理由でできたわけではないですよね。遊びを思いついた、それに賛同してくれる人がいっぱいた、それで市場が生まれた。そういうスタイルです。

ロボットも同じで「少子高齢化問題の解決」というような発想ではなく、「ロボットが居たら、こんな面白いことができるんじゃないか」とか、「こんなロボットが居たら、なんとなく新しいことが起きそう」とか、そういうカジュアルな発想で生まれてくるんじゃないかと思います。

そういう意味で“ものづくり”の形も変わっていくと思います。知的労働としてのものづくりというのがあるのではないかと思うのです。実は、ロボットは今でもハードウェアが一番難しい部分なんです。コミュニケーションやデザインなどの話をしましたが、そういうことに取り組むレベルにロボットのハードウェアがまだまだ到達していないんです。

ロボットづくりは、人間とのコミュニケーション方法やライフスタイルなど、いろいろなものを全部ひっくるめてやっていかなければいけないんです。それには文化の蓄積や幅広い産業の発展といった土壌が必要になってくるので、ポンと中国などの海外に移ってしまうということは当分ないと思います。しばらくの間は、日本はそこの部分で稼げると思います。

——これまで「ロボットが居る未来」を熱く語ってきましたが、今、ロボットが要るかといったら、正直、要らないですよね。私も要りません(笑)。でも15年前、20年前は、パソコンも携帯電話も要らなかったですよね。別に欲しいとも思わなかったし、どう使うかもわからなかったじゃないですか。それが今、こうして暮らしの中に入ると、手離せないものになっています。それは生活の一部になっているからです。

ロボットも同じだと思います。今は要らないけれど、将来、ロボットと一緒に暮らすようになったら手離せないものになっているでしょう。でも、ロボットがない今が不幸なわけではありません。パソコンがなかったころの我々が不幸だったわけでも、不便でしょうがなかったわけでもないし、今、電気が通っていない国の人たちが不幸かというと、そうではないですよね。それと同じで、今の我々はロボットがなくても平気だけれど、ロボットが入ってきたら暮らしの一部になって、手離せなくなるだろうということです。

最後に、皆さんにお願いです。ロボットを使ったどういうビジネスがあるのか、あるいはどういうロボットが要るのか。ロボットと何かを融合させて新しいアイディアを生んでいただきたいと思います。

将来、いろいろなことが全てロボットにかかわってきます。それを我々のようなロボットの専門家が考えることは、不可能なんです。皆さんのお仕事や学校での勉強や、それこそ日常生活とロボットを組み合わせる——そうすることで、我々には思いつかないアイディアが出てくるはずなんです。そういうものがどんどん出てくることで、本当に一家に一台ロボットの時代が到来すると思います。

ロボットが現在進行形で進化していて、何年か後には普及している——今は、そういう一番エキサイティングな時期です。そこにはいろいろな楽しみやビジネスチャンスがあるはずです。きょうの話をきっかけに、ロボットのことを心の片隅にでも留めていただければ幸いです。ありがとうございました。(終)

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第1回 天才ロボットクリエーターが描くサイエンスの可能性

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高橋智隆 (ロボットクリエイター/(株)ロボ・ガレージ代表取締役)

高橋智隆(ロボットクリエイター)
単3電池2本でアメリカのグランドキャニオンを登り、過酷なル・マン24時間レースに挑戦した「エボルタ」の開発者である高橋智隆氏に、ロボット製作までの経緯や、今後のサイエンスの可能性についてお話いただきます。


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