記事・レポート
環境とビジネスは両立するか?
~答えはYes。具体策を提示します~
更新日 : 2009年12月15日
(火)
第4章 良い環境規制と、悪い環境規制の実例
三橋規宏: 「適正に設計された環境規制」の実例として、日本版マスキー法があります。これは70年代の終わりに実施されたガソリン車に対する排ガス規制で、一酸化炭素、窒素酸化物などの排出量をそれまでの10分の1にするというものです。この厳しい規制を乗り越えた日本車は、80年代以降の世界市場を席巻していきました。
一方、排ガス規制対策を怠ったアメリカ車は、現在惨憺たる状況です。アメリカでマスキー法ができたのは70年の初めですが、このときアメリカの自動車メーカーはロビー活動を行い、法律の適用実施期間を先延ばしして、何ら努力をしませんでした。それがこういう結果をもたらしたのです。
日本でも、排ガス規制を怠ったディーゼル車は国際競争力を失ってしまいました。ディーゼル車は商業車が中心であるため、厳しい排ガス規制を実施すると経済が成り立たなくなってしまうということで、経済産業省がディーゼル車に対しては、厳しい規制をしなかったのです。
しかしヨーロッパはディーゼル車に対しても、ガソリン車並みの厳しい規制を実施しました。その結果、ディーゼル車の競争力は強化され、乗用車の約半分を占めています。ディーゼル車はガソリン車よりCO2の排出量が2割程度少ないといわれており、ヨーロッパでは、低公害車としてディーゼル車の開発に力を入れています。
海外での成功例を1つだけ挙げると、2000年に制定されたドイツの再生可能エネルギー法があります。ドイツ政府は固定価格買取制度を導入し、「化石燃料でつくられた通常の電気代よりも高い価格で、風力発電や太陽光発電でつくられた電気を購入すること」を電力供給会社に義務づけました。しかも「20年間は同じ価格で買い続ける」ことも義務づけたのです。そのかわり、化石燃料でつくった電気よりも高く買った分、電力供給会社は末端の電気代に上乗せできるようになっています。
これによってドイツでは風力発電や太陽光発電が爆発的に伸びました。太陽光パネルの発電量では2004年に単年度でドイツが日本を上回り、翌年の2005年には累積でもドイツが日本を上回り、ドイツが太陽光発電の世界一になったのです。
「不適正」に設計された環境規制の実例になりますが、日本の場合は太陽光発電に対して、ドイツのような価格メカニズムを利用しないで補助金制度を導入しました。1994年度から導入したのですが、2005年度にはかなり普及したということで廃止しました。すると太陽光パネルの売上が落ち、ドイツに世界一の座を奪われてしまったのです。
補助金は初期需要をつくるためには必要な政府の政策だと思います。しかし、補助金は当然お金がかかります。ドイツの場合は「割高の価格で買う」という制度設計をしただけで、各家庭が太陽光パネルをつけるための補助金は一切出していません。市場メカニズムを活用すれば、需要は爆発的に伸びるのです。
補助金制度で新規企業を育てるというのは社会主義の考え方です。初期需要に対する補助金の役割は否定しませんが、補助金だけで上手くいくわけではなく、ある程度初期需要ができた後では、市場メカニズムを積極的に使っていくことが必要なのです。
もう1つ「不適正」に設計された環境規制の実例として、日本ではRPS法という新エネルギーを推進するための法律が2002年にできました。これは電力会社が「年間に供給する電力の一定割合、自然エネルギーを購入しなくてはいけない」という法律ですが、その購入割合の義務量は、20010年で1.35%です。これでは話になりません。
低炭素社会に向けて、価格メカニズムの積極的な活用が必要です。日本は京都議定書に従って、2012年までに90年比で6%温室効果ガスを削減しなければなりませんが、政府は何もやっていません。日本経団連の「自主行動計画」や「チーム・マイナス6%」などは、どれも企業や国民の努力によって達成しようというものですが、それで6%削減なんて、とても達成できません。
環境税の導入や、キャップ・アンド・トレード方式による排出権取引、またエネルギーについてはドイツやスペインが実施しているような本格的な固定価格買取制度、バッズ課税・グッズ減税など経済的な手法を積極的に活用していくことが必要だと思います。
一方、排ガス規制対策を怠ったアメリカ車は、現在惨憺たる状況です。アメリカでマスキー法ができたのは70年の初めですが、このときアメリカの自動車メーカーはロビー活動を行い、法律の適用実施期間を先延ばしして、何ら努力をしませんでした。それがこういう結果をもたらしたのです。
日本でも、排ガス規制を怠ったディーゼル車は国際競争力を失ってしまいました。ディーゼル車は商業車が中心であるため、厳しい排ガス規制を実施すると経済が成り立たなくなってしまうということで、経済産業省がディーゼル車に対しては、厳しい規制をしなかったのです。
しかしヨーロッパはディーゼル車に対しても、ガソリン車並みの厳しい規制を実施しました。その結果、ディーゼル車の競争力は強化され、乗用車の約半分を占めています。ディーゼル車はガソリン車よりCO2の排出量が2割程度少ないといわれており、ヨーロッパでは、低公害車としてディーゼル車の開発に力を入れています。
海外での成功例を1つだけ挙げると、2000年に制定されたドイツの再生可能エネルギー法があります。ドイツ政府は固定価格買取制度を導入し、「化石燃料でつくられた通常の電気代よりも高い価格で、風力発電や太陽光発電でつくられた電気を購入すること」を電力供給会社に義務づけました。しかも「20年間は同じ価格で買い続ける」ことも義務づけたのです。そのかわり、化石燃料でつくった電気よりも高く買った分、電力供給会社は末端の電気代に上乗せできるようになっています。
これによってドイツでは風力発電や太陽光発電が爆発的に伸びました。太陽光パネルの発電量では2004年に単年度でドイツが日本を上回り、翌年の2005年には累積でもドイツが日本を上回り、ドイツが太陽光発電の世界一になったのです。
「不適正」に設計された環境規制の実例になりますが、日本の場合は太陽光発電に対して、ドイツのような価格メカニズムを利用しないで補助金制度を導入しました。1994年度から導入したのですが、2005年度にはかなり普及したということで廃止しました。すると太陽光パネルの売上が落ち、ドイツに世界一の座を奪われてしまったのです。
補助金は初期需要をつくるためには必要な政府の政策だと思います。しかし、補助金は当然お金がかかります。ドイツの場合は「割高の価格で買う」という制度設計をしただけで、各家庭が太陽光パネルをつけるための補助金は一切出していません。市場メカニズムを活用すれば、需要は爆発的に伸びるのです。
補助金制度で新規企業を育てるというのは社会主義の考え方です。初期需要に対する補助金の役割は否定しませんが、補助金だけで上手くいくわけではなく、ある程度初期需要ができた後では、市場メカニズムを積極的に使っていくことが必要なのです。
もう1つ「不適正」に設計された環境規制の実例として、日本ではRPS法という新エネルギーを推進するための法律が2002年にできました。これは電力会社が「年間に供給する電力の一定割合、自然エネルギーを購入しなくてはいけない」という法律ですが、その購入割合の義務量は、20010年で1.35%です。これでは話になりません。
低炭素社会に向けて、価格メカニズムの積極的な活用が必要です。日本は京都議定書に従って、2012年までに90年比で6%温室効果ガスを削減しなければなりませんが、政府は何もやっていません。日本経団連の「自主行動計画」や「チーム・マイナス6%」などは、どれも企業や国民の努力によって達成しようというものですが、それで6%削減なんて、とても達成できません。
環境税の導入や、キャップ・アンド・トレード方式による排出権取引、またエネルギーについてはドイツやスペインが実施しているような本格的な固定価格買取制度、バッズ課税・グッズ減税など経済的な手法を積極的に活用していくことが必要だと思います。
関連書籍
よい環境規制は企業を強くする —ポーター教授の仮説を検証する—
三橋規宏海象社
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該当講座
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従来は相反すると考えられてきた「環境と経済」をどのようにすれば両立させられるのか、三橋氏と竹中理事長にお話いただきます。
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