記事・レポート
環境とビジネスは両立するか?
~答えはYes。具体策を提示します~
更新日 : 2009年11月24日
(火)
第2章 環境保護とビジネスは両立できる
三橋規宏: 石油に支えられた20世紀後半の経済発展は「膨張の時代」と定義できると思います。1950年~2000年の半世紀だけで、人類が誕生してからこれまでに使ってきた資源の8割以上を使ってしまいました。資源収奪による製品開発、環境破壊が行われていたわけです。これは人類の長い歴史から見れば異常な時代で、こんなことが続くはずがありません。
これまでの50年と同じように世界が今後50年発展を続けたら、計算上では2050年の世界人口は146億人、GDPは250兆ドル、石油消費量は2,017億バレルになります。しかし、こんなことは物理的にあり得ません。石油は今のままで使い続ければ、2040年ぐらいにはなくなりますから、2050年に2,017億バレルの石油など地球上に存在しないのです。小麦については、世界の人口を養うのに必要な量をつくれる土地がありません。
つまり、1950年~2000年に見られた高度経済成長が、2000年~2050年にも同じように続くかというと、物理的に無理だということです。
では、今回の不況を克服するにはどうすればいいかというと、低酸素社会を実現させるための新しい需要、新しい投資を顕在化させることです。そのためには環境とビジネスを両立させることが必要でそのためのまたとないチャンスが到来しているのです。
「環境とビジネスを両立させることなんてできるのか?」と、皆さん疑問をお持ちになると思うのですが、スウェーデンではそれをすでに実現させています。温室効果ガスの排出量を削減させながら、安定した経済成長を実現させることをデカップリングと言います。スウェーデンでは1990年比で2006年のGDPは44%も増えましたが、温室効果ガスは8.7%マイナスになりました。話しが前後しますが、デカップリングというのは、「引き離し」という意味です。経済成長とCO2の排出量を引き離す、そういう経済をスウェーデンは政府が積極的な制度設計をしてつくり上げたのです。
一方日本はどうかというと、1990年比で2005年のGDPは15%増ですから、年率ベースでは1%程度の成長です。しかし温室効果ガスは7.8%も増えています。非常に低い経済成長率にもかかわらず、をたくさんのCO2を排出するという非常にまずい経済パターンになっています。
「経済成長を目指せば、どうしてもCO2が出てしまう」と言う方がいらっしゃいますが、実際には違います。スウェーデンのベクショー市では、は1779年には暖房・給湯用のエネルギーを100%石油に依存していましたが、2000年には95%以上をバイオマスエネルギーに転換しました。つまり約15年で石油依存をバイオマス中心のエネルギーに転換させることに成功しました。
どのように実現したかというと、さまざまな環境税を活用したのです。バイオマスの原価は1kWhあたり約10円で、エネルギーの中で最も安くなっています(※編注:1クローナ10円で計算)。石油やLPガスや天然ガスなどには「炭素税」や「エネルギー税」、「硫黄税」など、さまざまな課税をし、価格を引き上げました。その結果、例えば石油は約40円、LPガスは40円以上します。4倍の価格差があれば、化石燃料など使わないでバイオマスを使いますよね。つまり、課税を通してエネルギー消費構造を大胆に変えたのです。
このように、環境とビジネスを両立させるためにはそれを可能にするような制度設計が必要です。太陽光発電や風力発電、バイオマス発電の新エネルギーは、そのままでは価格面で石油に対抗できません。対抗できるようにするためには、スウェーデンがやったように環境税の導入によって価格で調整するのがわかりやすいし、効果もあります。そういう必要な対策を日本は避けてきたのです。政治に低炭素社会を目指すという強い意思があるかどうかがいかに重要であるかがわかります。
これまでの50年と同じように世界が今後50年発展を続けたら、計算上では2050年の世界人口は146億人、GDPは250兆ドル、石油消費量は2,017億バレルになります。しかし、こんなことは物理的にあり得ません。石油は今のままで使い続ければ、2040年ぐらいにはなくなりますから、2050年に2,017億バレルの石油など地球上に存在しないのです。小麦については、世界の人口を養うのに必要な量をつくれる土地がありません。
つまり、1950年~2000年に見られた高度経済成長が、2000年~2050年にも同じように続くかというと、物理的に無理だということです。
では、今回の不況を克服するにはどうすればいいかというと、低酸素社会を実現させるための新しい需要、新しい投資を顕在化させることです。そのためには環境とビジネスを両立させることが必要でそのためのまたとないチャンスが到来しているのです。
「環境とビジネスを両立させることなんてできるのか?」と、皆さん疑問をお持ちになると思うのですが、スウェーデンではそれをすでに実現させています。温室効果ガスの排出量を削減させながら、安定した経済成長を実現させることをデカップリングと言います。スウェーデンでは1990年比で2006年のGDPは44%も増えましたが、温室効果ガスは8.7%マイナスになりました。話しが前後しますが、デカップリングというのは、「引き離し」という意味です。経済成長とCO2の排出量を引き離す、そういう経済をスウェーデンは政府が積極的な制度設計をしてつくり上げたのです。
一方日本はどうかというと、1990年比で2005年のGDPは15%増ですから、年率ベースでは1%程度の成長です。しかし温室効果ガスは7.8%も増えています。非常に低い経済成長率にもかかわらず、をたくさんのCO2を排出するという非常にまずい経済パターンになっています。
「経済成長を目指せば、どうしてもCO2が出てしまう」と言う方がいらっしゃいますが、実際には違います。スウェーデンのベクショー市では、は1779年には暖房・給湯用のエネルギーを100%石油に依存していましたが、2000年には95%以上をバイオマスエネルギーに転換しました。つまり約15年で石油依存をバイオマス中心のエネルギーに転換させることに成功しました。
どのように実現したかというと、さまざまな環境税を活用したのです。バイオマスの原価は1kWhあたり約10円で、エネルギーの中で最も安くなっています(※編注:1クローナ10円で計算)。石油やLPガスや天然ガスなどには「炭素税」や「エネルギー税」、「硫黄税」など、さまざまな課税をし、価格を引き上げました。その結果、例えば石油は約40円、LPガスは40円以上します。4倍の価格差があれば、化石燃料など使わないでバイオマスを使いますよね。つまり、課税を通してエネルギー消費構造を大胆に変えたのです。
このように、環境とビジネスを両立させるためにはそれを可能にするような制度設計が必要です。太陽光発電や風力発電、バイオマス発電の新エネルギーは、そのままでは価格面で石油に対抗できません。対抗できるようにするためには、スウェーデンがやったように環境税の導入によって価格で調整するのがわかりやすいし、効果もあります。そういう必要な対策を日本は避けてきたのです。政治に低炭素社会を目指すという強い意思があるかどうかがいかに重要であるかがわかります。
関連書籍
よい環境規制は企業を強くする —ポーター教授の仮説を検証する—
三橋規宏海象社
環境とビジネスは両立するか? インデックス
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第1章 世界同時不況が示した、「資源収奪型経済の終焉」
2009年11月11日 (水)
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第2章 環境保護とビジネスは両立できる
2009年11月24日 (火)
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第3章 厳しい環境規制は、企業にとってプラスになる
2009年12月03日 (木)
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第4章 良い環境規制と、悪い環境規制の実例
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第7章 新しいルールのつくり方
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第9章 「2050年までに温暖化ガス半減」は難しいことではない
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該当講座
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従来は相反すると考えられてきた「環境と経済」をどのようにすれば両立させられるのか、三橋氏と竹中理事長にお話いただきます。
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