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未来を変える人たち

発展途上国に明るい光を投げかけるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)の活動

更新日 : 2009年09月18日 (金)

第6章 社会発展の鍵となる女性の力

米倉誠一郎氏(左)、ファザル・H・アベド氏(右)

米倉誠一郎: なぜ、女性がこのBRACの活動にしても、貧困との戦いでこれほど重要な役割を果たしているのでしょうか?

ファザル・H・アベド: どの社会においても、女性の方が家族に対する責任感が強いものです。バングラデシュでよく見られる光景があります。

7歳の兄が外で遊んでいる間、5歳の妹が弟たちの面倒を見るのです。私はその光景を見て、女の子は幼少期に物事を管理する能力を備え始めるのだということに気付きました。女の子は母親の手伝いをしたり、薪を集めたり、庭の動物の面倒を見たりします。貧しい家庭に生まれた女の子は、幼少期から貧しい生活を管理しているのです。

女性が家庭内の貧困を管理しているのであれば、貧困社会の発展も女性が管理できるのではないでしょうか。私は、以前から女性は社会発展の担い手になれると思っていました。私たちの活動においても、男性より女性の方が積極的でした。

マイクロファイナンス事業を始めた時、借主では、女性グループの方が遅滞なく貸金を返済していました。女性はお金の使い方に慎重で、決して無駄遣いをしません。しかし、男性は資金を受け取ると、酒に使ったりして、悪びれることなく返済期限を守らないことがありました。

このように男女間の責任感の違いを実感し、男性に対して資金を貸し付けるのは無意味だと感じ、女性だけを対象にすることにしました。彼女たちは、夫がお金を必要としていれば夫にそれを渡します。ところが、逆のパターンは絶対にないのです。従って、私たちが女性だけを対象に資金を貸付けしても、男性がそのシステムから排除されることはないのです。

米倉誠一郎: 日本は、BRACにどういうことで貢献できるとお考えですか。

ファザル・H・アベド: 日本は豊かな国で、第三世界の発展に十分貢献できますし、現に貢献しています。二国間協定を行っている国の中で、日本の援助が一番大きいことは間違いありません。そのほとんどは日本政府からではなく、日本の専門分野団体からの援助で、日本人の皆さんにはバングラデシュの発展に大いに貢献していただいており、とても感謝しています。

また、私たちが日本の大学と交流できる機会は増えていると思います。現に私は、立教大学から名誉博士号をいただいたばかりです。現在、長崎にBRACの公衆衛生学部が交流を果たしている大学があり、何人かの学生がバングラデシュで3カ月間公衆衛生学部に在籍しました。大学間の交流プログラムは今後も増えると思います。私たちの能力には限界がありますが、日本のために何かできることがあれば、ぜひ貢献したいと思います。


該当講座

未来を変える人たち
発展途上国に明るい光を投げかけるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)の活動
ファザル・H・アベド (BRAC創設者兼会長)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

いま、ダッカが熱い。「BRICs」に続く新興国「NEXT11」の一つであるバングラデシュ。かつては最貧国と言われたバングラデシュでは、近年5%成長という目覚しい発展が続き、この10年間で貧困層が10%以上減少したといいます。そこでは、まさに現代社会が直面する新しい資本主義の形が追求されているのです。....


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