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未来を変える人たち

発展途上国に明るい光を投げかけるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)の活動

更新日 : 2009年08月25日 (火)

第4章 すべての子どもたちのための高度な教育プログラム

ファザル・H・アベド氏 アカデミーヒルズセミナー会場の様子

ファザル・H・アベド: BRACを創立した1971年当時、小学校に通っている子どもは全体の60%以下でした。残りの40%は、読み書きのできない大人になるのです。さらに、小学校に通った60%の子どものうち、半数は5年間の初等教育を完了する前に中退します。これが当時の実情でした。

国民教育の向上なくして成長した国はありません。私たちは初等教育の改善に注目し、まず大人の教育から始めました。大人は読み書きできれば、より良い仕事に就けるはずだからです。しかし、子どもの頃から学ぶ方が、大人になってから学び始めるよりもずっと簡単なはずです。

そこで、私たちは、子どもの教育に集中することにしました。世界で最も初等教育が優れている国々を調査し、新しい初等教育プログラムを開発しました。

BRACが運営している非公式学校は、政府のカリキュラムに拘束されないので、その教育方法を導入しました。すると、BRAC学校の子どもたちは、他の学校の子どもたちよりもずっと速く吸収するようになりました。現在、50,000のBRAC学校で150万人の子どもたちが勉強しています。最貧困層の家庭から生まれた子どもたちで、BRACは5年間の教育を施しますが、教育レベルは公立学校よりも高度だと思います。

私たちは、BRAC学校において、質の高い教育を維持したいと思っています。また、国全体の教育の質を向上させるために、ぜひともこの教育システムを政府と分かち合いたいと思っています。

現在、教育の状況は大きく変化しました。政府は1990年、初等教育に義務教育制度を導入しましたが、辺鄙な地域の子どもたちは学校に通うことができません。BRACは、教育を受けられない300万人の子どもたちを対象に、5年間の初等教育を提供することにしました。私たちが教育に当てる予算は、年間5,000万ドルで、その全額が寄付によるものです。もっと資金を集めることができれば、すべての子どもたちを学校に通わせてあげることができ、結果としてすべての国民に対して、社会生活に必要な教育を提供できるようになります。

もう1つの課題は、中学校です。バングラデシュの中学校における教育レベルは、まだまだ低いというのが実情です。どうすればこの問題を解決することができるのでしょうか。一部のエリート学生に対してのみエリート教育を提供することが私たちの目標ではありません。バングラデシュすべての中学生に対し、質の高い教育を提供したいのです。

私たちは、2001年にBRAC大学を設立し、現在、約2,500人の学生を抱えています。6つの学部があり、そのうちの1つは公衆衛生の学部で、ハーバード大学やコロンビア大学、ジョンズホプキンス大学、ウップサラ大学、ロンドン大学、アムステルダム大学等と学部交流プログラムも行っています。学生の半分はバングラデシュ人ですが、その他はアジアやアフリカからの留学生です。

私たちの目標は、公衆衛生においてトップクラスの教育を提供することです。国民の衛生を管理するために公衆衛生はとても重要な分野です。教育研究機関は初等および中学教育の教科書や教育方法について研究しています。


該当講座

未来を変える人たち
発展途上国に明るい光を投げかけるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)の活動
ファザル・H・アベド (BRAC創設者兼会長)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

いま、ダッカが熱い。「BRICs」に続く新興国「NEXT11」の一つであるバングラデシュ。かつては最貧国と言われたバングラデシュでは、近年5%成長という目覚しい発展が続き、この10年間で貧困層が10%以上減少したといいます。そこでは、まさに現代社会が直面する新しい資本主義の形が追求されているのです。....


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