記事・レポート
日本政治の行方
ジェラルド・カーティス教授による、日本の政治シリーズ 第3回
更新日 : 2009年08月26日
(水)
第5章 新総理は、あまり早くオバマ大統領と会わないほうがいい
ジェラルド・カーティス: 選挙後、普通は2、3週間経ってから国会を開き、投票で総理大臣が決まり、それで内閣が組閣されるのですが、民主党が勝てば、鳩山さんはおそらく1週間ぐらいで国会を開いて総理に指名され、すぐに内閣を発表するでしょう。
彼が総理大臣になれば、9月の国連総会で演説をすることになりますが、おそらくその前にワシントンに行ってオバマさんに会って、それから国連総会で演説をする、その準備をもうしているでしょう。
でも、私は、あまり早くオバマさんに会わない方がいいと思います。というのは、今まで新しい人が日本の総理大臣になると、まずワシントンに「よろしくお願いします」と挨拶に行きましたが、そういう時代はもう終わっているからです。
麻生さんはオバマさんが大統領就任後、初めて議会演説をするという日に、わざわざワシントンに飛んで行って1時間あまりオバマさんと話をして東京に戻って来ました。昼食も何もありませんでしたし、後で聞いたら、中身のある話は何もなかったそうです。なぜ行ったのかというと、「会いたかったから会いに行った」のです。
この前、民主党の幹部が「早く誰かをワシントンに送って、オバマ政権とのパイプをつくらなければ」と言っていました。「パイプをつくる」というのは非常に日本的な発想なので、私が「ワシントンに何を言いに行くのですか?」と聞いたら、びっくりした顔で、「いや、別に何かを言いに行くんじゃなくて、聞きに行くんだ」と言うのです。
今、オバマさんは、パキスタン、アフガニスタン、パレスチナとイスラエル、北朝鮮、金融、医療保険の抜本改革などなど、様々な問題を抱えています。そんなときに、まだ政権をとってもいない日本の政党の代表がワシントンに行って、「話を聞きに来ました。よろしくお願いします」と言ったら、オバマさんを苛立たせるだけです。オバマさんは、会うのは時間の無駄だと思っているはずです。
日本の総理大臣がワシントンに行くなら、日本側の方から「アジェンダ・セッティングをしたい」という気持ちでたくさん提案を持って行き、オバマさんに宿題をさせて返事を待つ——そうして初めて新しい意味での日米関係ができると私は思います。でも、やはり日本だから「いきなり国連に行って、そこで最初に会うのは失礼なのではないか。まずはワシントンに行って挨拶をして、それからニューヨークに行くのが礼儀ではないか」と言われると、なかなか反論できません。
ただ、少なくとも何か1つ提案した方がいい。そんなに難しい話ではなく、何かできること、例えば「中国の環境問題は大きいから、日米中の協力でこういうことをやろう」といったことでもいいんです。
日本がもっと積極的にアジェンダ・セッティングをしないと忘れ去られます。というか、無視されます。日米関係が悪くなるというよりも、「日本のことは無視して、中国や韓国、フランスやドイツと話した方が効果的だ」と思われてしまいます。すでにそうなっています。民主党が日米関係を重視するというなら、鳩山さんは今まで通りやるのではなく、新しい形で、21世紀にふさわしいことを提案すべきだと思います。
外交に関して民主党は非常に現実的になってきて、あまり大きな基本的な変化は日米関係においてはないということは非常にいいことだと思います。そのうえで、より積極的な提案・提言ができたら素晴らしいと思うのです。
民主党が政権をとった場合、外国人が一番心配しているのは、「民主党が約束している様々なプログラムを本当に実施したら、日本の財政赤字がますます大きくなり、国の財政がパンクしてしまう。長期国債の金利が上がって大変なことになる」ということではないでしょうか。
でも私の印象では、民主党はそこまでばら撒きはやらないと思います。「16.8兆円を使う」と言っていますが、マニフェストをよく読むと、それは政権をとった4年目(2003年度)の所要額なんです。最初の1年間は5兆円ぐらい使うけれど、その後はいろいろ研究・検証する、それでいくら掛かるか決まるということらしい。
無駄をなくして、埋蔵金という官庁のヘソクリを使って、税金が少なくなるように制度を変える。それで間に合わなかったら、多分民主党は財政赤字を増やすのではなく、プログラムを縮小すると思います。というのは今の日本では、お金をばら撒いて財政がこれ以上悪くなることに対する反対意見がものすごく強いからです。ですので、民主党政権で問題になるとしたら、「約束したことを実現していないじゃないか」という批判であって、「日本の財政がもっと悪くなる」ということではないと思います。
彼が総理大臣になれば、9月の国連総会で演説をすることになりますが、おそらくその前にワシントンに行ってオバマさんに会って、それから国連総会で演説をする、その準備をもうしているでしょう。
でも、私は、あまり早くオバマさんに会わない方がいいと思います。というのは、今まで新しい人が日本の総理大臣になると、まずワシントンに「よろしくお願いします」と挨拶に行きましたが、そういう時代はもう終わっているからです。
麻生さんはオバマさんが大統領就任後、初めて議会演説をするという日に、わざわざワシントンに飛んで行って1時間あまりオバマさんと話をして東京に戻って来ました。昼食も何もありませんでしたし、後で聞いたら、中身のある話は何もなかったそうです。なぜ行ったのかというと、「会いたかったから会いに行った」のです。
この前、民主党の幹部が「早く誰かをワシントンに送って、オバマ政権とのパイプをつくらなければ」と言っていました。「パイプをつくる」というのは非常に日本的な発想なので、私が「ワシントンに何を言いに行くのですか?」と聞いたら、びっくりした顔で、「いや、別に何かを言いに行くんじゃなくて、聞きに行くんだ」と言うのです。
今、オバマさんは、パキスタン、アフガニスタン、パレスチナとイスラエル、北朝鮮、金融、医療保険の抜本改革などなど、様々な問題を抱えています。そんなときに、まだ政権をとってもいない日本の政党の代表がワシントンに行って、「話を聞きに来ました。よろしくお願いします」と言ったら、オバマさんを苛立たせるだけです。オバマさんは、会うのは時間の無駄だと思っているはずです。
日本の総理大臣がワシントンに行くなら、日本側の方から「アジェンダ・セッティングをしたい」という気持ちでたくさん提案を持って行き、オバマさんに宿題をさせて返事を待つ——そうして初めて新しい意味での日米関係ができると私は思います。でも、やはり日本だから「いきなり国連に行って、そこで最初に会うのは失礼なのではないか。まずはワシントンに行って挨拶をして、それからニューヨークに行くのが礼儀ではないか」と言われると、なかなか反論できません。
ただ、少なくとも何か1つ提案した方がいい。そんなに難しい話ではなく、何かできること、例えば「中国の環境問題は大きいから、日米中の協力でこういうことをやろう」といったことでもいいんです。
日本がもっと積極的にアジェンダ・セッティングをしないと忘れ去られます。というか、無視されます。日米関係が悪くなるというよりも、「日本のことは無視して、中国や韓国、フランスやドイツと話した方が効果的だ」と思われてしまいます。すでにそうなっています。民主党が日米関係を重視するというなら、鳩山さんは今まで通りやるのではなく、新しい形で、21世紀にふさわしいことを提案すべきだと思います。
外交に関して民主党は非常に現実的になってきて、あまり大きな基本的な変化は日米関係においてはないということは非常にいいことだと思います。そのうえで、より積極的な提案・提言ができたら素晴らしいと思うのです。
民主党が政権をとった場合、外国人が一番心配しているのは、「民主党が約束している様々なプログラムを本当に実施したら、日本の財政赤字がますます大きくなり、国の財政がパンクしてしまう。長期国債の金利が上がって大変なことになる」ということではないでしょうか。
でも私の印象では、民主党はそこまでばら撒きはやらないと思います。「16.8兆円を使う」と言っていますが、マニフェストをよく読むと、それは政権をとった4年目(2003年度)の所要額なんです。最初の1年間は5兆円ぐらい使うけれど、その後はいろいろ研究・検証する、それでいくら掛かるか決まるということらしい。
無駄をなくして、埋蔵金という官庁のヘソクリを使って、税金が少なくなるように制度を変える。それで間に合わなかったら、多分民主党は財政赤字を増やすのではなく、プログラムを縮小すると思います。というのは今の日本では、お金をばら撒いて財政がこれ以上悪くなることに対する反対意見がものすごく強いからです。ですので、民主党政権で問題になるとしたら、「約束したことを実現していないじゃないか」という批判であって、「日本の財政がもっと悪くなる」ということではないと思います。
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日本の政治シリーズ 第1回、第2回のレポートはこちらからご覧になれます。
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