記事・レポート
未来を変える人たち
発展途上国に明るい光を投げかけるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)の活動
更新日 : 2009年09月07日
(月)
第5章 最貧困層から脱却するための支援策
ファザル・H・アベド: 10年前、私は、とある村で1人の女性と出会いました。その女性はBRACから借金をし、牛を購入しました。その牛から毎日2リットルの牛乳を絞ることができます。ところが、この村に牛乳を買ってくれる人はいないというのです。その女性は牛乳を売らなければ生活ができません。この女性と同じような問題を抱えている人はたくさんいると思います。つまり、牛を所有していても儲からないのです。
そこで、BRACは牛乳を売っている全国の村の女性から牛乳を仕入れ、大都市のダッカで売りました。また、BRACは牛乳工場を設立し、ヨーグルト等の乳製品も生産しました。牛乳工場を設立することによって、村人は牛乳を売り易くなり、BRACも健康や教育に利用できる資金を捻出することができるようになりました。
こうして私たちのプログラムは、貧困層全体に行き届いたと思っていたのですが、1995年の調査で、マイクロファイナンスを利用できない最貧困層があることがわかりました。彼らはお金を借りると、食べるためにすぐ使ってしまうのです。そこで、現在マイクロクレジットでは、カバーできていなかった最貧困層のための新プログラムを考えました。
まず、これらの世帯がどのような問題に直面しているのかを調査しました。ある村では、200世帯中20世帯が最貧困層でした。最貧困層世帯の特徴は、3人から5人の子どもを持つシングルマザー世帯です。彼女たちは複数の仕事を抱えながら、わずかな収入で子どもを養わなければいけません。
これらの世帯に対しては、ローンではなく補助を提供します。例えば、牛、ヤギ等を提供したり、野菜を栽培するために10年間土地をリースしたりします。私たちは、これを資産譲渡と呼んでいます。しかし、野菜を商品として販売できる状態になるまでは生活できないため、生活補助金を提供します。
彼女たちのもう1つの問題は、村八分にされていることでした。そこで対策として、村の人々に、彼女たちが直面している問題を説明して理解を求め、子どもを学校に通えるようにしました。2年間サポートすれば、徐々に生活が改善され、ローンの借入れや返済ができるまでのレベルに達します。
2001年から2006年までの間、11万世帯に対しそれらのサポートを提供し、彼らを最貧困層から脱却させました。2007年からは第2弾として、さらに80万世帯を2011年までに最貧困層から脱却させることを目標としています。
そのほか、疾病管理プログラムも導入しています。バングラデシュでは高レベルの結核が存在しています。1980年代に、ある地域で小規模プロジェクトを開始しました。各村から女性1人を選び、「衛生推進者」に任命します。公衆衛生の研修を受けさせ、水衛生の知識を習得させます。また、家族計画の研修も受けさせ、村人に経口避妊薬やコンドームを配布させます。さらに、下痢、風邪等の軽い病気に対応できるように指導教育します。対応できない病気を見つけた場合は、村に近い病院を紹介するようにします。
また、出産前および出産後の女性にも対応します。約70,000人の女性が衛生推進者としての研修を受けました。衛生推進者の活動は、村における結核の早期発見にも役立ちました。
10年前、このプログラムをある地域で試行したところ、すべての結核を発見することができて大成功を収めました。2004年からは、マラリア、エイズおよび結核対策のため、国連が立ち上げた国際ファンドから資金援助を受け、現在は全国にスタッフを配置しています。
このように、BRACは貧困撲滅および貧困層の自立支援のために様々なプログラムや事業を展開し、人々に職を提供してきました。将来的には、さらに多くの雇用の機会を作っていきたいと思っています。
私たちは、様々なところに存在している貧困層の人々に対して行動しなければなりません。私たちみんながやるべきことはたくさんあるのです。
そこで、BRACは牛乳を売っている全国の村の女性から牛乳を仕入れ、大都市のダッカで売りました。また、BRACは牛乳工場を設立し、ヨーグルト等の乳製品も生産しました。牛乳工場を設立することによって、村人は牛乳を売り易くなり、BRACも健康や教育に利用できる資金を捻出することができるようになりました。
こうして私たちのプログラムは、貧困層全体に行き届いたと思っていたのですが、1995年の調査で、マイクロファイナンスを利用できない最貧困層があることがわかりました。彼らはお金を借りると、食べるためにすぐ使ってしまうのです。そこで、現在マイクロクレジットでは、カバーできていなかった最貧困層のための新プログラムを考えました。
まず、これらの世帯がどのような問題に直面しているのかを調査しました。ある村では、200世帯中20世帯が最貧困層でした。最貧困層世帯の特徴は、3人から5人の子どもを持つシングルマザー世帯です。彼女たちは複数の仕事を抱えながら、わずかな収入で子どもを養わなければいけません。
これらの世帯に対しては、ローンではなく補助を提供します。例えば、牛、ヤギ等を提供したり、野菜を栽培するために10年間土地をリースしたりします。私たちは、これを資産譲渡と呼んでいます。しかし、野菜を商品として販売できる状態になるまでは生活できないため、生活補助金を提供します。
彼女たちのもう1つの問題は、村八分にされていることでした。そこで対策として、村の人々に、彼女たちが直面している問題を説明して理解を求め、子どもを学校に通えるようにしました。2年間サポートすれば、徐々に生活が改善され、ローンの借入れや返済ができるまでのレベルに達します。
2001年から2006年までの間、11万世帯に対しそれらのサポートを提供し、彼らを最貧困層から脱却させました。2007年からは第2弾として、さらに80万世帯を2011年までに最貧困層から脱却させることを目標としています。
そのほか、疾病管理プログラムも導入しています。バングラデシュでは高レベルの結核が存在しています。1980年代に、ある地域で小規模プロジェクトを開始しました。各村から女性1人を選び、「衛生推進者」に任命します。公衆衛生の研修を受けさせ、水衛生の知識を習得させます。また、家族計画の研修も受けさせ、村人に経口避妊薬やコンドームを配布させます。さらに、下痢、風邪等の軽い病気に対応できるように指導教育します。対応できない病気を見つけた場合は、村に近い病院を紹介するようにします。
また、出産前および出産後の女性にも対応します。約70,000人の女性が衛生推進者としての研修を受けました。衛生推進者の活動は、村における結核の早期発見にも役立ちました。
10年前、このプログラムをある地域で試行したところ、すべての結核を発見することができて大成功を収めました。2004年からは、マラリア、エイズおよび結核対策のため、国連が立ち上げた国際ファンドから資金援助を受け、現在は全国にスタッフを配置しています。
このように、BRACは貧困撲滅および貧困層の自立支援のために様々なプログラムや事業を展開し、人々に職を提供してきました。将来的には、さらに多くの雇用の機会を作っていきたいと思っています。
私たちは、様々なところに存在している貧困層の人々に対して行動しなければなりません。私たちみんながやるべきことはたくさんあるのです。
未来を変える人たち インデックス
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第1章 バングラデッシュ独立運動から生活復興支援へ
2009年07月15日 (水)
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第2章 すべての家庭への徹底した公衆衛生教育
2009年07月30日 (木)
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第3章 社会開発のためのマイクロファイナンス事業
2009年08月12日 (水)
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第4章 すべての子どもたちのための高度な教育プログラム
2009年08月25日 (火)
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第5章 最貧困層から脱却するための支援策
2009年09月07日 (月)
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第6章 社会発展の鍵となる女性の力
2009年09月18日 (金)
-
第7章 ビジネスは、貧しい人を助けることもできる
2009年10月06日 (火)
該当講座
いま、ダッカが熱い。「BRICs」に続く新興国「NEXT11」の一つであるバングラデシュ。かつては最貧国と言われたバングラデシュでは、近年5%成長という目覚しい発展が続き、この10年間で貧困層が10%以上減少したといいます。そこでは、まさに現代社会が直面する新しい資本主義の形が追求されているのです。....
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